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ジェット機並みの巡航性能を備えつつも滑走路に依存しない垂直離着陸能力を実現するDARPAの実験機「X-76」


アメリカの国防高等研究計画局(DARPA)が、航空機の高速性とどこにでも行けるヘリコプターの柔軟性との両立を目標とした「SPeed and Runway INdependent Technologies(SPRINT)」プログラムの実験機である「X-76」を発表しました。

DARPA’s new X-76: the speed of a jet, the freedom of a helicopter | DARPA
https://www.darpa.mil/news/2026/darpa-new-x-76-speed-of-jet-freedom-of-helicopter


ジェット機は巡航速度が時速約830kmと高速で飛行できますが、十分な長さのある整備された滑走路が必要です。一方で、ヘリコプターは最高速度でも時速300kmほどとジェット機よりは遅いものの、滑走路に依存しないため、前線基地や災害地域といった未整備地ではヘリコプターが用いられます。


この問題を解決するため、滑走路に依存せずジェット機並みの速度で飛行できる航空機を開発するプロジェクトがSPRINTプログラムです。SPRINTプログラムのマネージャーを務めるアメリカ海軍のイアン・ヒギンズ中佐は「滑走路は長きにわたり、速度を付与する手段であると同時に、速度を制限し重大な弱点を生み出す存在でもありました。SPRINTでは様々な選択肢を構築しています。私たちは、滑走路を必要とせずに、地球上のどこにでも奇襲攻撃、迅速な増援、そして人命を救う速度を提供できるよう取り組んでいます」と語っています。

SPRINTプログラムは2023年11月に「フェーズ1」に入り、契約会社が機体の予備設計作業を完了するための期間が約1年与えられました。2025年6月にはフェーズ2および3の契約をベル・ヘリコプターの軍用部門であるテキストロンが獲得しました。

ベル・ヘリコプターが提案した機体は「Stop-Fold Rotor(停止・折りたたみ式ローター)」という特徴的な構造を採用しています。通常のティルトローター機では、大きなローターが高速飛行時の空気抵抗となるため速度が制限されるという問題があります。Stop-Fold Rotorでは、離陸やホバリング時にはヘリコプターのようにローターを回転させて揚力を得る一方、一定速度に達するとローターを停止して機体に折りたたみ、ジェット推進で高速巡航を行うことで、ティルトローターを用いた「垂直離着陸」と、ジェット機のような「高速巡航」を両立できるというわけです。以下は、過去に公開されたStop-Fold Rotor航空機のレンダリング画像。


ベル・ヘリコプターのエンジニアリング担当エグゼクティブバイスプレジデントであるジェイソン・ハースト氏は「先進的なStop-Foldシステムファミリーは、垂直離着陸機の速度、航続距離、そして生存性に革命をもたらし、厳しい環境下での運用を可能にします。この画期的な技術によって、航空史における新たなマイルストーンに貢献できることを大変嬉しく思います」と述べています。

フェーズ2では、SPRINTプログラムを実現する「X-Plane」の製造、統合、組立、地上試験に重点を移します。X-Planeとは量産を目的とせず、新しい航空技術を実証するために開発される実験機のシリーズです。

そして2026年3月9日には、SPRINTの実験機は正式に「X-76」と命名されました。X-76という番号は、アメリカ独立宣言が採択された1776年から付けられており、2026年に迎えるアメリカ建国250周年にちなんだものとされています。以下は、X-76をベースとした実用航空機のコンセプト画像で、最大時速約830kmの速度で巡航している様子が描かれています。


X-76は既に詳細設計審査に合格し、テキストロンで製造が進められています。X-76は「時速740km以上の速度で巡航」「厳しい環境でもホバリング可能」「整備された滑走路がない場所からでも運用できる」という機能を革新的に組み合わせることを目標としています。

DARPAは過去にも垂直離着陸と高速巡航を両立したVTOL機の研究を行っており、2000年代にはローターを停止して翼として使う「X-50・Dragonfly」が開発されましたが、試験機2機がいずれも墜落し計画は中止されています。X-76もフェーズ2の完了後、フェーズ3の飛行試験プログラムは2028年初頭に予定されており、その成否が注目されています。

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in 乗り物, Posted by log1e_dh

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