サイエンス

ボウリングでストライクを出すコツを数学的シミュレーションから解き明かした研究


球を転がして10個のピンを倒して競うボウリングは、アメリカでは4500万人以上の競技人口を誇る人気スポーツで、アメリカ国内で開催される大会では毎年多額の賞金がかけられています。そんなボウリングを数学で解き明かした研究論文が、ラフバラー大学やマサチューセッツ工科大学などの共同研究チームによって発表されました。

Using physics simulations to find targeting strategies in competitive tenpin bowling | AIP Advances | AIP Publishing
https://pubs.aip.org/aip/adv/article/15/4/045222/3344017/Using-physics-simulations-to-find-targeting

The physics of bowling strike after strike - Ars Technica
https://arstechnica.com/science/2025/04/the-physics-of-bowling-strike-after-strike/

研究チームの一人であるラフバラー大学スポーツ技術研究所のカーティス・フーパー氏は、欧州ユース選手権においてイングランドチームのコーチを務めており、競技ボウリング指導者としての経験を持つ人物です。また、フーパー氏はこれまでにもボウリングに関する論文を複数発表しており、イギリスの全国大会の分析や、ボウリングレーンに塗られるコンディショナー(オイル)の分析などを研究しています。


今回の研究では、ボウリングのボールの動きを記述するために、オイラーの運動方程式を用いた6つの連立微分方程式が導出されました。オイラーの運動方程式は、18世紀のスイスの数学者レオンハルト・オイラーによって導出された方程式で、剛体の回転運動を記述するために使用されます。今回の研究は、ボウリングボールを「内部に非対称なウェイトブロックを持つ剛体」としてモデル化しています。

導出された連立微分方程式が以下で、ボールの動きを示しています。方程式はボールの速度(ν)、ボールの角速度(ω)、ボールとレーン間の摩擦係数(μ)、重力加速度(g)、ボールの質量(m)、ボールの主慣性モーメント(I')、ボールのウェイトブロックの向き(φ)で構成されています。


そして、研究チームはこの連立微分方程式を元に、あらゆる投球位置と角度の組み合わせをシミュレーションしています。2009年にアメリカボウリング協会が発表した(PDFファイル)データから、「ヘッドピンの中心から6cm離れた位置に約6度でボールが当たる」という条件を理想的なストライク基準として、どういう投球条件であればストライクの確率が最も高くなるのかを算出しました。ボウリングのレーンにはオイルを塗りますが、このシミュレーションでは40フィート(約12.2m)にわたって均一にオイルが塗られた「フラットオイルパターン」と35フィート(約10.7m)の長さでオイルの塗りが不均一な「ショートオイルパターン」が想定されています。


シミュレーションの結果、フラットオイルパターンのストライク率は「投球位置20ボード目、投球角度3.0度」で最大約75%、ショートオイルパターンは「投球位置28ボード目、投球角度1.8度」で最大約89%であることが判明しました。研究チームは、ショートオイルパターンでのストライク率が明らかに高くなる点に注目しています。

この違いを説明するため、研究チームは「最高レベルのプロボウラーでも意図していた投入角度に約0.1度の誤差が生じ、それがレーンの奥で数cmのズレを生む」という現実を考慮し、人間の誤差を正規分布でモデル化した上で「ミスルーム」という概念を導入しています。このミスルームとは「ボウラーが意図した目標からわずかにずれても、ボールが理想的なピン接触位置にたどり着ける許容範囲」のこと。

ショートオイルパターンの28ボード付近は、レーン中央の低摩擦エリアとレーン端の高摩擦エリアの境界線に当たる場所で、例え投入位置がわずかにズレても自然に修正されやすい性質があります。摩擦の変化が大きい境界線でプレイすることで、ミスルームが最大化され、ストライク率が高くなるというのが研究チームの主張です。


この主張は、経験豊富なボウラーが直感的に理解しているコツと一致しています。プロボウラーは摩擦の境界線になる部分を攻めるルートを経験的に狙っていますが、今回のシミュレーションによってその戦略が物理学的・数学的にも正しいことが証明されたと研究チームは論じました。また、研究チームは今後の展望として、モデルのさらなる改良も示唆しており、レーンの平坦でない地形の影響、ボールの硬さを考慮した面での接触、ボール速度や軸回転がミスルームに与える影響など、さらに詳細な要素を取り入れた研究を計画しています。また、特定のボウリングボール表面、オイルの種類、レーン表面に応じたより正確な摩擦係数の実験的測定も今後の課題として挙げられています。

この記事のタイトルとURLをコピーする

・関連記事
ボウリングのレーンには見えない「パターン」が存在してスコアを左右していた - GIGAZINE

プロのボウリング選手でも倒せない「最も難しいスプリット」の並び方が判明 - GIGAZINE

元NASAのエンジニアがボウリングの球を「ハッキング」してストライクを連発するムービー - GIGAZINE

世界最速、ボウリングで12ストライクを86.9秒で完遂する様子がYouTubeで公開中 - GIGAZINE

ボウリングで普通はやらない変わった投げ方のスゴ技 - GIGAZINE

in サイエンス, Posted by log1i_yk

You can read the machine translated English article A mathematical simulation study reveals ….