ハードウェア

Appleは自社以外のスマートウォッチに対してiPhoneの機能を制限している

by Jon Fingas

スマートウォッチ「Pebble」の生みの親であるエリック・ミジコフスキー氏が、「Appleの制約によってiPhone向けのPebbleスマートウォッチの開発が困難になっている」と主張しています。ミジコフスキー氏は自身のブログで、Appleがサードパーティー製のスマートウォッチに対して多くの機能を制限しているため、PebbleのiOS版アプリはAndroid版ほどの機能を提供できないと語りました。

Apple restricts Pebble from being awesome with iPhones
https://ericmigi.com/blog/apple-restricts-pebble-from-being-awesome-with-iphones

Pebbleは2012年に発表されたスマートウォッチで、E-Ink(電子ペーパー)ディスプレイを採用することでシンプルながらも長時間のバッテリー持続を実現したことで話題となりました。

by SonnyandSandy

ミジコフスキー氏によれば、Androidは比較的自由にアプリを開発できたため、PebbleとAndroidスマートフォンの連携はスムーズに進めることができたとのこと。しかし、iOSではAppleの制約が多く、さまざまな課題に直面したそうです。

たとえば、iOSではサードパーティー製スマートウォッチからiMessageやSMSを送信することが不可能でした。Androidでは簡単に対応できる機能も、Appleの制限により実装できず、ユーザーにとって不便な状況が続いていました。また、受信した通知を確認することはできましたが、返信や削除、ミュートなどのアクションを実行することはできなかったとのこと。

さらに、Androidはプロセス間通信(IPC)が可能だったため、アプリ間のデータ共有が容易だったのに対し、iOSにはこの機能がなく、Pebbleが他のアプリと直接連携することが難しくなっていました。そのため、Pebbleは独自のSDKを提供し、アプリ側が個別にBluetooth接続を組み込む必要がありましたが、この方法は開発者にとって手間が多く、アプリの安定性を保つのが難しかったとミジコフスキー氏は述べています。

by Jonas Birmé

加えて、iOSでは、Pebbleアプリがバックグラウンドで動作できず、ユーザーがアプリを閉じるとPebbleとの通信が切れてしまう問題がありました。このバックグラウンド動作制限はiPhoneの省電力を目的としたものでしたが、結果としてPebbleのユーザー体験が著しく制限されました。

また、初代のPebbleでは、iPhoneを操作している最中でも通知を送信してしまうという問題がありました。たとえばユーザーがiPhoneでSNSを見ている最中に同じ通知がPebbleにも届いてしまい、二重で通知が表示されることもあったとのこと。これは、Appleが外部デバイスに対してiPhoneの使用状況を共有しない仕様になっていたためでした。


極めつけは、Androidだと可能なサイドローディングがiOSでは不可能だったということ。つまり、PebbleのアプリはすべてAppleのApp Storeを通じて配布する必要があり、Appleの審査を通らなければならないというわけです。ミジコフスキー氏は「Appleの審査は厳しく、不明瞭な理由で拒否されることもあったため、Pebbleの開発スピードに大きな影響を与えました」と語っています。

こうした制約を受けながらも、Pebbleは何とかiPhoneと連携できるように工夫を重ねていたとのこと。特にメッセージ送信に関しては、Appleの制約を回避するために通信企業のAT&Tと特別な契約を結び、SMSをインターネット経由で送信する仕組みを作ったそうです。しかし、これはあくまで「裏技的な解決策」であり、最終的にはiOSのメッセージアプリと完全に統合することはできませんでした。

by Orde Saunders

また、PebbleはJavaScriptエンジンをPebbleOS内で動作させるために、iOSの制限をクリアする複雑な手法を用いる必要があり、「iOSアプリ内にコンパイラを組み込み、それをJavaScriptにクロスコンパイルする」といった高度な技術が求められたとミジコフスキー氏は述べています。

ミジコフスキー氏は「私たちの時計(Pebble)は、iOSではAndroidよりも機能が劣っているように見えます。これはAppleのせいであり、私たちのせいではありません。Appleは明らかに市場力を利用して、消費者を自分たちの壁で囲まれたエコシステムに閉じ込めています。これにより競争が減り、価格が上昇し、イノベーションが減ります」と語りました。

Pebbleは2016年にFitbitに買収され、新たなデバイスが開発されることはなくなりました。しかし、ミジコフスキー氏は2025年3月にPebbleの後継モデルとなる「Core 2 Duo」「Core Time 2」を発表し、AndroidおよびiOS用のアプリも開発中であることを明らかにしています。

スマートウォッチの先駆者「Pebble」が創業者の手によって復活、早速2つのモデルの発売が告知される - GIGAZINE


しかし、ミジコフスキー氏は「iOSの制約は依然として厳しく、当時と同じ問題に直面しているのが現状です。Pebbleに興味があるiPhoneユーザーが大声で文句を言うか、Androidに乗り換えない限り、Appleがやり方を変えることは決してありません。Appleは、ユーザーを自社のプラットフォームに閉じ込めようと全力を尽くしているため、これも難しいことです」とコメントしました。

この記事のタイトルとURLをコピーする

・関連記事
Apple Watchよりも先に登場したスマートウォッチ「Pebble」はなぜ失敗したのかを創業者が語る - GIGAZINE

スマートウォッチの先駆け「Pebble」のOSをGoogleがオープンソース化、元開発者はPebble復活プロジェクトを立ち上げる - GIGAZINE

初期のApple Watchとしのぎを削ったスマートウォッチ「Pebble」が最新スマホの「Pixel 7」に対応 - GIGAZINE

1型糖尿病を患う息子のために独自のスマートウォッチをゼロから自作 - GIGAZINE

スマートウォッチの先駆者「Pebble」の創設者がBlackberryライクな物理キーボード付きポケットコンピューター「Beepberry」を発表 - GIGAZINE

in ソフトウェア,   ハードウェア, Posted by log1i_yk

You can read the machine translated English article Apple restricts iPhone functionality on ….