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1890年から現代まで120年にわたるヘッドホンの進化・使われ方の歴史


いつでもどこでも音楽を楽しむことができるヘッドホンの歴史は古く、その起源は1890年代にまでさかのぼることができます。「The Evolution of the Headphone」では、そんなヘッドホンの歴史をその当時の時代背景や楽曲とともに簡単に見ていくことができるようになっています。

The Evolution of the Headphone - liGo
http://www.ligo.co.uk/evolution-of-headphones/#

サイトではヘッドホンの歴史を「1890年代」「1920年代」「1930年代」「1950年代」「1980年代」「2000年代」「2010年代」の7つに分けて解説。詳細な機構の仕組みなどはあまり登場しませんが、その時代の様子や背景などが語られています。ページ中央にある矢印をクリックすると順番に歴史をたどることが可能。各時代ごとに代表的な一曲がセレクトされており、画面左上に表示され、曲も聴けるようになっています。


◆1890年代
1890年代を代表する曲に選ばれたのは「ワルツ王」とも称されるヨハン・シュトラウス2世による美しく青きドナウ


まだラジオ放送すらも開始されていない1890年の時点では、音楽は常に生演奏を楽しむものでした。当然全ての楽器にも電気は用いられておらず、オーケストラなどの演奏をコンサートホールで聴くというのが唯一の方法と言っても過言ではありませんでした。


そんな状況を変えたのが、イギリスで1890年ごろから1920年代ごろにわたって使われるようになったエレクトロフォン(Electrophone)と呼ばれる有線放送の一種でした。当時普及が進んでいた電話線を利用して音楽を家庭に届けるという仕組みのエレクトロフォンは、初めて音楽を自宅で楽しむということを可能にしました。


そしてこのときに初めて使われるようになったのが、ヘッドホンの原型になったレシーバーです。コンサートホールや劇場、教会などに設置されたマイクが拾った音声が電話線に乗って自宅にまで届き、レシーバーを通して聴くというものだったのですが、当時の価格で年額5ポンド(現在の価値で3000ポンド:約52万円)という高額な利用料金のため、あまり普及したとは言えなかったようです。


機器を楽しむ様子からも、かなりセレブな感じが漂ってきます。


やがてエレクトロフォンはラジオ放送の普及により姿を消していきますが、長らくの間イギリスではラジオのことを「ワイヤレス」と呼んでいたところにその名残を感じ取ることができます。

◆1920年代
1920年代の曲は、ベッシー・スミスと当時30代だったルイ・アームストロングによるセントルイス・ブルース


アメリカ・ユタ州の電気技師だったナサニエル・ボールドウィン氏は、普段から通っていたモルモン教の礼拝堂で行われる説教の声がきちんと聞こえないことに不満を募らせていました。そんなボールドウィン氏は自宅で2台のレシーバーをヘッドバンドに取り付けたものを考案。これが現代のヘッドホンの原型となりました。


ボールドウィン氏のヘッドホンが一般消費者の注目を集めることはありませんでしたが、これに目をつけたのがアメリカ海軍でした。戦場にとどろく火器のごう音にかき消されることなく指令を伝達できる能力を見抜いた海軍は、ボールドウィン氏に100台のヘッドホンを発注。ボールドウィン氏は自宅で使っていたものをかき集めて納品にこぎ着けました。


実際にヘッドホンを使っている様子。


それから数年後、ボールドウィン氏は自宅の作業場を閉鎖。そのかわりに大きな生産工場を建設し、「ボールドウィン・ラジオ・カンパニー」社を設立するに至っています。


◆1930年代
1930年代の曲は、ジャズサックス奏者のコールマン・ホーキンスによる「ボディ・アンド・ソウル」


1930年代に入ると、音楽のスタイルも幅広さを増してきます。スウィング・ジャズが全盛期を迎えるころとなり、エレキギターなどの電気楽器が次々と発明されたのもこの時代。1937年にはヘッドホンの歴史における重要な発明が行われました。ドイツのオイゲン・バイヤー氏は世界初となるダイナミック型ヘッドホンを発明し、モデル「DT48」を世に送り出します。


バイヤー氏が開発に成功したダイナミック型ヘッドホンは、発明から80年近くなる現在でも基本原理はそのまま用いられているというのが驚くべきところ。同氏が設立した音響機器メーカーbeyerdynamic(ベイヤーダイナミック)は現在でもヘッドホンやマイクなどの音響機器を製造し続けており、先述のDT48も2012年まで生産が継続されるという息の長いモデルとなっていました。


ヘッドバンド部など、いまではあまり見られないデザイン処理もありますが、そのままでもほぼ現代に通用しそうなDT48の設計。


そんなbeyerdynamicの歴史が、以下のムービーでは10分にまとめられています。

beyerdynamic once & today - a chronical digest


◆1950年代
1950年代の曲は、ジャッキー・ブレンストン&ヒズ・デルタ・キャッツのヒットソング「ロケット88」。全米R&Bチャートで1位を獲得した曲で、バンドのメンバーには「ロックの殿堂」にも名を連ねているアイク・ターナーも参加。


