メモ

Wikipediaを悩ませる「なりすまし投稿」とその黒幕ステマ会社「Wiki-PR」社とは?

By Giulia Forsythe

近年、ウェブ上で横行するステルスマーケティング(ステマ)が問題になっていますが、インターネット百科事典「Wikipedia」もステマ問題に悩まされています。

Wikimedia Foundation Executive Director Sue Gardner’s response to paid advocacy editing and sockpuppetry — Wikimedia blog
http://blog.wikimedia.org/2013/10/23/sue-gardner-response-paid-advocacy-editing/

The Daily Dot - The battle to destroy Wikipedia's biggest sockpuppet army
http://www.dailydot.com/lifestyle/wikipedia-sockpuppet-investigation-largest-network-history-wiki-pr/

Wikipedia editors, locked in battle with PR firm, delete 250 accounts | Ars Technica
http://arstechnica.com/tech-policy/2013/10/wikipedia-editors-locked-in-battle-with-pr-firm-delete-250-accounts/

2013年10月23日、Wikipediaの運営団体であるWikimedia財団が、Wikipediaの編集を行う250以上のユーザーアカウントを利用停止・禁止にしたと発表しました。その理由は、これらのアカウントが恣意的な記事の作成に関与したことが理由で、中には金銭の提供を受けて記事を投稿した疑いが濃厚なものも含まれています。

世界で5億人のユーザーを抱えるWikipediaは、誰でも記事の作成・編集を行うことができる百科事典であり、ボランティアや知識人の善意によってコンテンツが形作られています。誰でも編集できるため誤った情報が記載されることがあり得ますが、Wikipediaでは、内容の正確性を誰もが検証できるように情報源(ソース)を記載しなければならないという「Notability」制度が採られており、これによって情報の正確性が担保されています。また、ウェブサイトには一切広告が掲載されておらず、個人や団体からの寄付で運営されており、その中立性が保たれています。


依頼主から金を受け取りその望むとおりの記事を作成する行為は、Wikipediaがもつ中立性、内容の正確性を貶めるものであり、このような行為はWikipediaの利用規約に反する行為として禁止されています。このためWikimedia財団がとった、大量のユーザーアカウントの利用停止・禁止は適切な措置であると考えられます。しかし、Wikipediaに存在するステマ問題は、今回の処置だけで解決されたわけではないようです。

2012年8月にWikipediaエディターで自称「鳥オタク」のDocTreeさんは、イギリスにある「CyberSafe」という会社の記事をWikipediaで発見したときに違和感を覚えます。一見すると、CyberSafe社の記事には参照ソースが挙げられておりNotabilityが満たされているようでしたが、参照ソースのリンクにセキュリティが一切かけられていませんでした。通常、ページを作成したエディターは、記事を読む人が安心してリンク先をクリックできるようにセキュリティをほどこすことから、DocTreeさんは異変を感じます。そしてリンク先ソースを見ても、CyberSafeに関する情報は一切ないことに気づきます。

Wikipediaには、一人の人物が複数のアカウントを使用しているかどうかをチェックする「CheckUser」と呼ばれるツールがあり、ユーザーのIPアドレスを調べることでソック・パペット(なりすまし)行為を判別でき、たった数人だけがこの調査を行う権限を持っています。DocTreeさんは、CyberSafe記事にかかわる5つのアカウントについてソック・パペット調査をするよう申し立てたところ、アカウントはソック・パペットであることが判明し、CyberSafeの記事は削除されることになりました。

By Isabelle

この調査を契機として蔓延する"なりすまし行為"の実態を調べるために、2012年8月14日から2013年9月20日までに編集された記事にソック・パペット調査の対象範囲が拡大されたところ、ソック・パペットへの関与が疑われる500近いアカウントが発見され、その中に6000を超える記事へ関与した「Morning277」というアカウントに関連した巨大なソック・パペットネットワークの存在が明らかになりました。しかし、Wikipediaの公式調査発表では、ソック・パペット行為を行った特定の個人・団体に関する情報は一切明かされませんでした。

そこで、Daily Dotの記者は、今回の調査で記事を削除された会社に直接取材を申し込んだところ、社名を明かさないことを条件に話を聞くことができましたが、話されたストーリーはまったく同じものでした。これらの会社はすべて、Wiki-PRという会社にWikipediaの記事を作成するよう勧められ作成の代行を依頼していました。なお、Morning277ネットワークにかかわるエディターの多くが、記事の作成を依頼され報酬を受けていた相手もこのWiki-PRであることが分かっています。

Wiki-PRに記事の作成を依頼した会社は、作成費用として500ドルから1000ドル(約4万9000円から9万8000円)、更新費用として月額50ドル(約4900円)を支払っていました。記事が削除されたことに対してWiki-PRは「一時的なものでありすぐに記事ページが現れる」と回答しましたが、記事が再び現れることはなかったということです。

このWiki-PRは、現在も自社サイトで大々的にWikipediaの記事作成代行を募っており、「Wkipediaのエディターを45人抱え、admin(管理者)もスタッフにいる」というのがうたい文句です。加えて、adminは記事を管理する権限(これには記事の削除も含まれます)を持つことから、これが事実であれば運営の中立性に大きな疑問が生じかねないためWikipediaにとっては重大事です。さらに、Wiki-PRは最近Viacomなどの大企業を顧客に獲得したことが発表されており、ますますその勢いを増しています。


長年Wikipediaのエディターをするケビン・ゴーマン氏は、「顧客から金をもらって記事を書くステマ会社は、Wikipediaユーザーにとってスパムであることは明らかです。このような不道徳な会社が大きなクライアントを得始め、記事の内容をコントロールし始めていることを危惧しています」と語っています。

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in メモ, Posted by darkhorse_log

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