CEOが巨額の報酬を得ている企業ほど実際の業績は悪化しているという現状が明らかに

By Brandon Watts

一般的にアメリカでは巨大企業のトップが巨額の役員報酬を得ていて、平均的な従業員との収入格差が数百倍にもなっているというケースは珍しいことではありません。「多くの利益を上げたことへの見返り」と捉えられてきた巨額の報酬ですが、ユタ大学の研究チームが詳細な研究を進めたところ、実際には企業のCEOが得ている報酬が多いほど企業としてのパフォーマンスは低くなっているという傾向が明らかになっています。

(PDFファイル) Performance for Pay? The Relation Between CEO Incentive Compensation and Future Stock Price Performance by Michael J. Cooper, Huseyin Gulen, P. Raghavendra Rau :: SSRN
http://papers.ssrn.com/sol3/papers.cfm?abstract_id=1572085

The Highest-Paid CEOs Are The Worst Performers, New Study Says - Forbes
http://www.forbes.com/sites/susanadams/2014/06/16/the-highest-paid-ceos-are-the-worst-performers-new-study-says/

CEOに支払われる莫大な報酬は株式やストックオプションといった形で提供されることが多く、その典型的な例がオラクルのCEOで世界で最も高い報酬を得ているとNYタイムズが報じたラリー・エリソン氏で、2013年には7700万ドル(約78億円)に相当する株式報酬を受け取ったとされています。

By Oracle PR

ユタ大学・David Ecclesビジネススクールのマイケル・クーパー氏らによる研究チームは、さまざまな業種におけるトップ企業1500社の実態を調査して従来よりも精度の高い研究を実施。1994年から2013年の期間で、CEOの報酬額と企業実績の相関関係を3年を1つの区切りとして検証を行ったところ、報酬の規模が大きいほど企業の実績は悪化していたという傾向が浮き彫りになりました。これまでは一般的に「携わる業界の中で最も多くの金を手にするCEOが、最も適切な判断を下す」とする考え方が存在しており、これがCEOに多額の報酬が支払われる根拠となっていましたが、報告書ではこれと正反対の傾向が示される結果になっています。

さらに、CEOの報酬が高い上位150社ほどパフォーマンス低下の傾向が強いという、これまでに知られていなかった実態が明らかになっています。具体的な名称は挙げられてはおらず、例外はあるとしながらも、全体としてはCEOの報酬がトップ10に入っている企業ほど、実際の業績が悪かったという結果が明らかになっており、それ以外の企業と比べた場合の株主利益は10%程度低かったことが判明しています。さらにトップ5%に含まれる企業であるほど実績は明確な悪化傾向を示しており、他の平均値と比べて実に15%ほども低いパフォーマンスを示すというある意味で衝撃の実態が明らかにされています。

トップの報酬が高いほど企業の実績が悪いという現実について、報告書ではその理由を「うぬぼれ、自信過剰」という言葉で断じています。巨額の報酬を得るCEOは自分の考えに反する情報を遮断して「自分は正しい」と思い込む傾向があり、ビジネス上の決断を行う際に正確さを欠いていると指摘。その結果として引き起こされる現象が「過剰投資」であり、利益を生むめどの立たない事業に過大な投資を行ってしまう傾向が明らかになっています。報告書では、150名のCEOのうち報酬の規模が下位13%に属する人物が企業買収を実施した場合の平均利益率が-0.51%であるのに対し、上位に属する人物の場合の平均利益率はさらに悪化して-1.38%であることが明らかにされており、「報酬が高いほど利益は三分の一に落ち込み、株主価値を悪化させている」という現状が明らかにされています。

併せて報告書の中では、CEOの在籍期間が長くなるほど企業のパフォーマンスが低下する傾向も明らかにされています。この傾向について調査チームでは、在任期間が長くなれば周囲の人物が「イエスマン」で固められていく傾向があるとしており、平均的な他社よりも22%利益が低下していることも明らかにされています。

By Olivier Carré-Delisle

報告書では上記のような傾向について講じる策についての明言は避けられていますが、専門家の中からは「高い利益を実現しなかった場合には、CEOとしての報酬がカットされる条項を契約に盛り込む」という方策が示されていることに触れています。しかし同時にこの方策がうまく機能していないことも併せて明らかにされており、「アメリカでは上層部と一般的な従業員における報酬の格差が異常な状況にある」と指摘する声も挙げられています。

アメリカでは2010年、平均的な従業員とトップの報酬の格差比率を明らかにすることを企業に求めるドッド=フランク・ウォール街改革・消費者保護法が成立していますが、証券取引委員会はまだ実際の運用方法の最終決定を行っておらず、企業レベルでも実施に向けた動きは弱いのが現状。そんな中でブルームバーグは2013年時点での賃金格差が平均で204対1であり、2009年時点と比較して格差が20%拡大していることを明らかにしており、ゼネラル・エレクトリックのジェフリー・イメルトCEOが得た報酬は2820万ドル(約29億円)と、平均的な600万円クラスの従業員との間には491倍もの格差が存在しているという実例が示されています。

折しもアメリカでは、ウォール街を占拠(オキュパイ)して抗議行動をおこす「オキュパイ運動」が2012年をピークに広がりを見せ、格差の現状に対して反対の声を挙げる動きが見られますが、今回明らかにされた内容は、そんな声がさらに加速されざるを得ないものとなっているといえそうです。

By wisaflcio

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