サイエンス

「集団による意思決定」が個人の意思決定よりも優れたものになる理由とは?


「三人寄れば文殊の知恵」ということわざがあるように、特定のトピックについての考える際は、一般に1人で考えるより複数人で考えた方が良い答えが出るとされています。新たな研究では、「複数人が意思決定する際のプロセス」に着目し、集団での意思決定が優れたものになる理由の一端が明らかとなりました。

Collective problem decomposition improves the wisdom of deliberative crowds | Nature Communications
https://www.nature.com/articles/s41467-026-76365-y

The Real Reason Group Decisions Beat Solo Ones (Hint: It's Not Averaging) : ScienceAlert
https://www.sciencealert.com/groups-really-do-make-better-decisions-but-not-for-the-reason-you-think

複数人による意思決定が個人による意思決定より優れたものになるというケースは、地政学的な判断から金融市場の予測、医療診断に至るまであらゆる場面で観察されています。しかし、必ずしもすべての場面において、集団による意思決定がより優れたものになるとは限らないとのこと。


一部の研究では、人々が独立して考えるのではなく互いに影響を与え合うことで、問題に対する推定精度が低下すると結論付けられました。その一方で、小規模グループの合意に基づく推定値を平均化すると、はるかに大規模な集団の独立した推定値を平均化するよりも、一貫して優れた結果が得られるとの結果も報告されています。そのため、研究者らは長年にわたり、なぜ集団での意思決定が機能する場合とそうでない場合があるのかを理解しようとしてきました。

重要な疑問のひとつは、「成功する議論の過程で何が起こっているのか」という点です。たとえば、集団の構成員がそれぞれ問題に対する自分の見解を持ち寄り、その平均を取るという議論の方法があります。また、問題について集団で論理的に考えて、個々人では思いつかなかったようなまったく新しい答えにたどり着くという方法もあります。


今回、アルゼンチンのトルクァト・ディ・テラ大学の研究チームは、「グループ全員が最初に持ち寄った推定値を平均するのではなく、複雑な問題をより小さく簡単な問題に分解するフェルミ推定を集団で行うことで、集団としての意思決定精度が向上する」という仮説を立てました。

この仮説を検証するため、研究チームは合計約900人の被験者を対象に、小さな集団がどのようにして合意に達するのかを調べる3つの実験を行いました。1つ目の実験では4人ずつの小さなチャットルームが設けられ、一般常識に基づく数値推定問題の答えを出すように求めました。なお、被験者には議論のやり方について何の指示も与えられなかったとのこと。

議論の内容とグループが出した答えを分析した結果、問題を小さな部分に分解して集団で論理的検討を行ったグループは、最初にそれぞれが推定値を出し合っただけのグループより正確な答えにたどり着いたことが判明。また、より正確な答えにたどり着いたグループは優秀な個人が議論を支配するのではなく、グループの構成員がほぼ均等に議論に参加していました。

2つ目の実験では、「問題を小さな部分に分割して集団で考える」という思考法を教えられるのかどうかが確かめられました。研究チームは被験者のグループを2つに分けて、一方には「各自の初期推定値を共有してその平均を出すように」と指示して、もう一方には「問題をより小さな部分に分割して、それぞれの小さな部分について見積もりを行い、それらを組み合わせて答えを出すように」と指示しました。その結果、集団で論理的に考えるように指示されたグループの方が、一貫して正確な答えを出すことがわかりました。

3つ目の実験では、被験者全員にフェルミ推定を用いるように指示しましたが、半数は単独で問題に取り組み、残る半数は集団で問題に取り組みました。結果を分析したところ、個人レベルでも確かに改善がみられたものの、グループで考えた方がより正確な結果が得られました。これらの結果は、集団環境で互いの推定値を共有して確認し合うことで、個人では得られない何らかのメリットが得られることを示唆しています。


さらに興味深い点として、研究チームがグループが議論の中で使った言葉を分析した結果、最も成功したグループは「解決しようとしている問題により密接に関連する概念」について、議論する傾向があることもわかりました。

たとえば、あるモニュメントにある段の数を推定するという問題の場合、より優れたチームは「階段」「建物」「階数」といった言葉を使う可能性が高いとのこと。このように問題を細かく分割して考えることで、より考えやすくしていたことを示しています。

なお、今回の研究で扱われたのは数値推定課題のみだったため、同じ戦略が異なる種類の集団意思決定にも適用できるかどうかを知るには、さらなる研究が必要だとされています。しかし研究結果からは、問題を分割することが集団意思決定のためのより効率的な方法であることが示唆されています。

研究チームは論文で、「この研究は集団的推論、特に近似による推論が審議における集団的精度の向上を支える基盤であることを示しています。このようなプロセスを検出および促進するためのツールを提供することが、人間の集団的意思決定の基本的な理解に貢献し、クラウドソーシング戦略の改善を目的とした実用的なアプリケーションに役立ちます」と述べました。

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in サイエンス, Posted by log1h_ik

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