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「現在のAIをスケールアップしても汎用人工知能は開発できない」と考える科学者の割合は76%


OpenAIやGoogleなどの企業が、人間のように未知の状況でも新たなスキルを効率的に取得して適応することが可能な「汎用(はんよう)人工知能」(AGI)の開発を進めています。しかし、新たにアメリカ人工知能学会が行った調査では、475人のAI研究者のうち76%が「現在の大規模言語モデルをスケールアップしてもAGIを開発できる可能性は低い」と回答していることが報告されました。

AAAI 2025 PRESIDENTIAL PANEL ON THE Future of AI Research
(PDFファイル)https://aaai.org/wp-content/uploads/2025/03/AAAI-2025-PresPanel-Report-Digital-3.7.25.pdf


Current AI models a 'dead end' for human-level intelligence, scientists agree | Live Science
https://www.livescience.com/technology/artificial-intelligence/current-ai-models-a-dead-end-for-human-level-intelligence-expert-survey-claims

近年では、より高い性能を持つAIを開発するために、多額の資金やエネルギーが投入されており、生成AI業界が世界中でベンチャーキャピタル設立に充てている予算は2024年だけで560億ドル(約8兆4400億円)にのぼります。また、AI開発のための巨大なデータセンター複合施設も数多く建設されており、アメリカ国内のデータセンターによる炭素排出量は2018年から2024年にかけて約3倍に増加しています。

加えて、AIモデルの開発には学習資料となるデータセットが必要不可欠ですが、すでに大規模なモデルはアクセスできるデータのほとんどを学習済みで、2028年までにデータを使い果たしてしまう可能性も指摘されています。

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こうした実情を受け、アメリカ人工知能学会が行った調査では475人のAI研究者のうち76%が「現在の大規模言語モデルをスケールアップしても、AGIを開発できる可能性は低い/非常に低い」と回答しています。カリフォルニア大学バークレー校のコンピューター科学者であるスチュアート・ラッセル氏は「AI企業による投資はすでに過剰なものとなっており、『自分たちは投資しすぎた』と間違いを認める分岐点はもう過ぎています」と指摘しました。

またラッセル氏は「現在のAI開発のアプローチにおける基本的な問題は、それらすべてが大規模なフィードフォワード回路、つまりデータが入力から出力まで一方的に流れるタイプののトレーニングを伴うことだと思います。現在のAIアーキテクチャには、概念を表現する方法に根本的な制限があります。そのため、膨大なデータを学習しても断片的な表現しか生成することができないというわけです」と批判しています。


さらに、トレーニングコストが大手AI開発企業の数十分の一でありながら、OpenAI o1などのAIモデルと同等の性能を発揮できる「DeepSeek R1」のリリースにより、AI開発コストを増大させるスケーリングがAIの改善には不可欠という仮定が覆されました。また、こうした安価かつ高性能なモデルの登場もあって、調査対象となったAI研究者のうち79%が「AIの機能に対する認識が現実と一致していない」と回答しました。ラッセル氏は「現在のAI開発競争がバブルだと考えている専門家は数多く存在しています。特に、DeepSeek R1のように高性能なモデルがオープンソースで入手可能な時はなおさらです」と述べています。

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一方で、DeepSeekの成功は、AIシステムの設計方法にエンジニアリングイノベーションの余地が残されていることを示しています。一部の専門家によると、確率的プログラミングが現在のアーキテクチャよりもAGIに近づく可能性があるとのこと。また、従来のAIモデルよりも正確な応答を生成する推論モデルを他の機械学習システムと組み合わせることで、AGIの開発が前進する可能性も挙げられています。

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in ソフトウェア, Posted by log1r_ut

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