シンプルで安価な触媒と空気を使ってプラスチックを分解することに成功

ノースウェスタン大学の化学者チームが、空気中の水分を利用してプラスチック廃棄物を分解する新しいシンプルな方法を開発しました。
Thermodynamically leveraged solventless aerobic deconstruction of polyethylene-terephthalate plastics over a single-site molybdenum-dioxo catalyst - Green Chemistry (RSC Publishing)
https://pubs.rsc.org/en/content/articlelanding/2025/gc/d4gc05916f

Scientists break down plastic using a simple, inexpensive catalyst and air
https://phys.org/news/2025-03-scientists-plastic-simple-inexpensive-catalyst.html
食品包装や飲料ボトルに頻繁に使用されているポリエチレンテレフタレート(PET)は、世界で使用されるプラスチック全体の12%を占めています。PETは分解されにくいため、プラスチックによる環境汚染の大きな原因となっています。PETは使用後、最終的に埋め立て地に廃棄され、時間の経過と共に微細なマイクロプラスチックやナノプラスチックに分解され、廃水や水路に流れ込み、環境を汚染します。
そのため、PETをリサイクルする新しい方法を見つけることは、非常に熱望されているというわけです。既存のプラスチック分解方法は、非常に高い温度や大量のエネルギーを必要としたり、有害な副産物を生成してしまう溶媒を使用したりと、何かと問題があります。既存のプラスチック分解方法で使用する触媒は、プラチナやパラジウムなどの高価なものが多く、有毒でもあり、有害な廃棄物を生み出してしまいます。

既存のプラスチックリサイクル方法よりも安全かつクリーンで、安価で持続可能なプラスチックの分解方法を、ノースウェスタン大学の化学者チームが開発しました。この方法は持続可能な代替技術の開発に関する最先端の研究論文を掲載する学術誌のGreen Chemistryに掲載されたばかりです。
ノースウェスタン大学の化学者チームが開発したプラスチック分解方法は、毒性がなく、環境に優しく、溶剤も使いません。新しいプラスチック分解方法では、まず安価な触媒を利用してポリエステル系プラスチックの中でも最も一般的なPETの結合を分解。次に、単に破片を周囲の空気にさらし、空気中の水分を利用することで、PETはモノマー(プラスチックの重要な構成要素)に変換されます。これにより、モノマーを新しいPET製品または他のより価値のある材料にリサイクルすることが可能となるわけです。

新しいプラスチック分解方法に関する論文を記したノースウェスタン大学のヨシ・クラティッシュ氏は、「アメリカは国民1人当たりのプラスチック汚染量が世界で最も多く、リサイクルされるプラスチックはわずか5%に過ぎません。つまり、さまざまな種類のプラスチック廃棄物を処理できる、より優れた技術が切実に求められています。既存の技術のほとんどは、ペットボトルを溶かし、低品質の材料にダウンサイクルするようなものです」「我々の研究において特に興味深いのは、空気中の水分を利用してプラスチックを分解し、非常にクリーンで選択的なプロセスを実現したことです。PETの基本構成要素であるモノマーを回収することで、PETをリサイクルしたり、さらに価値の高い材料にアップサイクルしたりすることが可能となります」と語りました。
研究の筆頭著者のひとりであるナビーン・マリク氏は、「私たちの研究は、世界で最も差し迫った環境問題のひとつであるプラスチック廃棄物に対する持続可能で効率的な解決策を提示しています」と語りました。さらに、「従来のリサイクル方法は、廃塩などの有害な副産物を生成し、多大なエネルギーや化学物質の投入を必要とすることが多いのに対し、我々の新しいプラスチック分解方法は、空気中の微量水分を利用する無溶剤プロセスであり、環境に優しいだけでなく、実際の用途にも非常に実用的です」と語っています。
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in サイエンス, Posted by logu_ii
You can read the machine translated English article Successfully decomposes plastic using si….