コーヒーが気候変化の影響により手軽に飲めなくなるおそれアリ、風味の変化も

By spcbrass

朝の目覚めや、仕事の合間に休憩としてコーヒーを飲む人は少なくありませんが、今後、地球の気候変動によって、今のように手軽にコーヒーが飲めなくなるかも知れません。イギリスの王立植物園(キューガーデン)の研究者によると、現在のコーヒー豆の主流であるアラビカ種の野生種が2080年までに絶滅するおそれがあるそうです。

Kew News - Is Our Daily Cup Of Coffee Under Threat?
http://www.kew.org/news/arabica-coffee-could-be-extinct.htm

Coffee threatened by climate change - Telegraph
http://www.telegraph.co.uk/earth/agriculture/9661559/Coffee-threatened-by-climate-change.html

ロンドン南西部キューにある王立植物園(キューガーデン)の研究チームが、「コーヒーが絶滅の危機にある」という研究結果を発表しました。研究リポートは11月7日発行のPLOS ONEに掲載されています。

現在、コーヒーの原料であるコーヒー豆はその70％以上がアラビカ種で、残り20～30％がロブスタ種という二強状態。このほかにリベリカ種や数多くの亜種がありますが、シェアはそれぞれ1％未満にとどまっています。このうち、ロブスタ種はフリーズドライコーヒーとしてトルコやギリシアでよく飲まれていますが、カフェイン含有量が多く、味わいも渋味が強いため、主流にはなっていません。

By puuikibeach

研究によると、アラビカ種を栽培している土地のほとんどが、気温上昇や気候変動などによって、2080年までには栽培に不適当な土地になってしまうのだそうです。3種類の気象変動パターンを用いて予測したところ、少なくとも栽培地の65％が栽培に不向きになるという結果が出ており、最悪の場合、全ての土地が不適当になるとのこと。実際に、現在アラビカ種が栽培されている土地の1つである南スーダンのボマ高原は、1941年からのデータを比較して収穫高も開花率も低下しており、2020年には「不適当地」になるとみられています。

これはコロンビアのコーヒー農場

By CIAT International Center for Tropical Agriculture

コーヒー研究チームのリーダーを務めているアーロン・デイビス氏によると、アラビカ種を生育するためには気温が重要なポイント。単に気温の高低だけではなく、例えば雨期にも一定の気温を保っていることなど、季節の周期性も関わってくるため、生育可能なのは限られた地域になります。

もちろん、人が手をかけて栽培している場所では、散水を行ったり、人為的に気温を調整することが可能なので、「すべてのアラビカ種が取れなくなる」という状況が到来するものではありませんが、野生種は害虫や病気に対抗する遺伝的多様性を持っているため、生産者はこれまでうまく野生種を活用してきています。

「最悪のシナリオは、2080年までに野生のアラビカ種が滅びてしまうことだ」と語るのは、今回のリポートを制作した1人であるジャスティン・モート氏。「種の脆弱性について、意志決定が可能な人間に警告を発するべきだ」と、エチオピアや南スーダンなどの原産地以外で、アラビカ種が生育できる場所を見つけるのが種の絶滅を防ぐために不可欠だと主張しています。

ちなみに、野生のアラビカ種が滅びなかったとしても、コーヒーの収穫量や風味には影響が出るであろうとのこと。

By kurisuuu

コーヒーといえば手軽に飲めるものというイメージですが、やがては貴重な高級嗜好品となってしまうのでしょうか。