3万6千km上空の人工衛星と地上を結ぶ巨大アンテナ群、山口衛星通信センター潜入レポート
赤道上空約3万6000キロにある人工衛星からの電波を受信する巨大なパラボラアンテナ群を有する日本最大の衛星通信施設が山口県にあります。今回はその「KDDI 山口衛星通信センター」と「パラボラ館」に取材に行くことができたので、普段はほとんど見ることが出来ない通信設備の裏側を含め、隅々まで写真に納めてきました。
KDDI山口衛星通信センター
http://ja.wikipedia.org/wiki/i/KDDI山口衛星通信センター
KDDI パラボラ館 | KDDI株式会社
http://www.kddi.com/parabola/
最寄りの新幹線駅は新山口。
こんな感じのワゴンタクシーで1時間ほどかけて走った場所に「KDDI山口衛星通信センター」があります。
山がちな田舎の道を進んだ先に、突如、巨大なアンテナを発見。
KDDIが撮影した以下の資料を見ると、山間の小さな町の中に巨大なパラボラアンテナが林立していることが分かります。
この施設は海底ケーブルを通じた通信が行えない世界約50の国や地域と日本を結ぶ国際通信やTV伝送、災害時に既存の基地局が破損した際にバックアップを行うといった目的のために使用されており、東京ドーム約3個分の敷地面積があるとのこと。
ちなみに、KDDIが所有する大規模な衛星通信施設はここだけで、この場所が選ばれたのは太平洋上とインド洋上にある静止衛星からの電波を同時に受信出来る立地であり、山に囲まれた盆地であるためにマイクロ波通信の影響を受けづらく、さらに地震などの発生件数が少ない、といった事が理由であるそうです。
入り口のゲートに到着。
「KDDI株式会社 山口衛星通信所」と書かれたプレート。
◆施設内の様子
ゲートを入ってすぐ右手には一般見学も可能な展示施設「パラボラ館」があります。
施設に続く道はこんな感じ。
建物のビルより高い巨大なパラボラアンテナが設置されています。
ここから先に入るには取材者向けに配られたバッジが必要。
現在は電波望遠鏡として観測用に使用されている直径約32mのアンテナ。
手前にある車と比べるとその巨大さがわかります。
少し近寄って見るとこんな感じ。
さらにアップ。
これ以外にも中規模のパラボラアンテナがニョキニョキ生えており、その総数は20基。
少し変わった形をしたTV伝送受信用のアンテナ。
道の脇にもたくさんのアンテナが設置されています。
アンテナを横から見るとこんな感じ。
アンテナの内部には以下の写真の様な部品が入っており、ここで電波の送受信を行っているそうです。
この施設にある最大のパラボラアンテナの直径は約34m。写真左端を歩いている人と比べるとアンテナの巨大さがよくわかります。
施設内にあるアンテナにまつわる豆知識が書かれた看板。
アンテナが白いのは熱を反射しやすい色であるため。熱による膨張でパネルがゆがみづらいようにしています。
風速55m/秒の嵐にも耐えられる設計になっており、台風の被害によって通信が途絶したことは施設の運用が始まって以来43年の間1度もなし。
800kWのヒーターを備えているので雪を溶かすことが可能。
アンテナを常に上空の通信衛星に向ける必要があるので1/1000度単位で調整が可能。
◆建物の中にも行ってみた
管制室があるビルの内部に潜入。
明かりが消えた状態はこんな感じ。
内部の機材は以下のような横19インチのラックにマウントされて並べられています。
モデムと呼ばれる衛星から届いた電波の変調と復調を行うマシン。
周波数変換装置。
TV伝送用の送信設備。
TV伝送を受け取る際に使用する機器は以下の通り。
開いたポートをふさぐための部品。
ラックやマシンには管理用のラベルがたくさん貼られているので、貼り替えの際には「値札はがし」が必要になるようです。
この先は管制室ですが、内部の全体は撮影禁止。
管制室に置かれた遭難信号を受けるための電話。主に船舶などからの救難信号に対応するためのものです。
青い回転灯付き。
最大約64kbpsのデータ通信が行えるINMARSAT-Bのデモ用機材はこんな感じ。
キーボードの左上には遭難信号を送信するためのボタンがあります。
◆パラボラ館の内部
入り口にある「アリアン44L型ロケット」の1/20模型。このロケットを使用して仏領ギアナから打ち上げられた人工衛星からの電波をこのセンターでは受信しているそうです。
打ち上げられた人工衛星の模型はこんな感じ。
INMARSAT BGAN用の小型通信端末も展示されています。
最大492kbpsのIPパケット通信などに対応。
なお、KDDIは後日、この衛星通信センターと船の上に設置した移動基地局を使用した通信実験を第六管区海上保安本部所有の「巡視船くろせ」と合同で行うとのことなので、その現場にも潜入してレポートをする予定です。
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