1950年代に発明されたものといえば「LPレコード」と「ロックンロール」を差し置いて語ることはできません。2度の世界大戦が終わって好況に沸くアメリカではエルビス・プレスリーが爆発的な人気を集め、リッチになった若者がひしめくマーケットにさまざまな企業がターゲットを定めて商品を投入する時代に入ります。


この時代を象徴するヘッドホンといえば、ハンドルが付いて片耳で聴くタイプの「スティックフォン」で、街のレコード店や「レコードバー」などに設置されて若者に音楽の魅力を伝える役目を果たします。


スティックフォンを手に持ち、壁のボタンを押して音楽を楽しむ様子。


スティックフォンを両耳につけるという、少し反則気味な女性の姿も。


そして1958年、ヘッドホン界に新たな革新が起こります。それまでは主に通信のために用いられていたヘッドホンでしたが、アメリカのジョン・コス氏が世界で初めて開発したステレオヘッドホンの登場により純粋に音楽を楽しむためのヘッドホンが誕生しました。このようにしてヘッドホンは一般大衆の生活へと浸透していくことになります。


以下のムービーでは、ジョン・コス氏自らがステレオヘッドホンの成り立ちを語っています。

Koss - Founder's Story


◆1980年代
80年代を代表するアーティストの1人、「キング・オブ・ポップ」マイケル・ジャクソンによる「ビリージーン」


1980年代に入ると、音楽の楽しみ方そのものが大きく変革を遂げます。1979年7月にソニーが発売した「ウォークマン」は、それまでは自宅におかれたステレオの前で楽しんでいた音楽を外に持ち出すことを可能にしました。


いつでもどこでも好きな音楽を自由に楽しむことができるのは当時としては画期的なことだったらしく、発売当初はその魅力が理解されなかっためか低調な売上が続きましたが、ほどなく人気が爆発。そのコンセプトは後に続くCDウォークマンやMDウォークマン、そしてAppleのiPodなどにも変わらず受け継がれていると言えます。


ウォークマン成功の要因はいくつもありますが、その1つは「ヘッドホンをセットで販売したこと」と言われています。このウォークマンのために、ソニーでは軽量の新型モデルMDR-3を開発。従来よりも飛躍的にコンパクトで軽量なボディはウォークマンのコンセプトをそのまま具現化するものとなっていました。1979年の発売から現在まで、ウォークマンシリーズの総売上台数は2億台を大きく上回っています。


当時のウォークマンのCMは以下から。カセットテープのケースそのまま音楽を聴く装置になったウォークマンは、当時は非常に画期的なものでした。

Sony - Walkman - Audio Cassette - Cool Retro TV Commercial - TV Ad - TV Spot - 1983


◆2000年代
2000年代の曲は、文字どおり「The Best Song of the Millenium」に選ばれたこともあるOutkastの「Hey Ya!」


1990年代になると音楽はアナログからデジタルへと主流が移行し、音楽はデータとして扱う時代が到来します。従来のカセットテープはPCのハードディスクやメモリーカードに置き換えられ、コンピューターで曲のライブラリを管理することが一般的になり始めます。2001年にAppleが発売した「自分のミュージックライブラリをポケットに入れて持ち歩く」ためのiPodは熱狂的な人気とともに迎え入れられ、「iPodの白いイヤホン」はそのまま最新ファッションのアイテムとして認識されるに至ります。


当初、その音質が批判されることも多かった白いイヤホンでしたが、2012年に発売されたiPhone 5から付属しているEarPodsでは大幅に音質が向上しています。


TVで放映され、多くの人の目を奪った白いイヤホンが印象的なiPodのCMムービーがこちら。

Ipod Ad


◆2010年代
2010年代の曲は、「2013年に最もストリーミング再生された曲」で、数多くのカバーバージョンも作られているダフト・パンクの「Get Lucky ft. Pharrell Williams」


Appleは2013年にヘッドホンメーカー「Beats」を約3000億円で買収。BeatsブランドはDJのDr. Dreと音楽プロデューサーのジミー・アイオヴィン氏が設立したブランドで、その設立には高級ケーブル「モンスターケーブル」で有名なモンスターが関与していました。2008年の設立以来、Beatsはプレミアムヘッドホン市場の50%のシェアを獲得しているともいわれています。


Beatの成功はファッションの要素に重きを置いたブランド戦略であり、純粋なオーディオ愛好家からは音質の面で批判を受けることがあるのも事実。確かに、Beatsの製品にはそれほど圧倒的な先進性が備わっているわけではないのですが、ユーザーが自らのファッションを発信するという目的に最適なアイテムになっていると言うことができます。

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in メモ,   動画, Posted by darkhorse_log

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