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飛行機の機内Wi-Fiによるネット接続はこうやって実現されている


旅客機の中でインターネットが使える機内Wi-Fiに対応した飛行機が増え、空の旅をどんどん快適に過ごせるようになっていますが、よくよく考えてみると上空をものすごいスピードで飛ぶ機体にインターネットの回線を届ける仕組みは理解できていない部分もありがちです。飛行機でインターネット通信を可能にする通信方法は地上方式と人工衛星方式、さらにこれら2つを組み合わせたハイブリッド方式があるのですが、その主な通信方式についての技術を、旅行情報サイトのThe Points Guyがまとめています。

How Does In-Flight Wi-Fi Really Work?
http://thepointsguy.com/2015/11/how-in-flight-wi-fi-works/

◆方法その1:Air-To-Ground方式(ATG方式)
主に国内線などの洋上を飛ばないルートで用いられることが多いのが「ATG(Air-To-Ground)方式」です。以下の図を見ればイメージがつかめると思いますが、ATG方式では航空機のルートに沿って設置された地上の基地局との通信を行うことで、機内Wi-Fiを実現しています。


ATG方式では、機体の底に2つのアンテナを取り付けることで通信を行うようになっています。2015年現在で普及している「ATG-3」方式で可能な通信速度は3Mbpsとなっているとのことで、これはメール受信やSNSのチェック程度なら問題なく行えるというレベル。アメリカの通信企業・Gogoは、10Mbpsまで速度を引き上げた最新の「ATG-4」システムの導入を進めていますが、まだまだATG-3に取って代わる段階には至っていない模様。また、基地局のエリアを外れると通信が途絶えてしまうと言うウィークポイントも存在します。


◆方法その2:Kuバンドを用いた衛星通信
地上の基地局には頼らず、宇宙の人工衛星を介して通信を行う方法ももちろん存在します。その一つが12GHz~18GHzの電波・Kuバンドを用いるものです。以下の図では、機上のユーザーが操作した内容が衛星を経由して地上へ届き、サーバから送り返された内容を再び衛星に飛ばして飛行機へ返す様子が示されています。


インターネット通信を乗せた電波が宇宙から届くため、この場合のアンテナは機体の上部に取り付けられます。アンテナを覆うドーム状の部品を取り外すと内部はこのようにアンテナが設置されており、衛星の向きに合わせて角度を変えられるようになっています。


この方式の利点は、ひとたび飛行機が衛星の電波を掴むと最大で30~40Mbpsという速度を出せるところにあるとのこと。とはいえ、広いエリアを少ない衛星が担当するために受け持つ航空機の数が多くなるほど速度が低下してしまうというデメリットが同時に存在します。また、衛星を経由するための遅延が発生することも避けられず、せっかく速い速度が出ても遅延のためにトータルの読み込み時間がかかってしまうことがあるようです。

◆方法その3:Kaバンドを用いた衛星通信
前出のKuバンドよりも高い周波数を用いるKaバンドは、かつては軍用に確保されていたバンドであることから、その実力は高いものといえます。衛星通信企業のViaSat社が提供するKaバンド通信は、受け持つ航空機全てに対して最大で70Mbpsの通信を保証しており、現時点では最も速い機内Wi-Fiシステムといえるとのこと。


2015年現在ではKaバンドに対応する衛星は「ViaSat-1」の1機しか運用されておらず、サービスエリアはアメリカ国内に限られています。ViaSatは2016年にも2機目の衛星打ち上げを予定しており、運用が開始されるとカナダとヨーロッパの一部にまでエリアが拡大されることになるそうです。

また、ViaSat-1衛星は地上向け衛星インターネットサービスのExede(エクシード)を提供していますが、格安航空会社のJetBlueはこれを使った機内Wi-Fiサービスを1時間あたり9ドル(約1100円)で提供しています。

◆機内Wi-Fiの導入のために行われる作業
航空機のほとんどは、建造時点では機内Wi-Fiの設備を搭載していません。そのため、機体にアンテナを設置して機内に電波を持ち込む機内Wi-Fiの設置は内装を剥がしての作業になることがほとんどです。


その作業の様子は、ユナイテッド航空が作成した以下のムービーを見るとよくわかるようになっています。

United - Wi-Fi Installation - YouTube


整備用の格納庫に運び込まれる飛行機


機体の脇には、アンテナをマウントするためのフレームが置かれています。


足場を組んで作業用の台を作り……


機体のてっぺんに作業用の治具をセット。


機内ではWi-Fi設備の導入準備が進められます。これは床下にある制御パネルが収められた区画。


客室内のイスを取り外して作業スペースを確保。


格納庫では、何十メートルという長さになるケーブルが準備されています。


クレーン車を使ってアンテナを運び上げて……


フレームとアンテナをガッチリ固定。


最後にドームをかぶせれば取り付け作業は完了です。


垂直尾翼の少し前にちょこっと持ち上がったドームが見えます。この内部にあるアンテナが、人工衛星からの電波をキャッチしたり逆に電波を送り出したりするわけです。

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