お茶を入れると飲み水から有害な重金属を除去できることが判明、ティーバッグでもOK

日本は世界でも数少ない水道水がそのまま飲める国ですが、交換が進んでいない鉛製給水管の老朽化といった問題により鉛中毒が発生することがあります。紅茶や緑茶、ハーブティーが好きな人には朗報なことに、茶葉やティーバッグを使ってお茶を入れると水から鉛やカドミウムなどの重金属を除去できることが研究により確かめられました。
Brewing Clean Water: The Metal-Remediating Benefits of Tea Preparation | ACS Food Science & Technology
https://pubs.acs.org/doi/10.1021/acsfoodscitech.4c01030
Brewing tea removes lead from water | EurekAlert!
https://www.eurekalert.org/news-releases/1074361
Brewing tea removes lead from water - Ars Technica
https://arstechnica.com/science/2025/02/brewing-tea-removes-lead-from-water/
ノースウェスタン大学の吸着材の専門家であるヴィナヤック・ドラビッド氏らは、2025年2月24日に査読付き学術誌・ACS Food & Science Technologyに掲載された論文で、世界的に広く使われている茶葉の吸着素材としての性質に着目した研究を発表しました。
ドラビッド氏は研究のきっかけについて、「この研究の目的は、茶葉を浄水器として使い始めるのを提案することではなく、重金属を吸着する茶葉の能力を測定することでした。この効果を定量化すれば、茶葉の摂取が世界中の人々の重金属暴露の減少に受動的に貢献するという、まだ認識されていない可能性を浮き彫りにすることができます」と話しています。
研究を進めるに当たり、トラビット氏らはお茶の種類や入れ方が、茶葉による重金属の吸着にどう影響するかを調べました。具体的には紅茶、緑茶、ウーロン茶、白茶など、チャノキ(Camellia sinensis)の茶葉を使用した一般的な茶葉の効果を分析したほか、カモミールティーやルイボスティーなどのハーブティーも実験に使いました。また、茶葉からお茶を入れるか、ティーバッグを使うかによる違いも検証されました。

by Vinayak P. David Group/Northwestern University
実験は、鉛・クロム・銅・亜鉛・カドミウムを含む水溶液を沸点よりわずかに低い温度まで熱し、茶葉を加えて数秒から24時間までさまざまな時間浸してから、茶葉をこしてお茶に残った金属含有量を測定するという手順で行われました。
実験の結果、お茶を入れると鉛やカドミウムなどの重金属が自然に吸着され、飲み物から危険な汚染物質を効果的に除去できることが実証されました。この効果に重要なのは茶葉の種類ではなくティーバッグの種類で、一般的なティーバッグに使用されるセルロース製のティーバッグは最も効果的でした。その一方、綿やナイロン製のティーバッグはほとんど汚染物質を吸着せず、ナイロン製のものに至ってはマイクロプラスチックが放出されることが確かめられました。
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お茶を入れると重金属が除去される理由のひとつは、表面積の広さです。金属イオンは素材の表面にくっつくため、表面積が広いほど効果的で、特に木材パルプから作られる生分解性の天然素材であるセルロースは吸着剤として有効です。同様に、茶葉は加工される過程でしわが寄って気孔が開き、表面積が増えるため、「細かく砕いた紅茶の茶葉」は有毒金属を吸着する上で最も効果的でした。
論文の筆頭著者であるベンジャミン・シンデル氏は「綿やナイロンのティーバッグは、水から重金属をほとんど取り除きません。また、ナイロン製のティーバッグはマイクロプラスチックを放出することで既に問題視されていますが、今日使用されているティーバッグの大半はセルロースなどの天然素材で作られています。セルロースの微粒子は放出されるかもしれませんが、それは私たちの体が処理できる繊維に過ぎません」とコメントしました。
以下は、紅茶の葉の表面を走査型電子顕微鏡で500倍に拡大した写真です。

by Vinayak P. Dravid Group/Northwestern University
実験の中で最も重要だったのはお茶を入れる時間で、侵出時間が長いほどより多くの有毒金属を除去することができました。例えば、湯飲みにティーバッグを入れて3~5分間浸すだけでも、金属が10ppm含まれる高濃度の水から鉛を約15%除去することができると推定されています。
そのメカニズムについて、シンデル氏は「お茶は、長く浸すか表面積が大きいほど、より多くの重金属を効果的に除去します。数秒でお茶を作ってしまう人もいますが、それでは除去効果はあまり得られません。一方、アイスティーのように長い時間、あるいは一晩かけてお茶を入れると、水中の金属のほとんど、あるいはほぼすべてが除去されるでしょう」と説明しました。
お茶の健康への効果を調べる研究では、ポリフェノールやカフェインといった成分がよく注目されますが、有毒金属を除去するという茶葉の特性は見落とされてきました。その効果に焦点を当てた今回の研究結果は、お茶をよく飲む人の心臓病リスクや脳卒中リスクが低いことの裏付けのひとつになるかもしれないと、研究チームは考えています。

by Vinayak P. David Group/Northwestern University
素材の種類が何であれ、表面積が広ければそれだけで重金属の粒子を捕獲できるので、茶葉やティーバッグが特別に優れた金属吸着素材というわけではありませんが、さまざまな形で世界中の人々に親しまれている飲み物だという点でお茶は重要です。
シンデルは「お茶が特別なのは、お茶がたまたま世界で最も消費されている飲料だということです。あらゆる種類の素材を粉砕すれば、同様の金属除去効果が得られますが、必ずしも実用的ではありません。しかし、お茶なら特別なことは何もする必要はありません。水に茶葉を入れて浸すだけで、自然に金属が除去されます」とコメントしました。
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in サイエンス, 食, Posted by log1l_ks
You can read the machine translated English article It turns out that tea can remove harmful….