オスのタコはメスのホルモンによって交尾を誘導されている

タコは地球上で最も奇妙な生物のひとつです。骨がないため体は非常に柔らかく、カメレオンのように体色を変えることが可能で、心臓が3つあり、青色の銅を主成分とする血液を持っています。そんなタコの性生活を調査した論文を、ハーバード大学の研究チームが発表し、性生活も非常に奇妙なものであることが明らかになりました。
A sensory system for mating in octopus | Science
https://www.science.org/doi/10.1126/science.aec9652

Male octopuses guided through mating by female hormones - Ars Technica
https://arstechnica.com/science/2026/04/male-octopuses-guided-through-mating-by-female-hormones/
タコが生息する深海は、パートナーを見つけることが困難な場所です。また、タコは群れではなく単独で行動するため、パートナーに出会うことは非常にまれです。そのため、タコ同士が出会い、繁殖する際の正確な仕組みは、長年生物学者を悩ませてきました。これまで明らかになっていたのは、オスのタコは交接腕を使ってメスを識別する、ということです。これ以上の詳細は、厳密な科学的根拠というよりも、逸話的な証拠に基づくものがほとんどだった模様。
ハーバード大学の研究チームは、タコの性生活に関する詳細を得るべく、実験を考案しました。実験では野生で捕獲したオスとメスのカリフォルニア・ツースポットタコを同じ水槽に入れています。しかし、野生のタコは単独行動するため、水槽に入れたタコが互いにどのような反応をするかわからなかったため、研究チームは水槽に仕切りを設置しました。この仕切りは不透明で、タコの腕が通ることができる穴が開けられています。
研究チームを率いるハーバード大学の分子生物学者であるパブロ・S・ビジャール氏は、「仕切りを設置し、タコ同士が互いの存在を感じ合い、安心できるようにしようというのが当初の考えでした。その後、仕切りは取り除くつもりでした」と語っています。
しかし、オスとメスのタコは開いた穴を通して交尾したため、仕切りは取り除く必要はありませんでした。タコは開いた穴を通し、関係を深めていったためです。これについて、ビジャール氏は「私たちはとても驚きました。そんなことは予想していませんでした」と語っています。

オスのタコは交尾の際に、仕切りの開口部から交接腕を伸ばし、まずメスのタコに触れ、腔内へと腕を伸ばしていったそうです。ビジャール氏は「タコにはすべての内臓に届く開口部である腔があります。オスはメスのすべての内臓に触れることができ、これはかなり侵襲的です」と語っています。なお、オスの交接腕がメスの腔内に入ってから、タコは約1時間にわたって一切動かなくなったそうです。
タコが交尾する際、オスはメスの体内から卵管の開口部を見つけ出し、特殊な付属器官を使って精子を送り込まなければいけません。しかも、オスは視覚的な手がかりも、メスからのフィードバックもほとんどない状態でそれを行わなければいけません。
「オスが外套膜の中にいて、メスが受け入れ態勢にあるとき、メスはあらゆる動きを止めます。なぜなら、それは繊細な運動制御行動だからです」と、ビジャール氏は語っています。
タコの交尾について、Ars Technicaは「このプロセスは、一般的にイメージされるセックスの姿よりも、宇宙船が国際宇宙ステーションにドッキングする様子や、ジェット戦闘機が空中で給油機から給油を受ける様子に似ているかもしれません」と表現しました。
なお、同じようにオスのタコ2匹を水槽に入れたところ、タコは交接腕で接触するものの、交尾を試みることはなかったそうです。これはメス由来の特定の化学物質が交尾を促している可能性を示唆しています。

研究チームはタコの性生活を分子レベルで解明するためにメスの生殖器官に着目したところ、メスの卵管と卵巣には性ステロイドホルモンの生成に不可欠な酵素が高レベルで発現していることが判明。特に、卵管には女性ホルモンの一種であるプロゲステロンの生成に関わる酵素が豊富に含まれていることが明らかになりました。
研究チームはメスを水槽から取り出し、代わりにさまざまな化学刺激物質を塗布した円錐形のプラスチックチューブを水槽内の仕切りに開けた穴に差し込みました。オスはプロゲステロンを塗布した円錐に出会うと、メスの外套膜で行ったのと同じような交尾探索行動を示したそうです。一方で、プロゲステロンに類似したステロイドや胆汁酸、苦みのある分子を塗布した円錐では、同じような反応は見られませんでした。
このことから、オスのタコは交尾の際に交接腕にあるCRT1と呼ばれるタンパク質である化学触覚受容体を使い、メスが放出したプロゲステロンに反応することが明らかになっています。
また、走査型電子顕微鏡でタコの交接腕を観察したところ、先端が通常の感覚吸盤と構造的に同一の小さな吸盤に覆われていることが明らかになりました。これは交尾用の吸盤と考えられており、神経細胞が密集していることも判明しています。

研究チームはカリフォルニア・ツースポットタコ以外のタコや、多様な頭足類も調査しています。その結果、頭足類の卵巣はすべて性ステロイドを生成するために必要な酵素を発現していることが明らかになりました。交接腕の形状は種によって異なるものの、いずれも外因的に投与されたプロゲステロンに強く反応する吸盤を備えていたそうです。
なお、ビジャール氏率いる研究チームによる研究では、「交尾は異なる種類のタコの間でも起こるのか?」「タコは交尾相手を選ぶのか?」「交尾中のタコ2匹が1時間もほとんど動かずにいることは、捕食者に対して極めて無防備な状態になるのではないか?」といった疑問が今後の研究課題として残されています。
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in サイエンス, Posted by logu_ii
You can read the machine translated English article Male octopuses are induced to mate by fe….







