最高級で知られる「象の糞コーヒー」の工場を見学してきた
コーヒーといえば、世界中の人々を虜にしている飲み物ですが、タイには象の糞からできる世界最高級コーヒー「ブラック・アイボリー」があります。その刺激的な匂いに誘われて、工場見学してきました。
こんにちは!世界新聞特命記者の雑色啓晴です。
僕は今、タイのゴールデン・トライアングルという街(星印)に居ます。(赤線は陸路、青線は空路で移動)
ゴールデン・トライアングルの由来は、メコン川を境にしてタイ・ラオス・ミャンマーの3カ国が国境を接するためです。昔は麻薬の密造地帯でもありました。
◆ゴールデン・トライアングルへ
タイ第二の都市チェンマイから、チェンライ、チェンセン経由で3つのバスを乗り継ぎ、5時間程度かかります。ちなみに「チェン」には「街」という意味があります。
バスから降りると、こんなに大きな大仏が目に入ります。
その隣には川が流れており、ラオスとミャンマーが見えます。
◆象の糞からできるコーヒー
タイには象と象使いが一緒に暮らしてきた歴史があります。しかし近年はショーだけで生活するのが難しくなってきているため、彼らを救うために「ゴールデン・トライアングル・アジア象基金」が設立されました。
この基金を支援しているのが高級ホテルのアナンタラホテルであり、コーヒーメーカーのブラック・アイボリー社です。ブラック・アイボリー社はなんと、象の糞からコーヒーを作っているというのです。
◆アポなしで突撃
それは見たい!とやってきたのが、5つ星のアナンタラホテル。
看板に象のマークが見えます。ここにゴールデン・トライアングル・アジア象基金のキャンプがあるのです。
しかし、アポイントがなかったので、門前払いを食らいました。
ここで諦めたら特命記者の名が泣きます。翌日、辛うじて手に入れたブラック・アイボリー社の電話番号にかけたところ、なんと、社長が出ました!用意していた英語で必死に伝えた結果、社長が工場を案内してくれることになりました。
◆ブレイク社長と対面
再びアナンタラホテルへ。守衛の人たちに今回はアポイントがあると伝えると……
ジープが僕を迎えに来ました。
ジープに乗って数分、ホテルに着きました。到底、バックパッカーが泊まれるような場所ではありません。
そわそわしながら待つ僕の前に現れたのが、爽やかなシャツでキメたブレイク社長。僕のつたない英語にも丁寧に対応してくださる本物の紳士でした。
◆糞の中からコーヒー発見
ブレイク社長とジープに乗り込み、象のキャンプへ。おお、象がいます!(当たり前ですが)
ここには全部で27頭の象がいます。下は生後7週間の子象。近くで見ると、体毛やまつ毛が長いのがわかりました。
象舎の隣には小屋が並びます。ここに約20人の象使いやブリーダーがいます。
そして、とうとうお目当てのモノを発見!まさか、うんこを見てここまで喜ぶ日が来るとは思いませんでした。
ウサギの糞のごとくコロコロしているのがコーヒー豆です。
◆象の糞コーヒーができるまで
1:コーヒーチェリーを採取
コーヒー豆は、コーヒーチェリーと呼ばれる木の実の種子です。1500m以上の高地にあるコーヒーチェリーから厳選したコーヒー豆が届きます。このままコーヒーにして飲んでも、タイでトップと品評されたこともあるそうです。
2:象にコーヒー豆を与える
コーヒー豆を、米やバナナや塩と一緒に、1日1~2度おやつ感覚で与えます。
象がけたたましい音とともに鼻で吸い上げ、口に運びます。なんと……ものの1分で平らげました!近くで写真を撮っていたので、僕の顔に液体が飛んできました。おやつのおすそ分けありがとう。
3:消化
15時間~70時間かけて消化され、出てきます。
象を媒介する理由がこの消化過程にあります。
・象の消化酵素がコーヒーの苦味成分であるタンパク質を分解するから。
・象の胃の中で長時間自然の発酵が行われ、果物などの香りがコーヒー豆に移るから。
世界一高いコーヒーとして知られるコピ・ルアク(ジャコウネコの糞を介してできるコーヒー)との違いもここにあります。ジャコウネコは雑食性なので、死んだ虫や腐った生ごみを食べて、コーヒーに影響を与える可能性があるようです。しかし、象は草食なのでその恐れがありません。
4:選別
糞からコーヒー豆を1つ1つ丁寧に選別します。
僕もやらせていただきました。もちろん、素手で。
まず、気になるのは臭いですよね?直接持ち上げて嗅ぐと……臭くないです!
糞の塊を1つ1つ開けてコーヒー豆が残っていないか確認します。豆の量は糞によって偏りがあるので、まるで宝箱のような扱いでした。
5:洗浄
選別したコーヒー豆をざるに移して、米を研ぐように洗います。4~5回、水が濁らなくなるまで続けます。炎天下でのこの作業は大変でした。
6:乾燥
この時期は4日間ほど乾燥させます。
均等になるように1時間ごとにコーヒー豆を動かします。
この棒は象に曲げられたそうです。
これは湿度計です。豆の乾燥度合いをチェックします。
下の黒い種子から上の2つのコーヒー豆がとれます。その後、チェンマイの工場でさらに洗浄され、バンコクの工場でロースト、パッキングされます。
◆最高級コーヒーを飲む
これがパッキングされたブラック・アイボリーです。
中のパックも黒で統一されています。この時点でいい香りが漂っていました。
そして、これが完全に精製されたコーヒー豆です。心なしか、貫禄が伺えます。
ブレイク社長から直々に淹れていただきます。後ろの象が見えますか?お客様サービスとしてテラスに来てくれる象は名脇役です。
コーヒーメーカーや飲み方にも相当なこだわりがあり、例えば、温度管理が徹底していました。挽いた豆を浸すお湯の温度は必ず93℃、カップにコーヒーを注いだ瞬間は75℃、コーヒーの味が強くなる70℃まで2分待って、やっと飲むことができました。
では、いただきます!なんだかんだ言って、最近は缶コーヒーの品質も上がってきているし、そこまで大きな差はつかないのではないだろうかという思いもあったのですが……
うまい!全く苦味を感じませんでした。「苦味がなくなるとコーヒーとして成り立つのか」という僕の不安を見事に退け、チョコレートのようにマイルドになった豆の味を感じるとともに、アラビカ種100%の芳醇な香りが鼻孔を包み込み、ティーカップを顔から離すことを躊躇してしまうほどでした。
ブラック・アイボリーはブラック・アイボリー社の公式サイトから購入できます。今年の夏ごろには日本での販売も視野に入れているとのことで、値段は1パック1500バーツ(約5000円)と超高級。ここからエスプレッソサイズのカップで約5杯作れるようです。
こちらは帰り際に社長から渡されたレシート。1765.5バーツは日本円にして約5500円。僕、1杯しか飲んでいないんですが(笑)。
・文・取材:雑色啓晴
http://zoshiki.com/wp/
監修:世界新聞
sekaishinbun.net
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