日本初、KDDIと海上保安庁がコラボして作った船上携帯電話基地局の開設試験を密着取材
携帯電話の小型基地局を船上に設置、災害で陸上の基地局が壊れてしまった際のバックアップとして利用する、という実験をKDDIが広島県呉市で行いました。今回は、その実験に同行して基地局が設置されている巡視船くろせの内部や海上に停泊している船から出した電波を受信するテストを行っている様子を撮影することができたので、一部始終をレポートしてみることにします。
最初の取材場所は広島県呉市の港。
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小型基地局が備えられた海上保安庁の巡視船くろせの母港がある呉港湾合同庁舎に到着。
同ビルには海上保安庁の他に呉の税関支署などが入居。
「許しません白い粉・通しません 黒い武器」と書かれた横断幕は麻薬や銃器などの取り締まりと告発用に設けられた電話番号「密輸ダイヤル 0120-461-961」についてのものです。
呉港湾合同庁舎の前にある港はこんな感じ。
◆巡視船くろせ
停泊中のくろせ(写真左手前)。今回の実験の目的は、携帯電話からの電波を船上の基地局で受け、それを衛星回線を通して携帯ネットワークと接続するというものです。
船体の3カ所に実験用の装置が取り付けられており、左が携帯電話用アンテナと基地局設備、中央の赤枠内の船体の影にあるのが衛星ルーター、右が衛星通信用アンテナとなっています。
使用されている機材を図にしたものは以下の通り。なお、スライド内のイラストでは携帯用アンテナと衛星用アンテナの位置が実物とは逆になっています。
くろせに向かう桟橋。
全長56m、全幅8.5mの船体は間近で見るとかなりの迫力。
「くろせ PM 35」の文字。ちなみに、同船の正式名称は「PM とから型PM-35 巡視船 くろせ」です。
船体には大きく「JAPAN COAST GUARD」と書かれています。
「海上保安庁」。
船の後方から見える携帯電話用アンテナの海面からの高さは約15m。
今回の試験に使用されるのは800MHz帯の電波です。
甲板を通って携帯電話用アンテナの下に向かいます。
アンテナと接続された携帯電話基地局はこんな感じ。
さらに、その先にルーターが置かれていますが、今回は撮影不可。
ルーターの先にあるのは人工衛星と通信を行うための設備。
レイドーム(半球のカバー)の中にパラボラアンテナが格納されています。
中を覗くとこんな感じ。
ちなみに、この日の実験とは関係ありませんがくろせには20ミリ機関砲が備えられています。
携帯電話基地局としては、たぶん国内最強の武装。
続いて、実際の海上に出て実験が行われる呉市倉橋町大迫に向かいます。
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山と海に囲われ通常の携帯の電波が届きにくい場所のため今回の実験地に選ばれた、という大迫の海岸。
周囲の町はこんな感じ。
愛犬の散歩をしていた人に話を聞いてみたところ、知人が「堤防の上のような高い場所に行かないと電話がつながらない」と言っていた、というほど電波状況が厳しい土地です。
◆車載型の移動基地局
船上基地局は陸路からの進入が困難な場所に仮設の基地局を置くためのものですが、車で行ける場所には以下のような車載型の移動基地局を設置することが可能。
天井からニョキっとアンテナが生えています。
先っぽはこんな感じ。
後方の扉を開けると中に発電機が入っています。
車内の様子。
ケーブルがたくさん。
配電盤
◆船上基地局のテスト
海岸に集まった関係者と報道陣。
沖合約1kmの場所に停泊しているくろせ。
基地局からの電波を分析するための専用装置。
アンテナはこんな感じ。
測定器。
船から電波が出されていない時の波形は以下の通り。多少ギザギザとしているのはノイズの影響によるためです。
船上の基地局が電波を吹くと以下のように波形が変化します。
一般的な携帯電話用の電波を受信せず、船上の基地局からの電波のみを受信するように設定された音声通話テスト用の端末。
KDDIの中の人が使用している携帯電話に発信中。
スピーカーフォンモードにして通話の様子を撮影したムービーは以下の通り。約3万6000キロ上空にある人工衛星を経由しているため、0.5秒程遅延が発生していますが、コミュニケーションには問題のないレベルです。なお、手前に映っているのが船上基地局と接続されている専用端末で、奥の人が使用しているのは一般網に接続されている携帯電話です。
船上基地局から人口衛星を経由して電波で通話をしてみた - YouTube
というわけで、今回の実験の成果を元に船上への基地局設置が行えるようになれば、災害で通信設備が壊れすぐには陸路で修理に向かえない場合でも素早く携帯電話の通話・通信を復旧することができます。さらに、将来的には衛星電話を1人1人の乗員乗客に配ることが出来ないサイズの大型船舶の乗組員が海の上から自分の携帯電話を利用できるようにする、といったことも実現可能です。
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