人の毛穴に生息する「ニキビダニ」の生態とは?

哺乳類の皮膚、特に多くのヒトの顔には、「ニキビダニ」と呼ばれるダニが寄生しています。毛穴の中で生きて食事をしたり交尾をしたり卵を産んだりしているニキビダニの生態について、イギリスのレディング大学でニキビダニを研究するアレハンドラ・ペロッティ博士が解説しています。
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1841年、ドイツの解剖学者であるジェイコブ・ヘンリーがヒトの耳あかを顕微鏡で観察しているとき、小さな虫がいることを発見しました。後に、それはダニのグループに属することが判明し、「demodex(ニキビダニ属)」と呼ばれるようになりました。

ニキビダニはさまざまな哺乳類の皮膚に存在していますが、動物によって種類は異なります。主にヒトの皮膚には毛包内およびその周囲に生息するDemodex folliculorumという種と、皮脂腺に生息するDemodex brevisという2種がいます。

ニキビダニの一生はヒトの生活サイクルと強く結び付いています。日が暮れるとヒトの体は睡眠に関係するメラトニンというホルモンを生成します。メラトニンはニキビダニに対しては刺激信号として働くため、夜になるとニキビダニの活動は活発になります。

活動中のニキビダニは時速1cmほどの速度で移動し、顔の表面を横切ったり毛穴に潜んだりします。研究によると、ひとつの毛穴ごとに14匹のニキビダニを収容できるそうです。

ニキビダニはすべてのヒトの顔に存在しており、肌が触れ合うことで乳児にも移っていきます。ニキビダニは毛穴の内側に寄生して一生を過ごし、数が増えると宿主の皮膚に炎症を引き起こすと考えられていましたが、ペロッティ氏も参加した2022年の研究では、発生の初期に細胞数を減少させるという寄生虫の特徴とは異なることが判明したほか、皮膚の炎症への影響が少ないことが示されました。そのため研究チームは「ニキビダニは寄生生物から共生生物に変化しつつあります。ニキビダニは多くの要因から非難されてきましたが、ニキビダニとヒトの長い付き合いは、ニキビダニに有益な役割を与えた可能性があります」と指摘しています。
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ペロッティ氏によると、免疫システムに異常をきたしているときや、ニキビダニの数がうまく調整されず増えすぎてしまったときは、皮膚の炎症につながる可能性があるとのこと。しかし、ほとんどの人にとってはニキビダニは無害です。また、ほとんどの人はオリジナル系統のニキビダニを保有しているため、ニキビダニを調べることでその人の先祖を知る研究も進んでいるそうです。

一方で、個人の顔に固有のニキビダニグループが繁殖を繰り返す関係上、全体的な遺伝的多様性は日ごとに減少していきます。そのため、ニキビダニが何かのきっかけで絶滅してしまう可能性をペロッティ氏は指摘しています。実際にニキビダニの絶滅は起こるのか、絶滅したら皮膚に何が起こるのかは分かっていませんが、少なくとも現在顔にニキビダニが生息していることは正常であり、健康の証拠であるとペロッティ氏は述べています。

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