サイエンス

機械学習とナノ3Dプリンターで「鋼の強度と発泡スチロールの軽さを兼ね備えた新素材」の開発に成功


カナダ・トロント大学を中心とした研究チームが、機械学習により軽量でありながら高い強度を誇るナノ構造素材を設計したことを発表しました。この新しい構造の素材を飛行機や宇宙船の機体に使用すると、強度を維持しながら燃費を大きく改善させることができると見込まれています。

Ultrahigh Specific Strength by Bayesian Optimization of Carbon Nanolattices - Serles - Advanced Materials - Wiley Online Library
https://advanced.onlinelibrary.wiley.com/doi/10.1002/adma.202410651

Strong as steel, light as foam: Machine learning and nano-3D printing produce breakthrough high-performance, nano-architected materials - U of T Engineering News
https://news.engineering.utoronto.ca/strong-as-steel-light-as-foam-machine-learning-and-nano-3d-printing-produce-breakthrough-high-performance-nano-architected-materials/

「ナノ構造素材は、三角形で橋を作るなどして高性能な形状をナノスケールのサイズで組み合わせ、『微細なほど強い』という効果を利用して、あらゆる材料の中で最も高い強度対重量比と剛性対重量比を実現します」と語るのは、トロント大学機械・産業工学部のピーター・セルズ氏です。


セルズ氏によると、標準的な格子状の形状や幾何学的形状は、鋭角で交わる交差部分や鋭い角を持つ傾向があり、応力集中の問題につながるとのこと。これにより、素材は負担が強くかかる部分から崩壊し、全体的な強度が損なわれます。

この問題に取り組んでいたセルズ氏らは、解決には機械学習が最適だと考えて、韓国科学技術院(KAIST)のリュ・スンファ教授と博士課程の学生のヨ・ジンウク氏と協力し、改良素材の設計に着手しました。


新しいナノ構造の設計にあたり、KAISTのチームは多目的ベイズ最適化(MBO)機械学習アルゴリズムを採用しました。このアルゴリズムは、シミュレートされた形状から学習し、応力分散を強化して、強度対重量比の向上に最適なナノスケールの形状を予測します。

こうして得られた結果を、セルズ氏らがトロント大学の流体技術研究応用センター(CRAFT)にあるナノスケール3Dプリンターで出力することで、超高比強度とスケーラビリティを兼ね備えた軽量カーボンナノ格子素材のプロトタイプが完成しました。


セルズ氏らが作ったナノ構造素材は、シャボン玉の上に浮かぶほど軽量でありながら、チタンの約5倍に相当する強度を実現しました。


セルズ氏は「ナノ構造素材の最適化に機械学習が適用されたのは今回が初めてであり、その改善には驚きました。機械学習モデルは、学習データから目的に合致する形状を見つけ出すだけでなく、形状にどのような変更を加えるとうまくいき、どのような変更を加えないとうまくいかないかを学習し、まったく新しい格子形状を予測できるようになったのです」と話しました。

新素材は特に航空機やヘリコプター、宇宙船などの超軽量部品への応用が考えられます。セルズ氏によると、飛行機に使われるチタンの部品を新素材に置き換えれば、1kgの素材を置き換えるごとに年間80リットルの燃料が節約できると見込まれているそうです。


研究チームを率いたトロント大学のトビン・フィレター教授は「私たちの次のステップは、これらの材料設計のスケールアップをさらに改善し、コスト効率の高いマクロスケールのコンポーネントの実現に集中することです。私たちは今後も、高い強度と剛性を維持しながら材料構造をさらに低密度化する新しい設計を模索し続けます」と述べました。

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in 乗り物,   サイエンス, Posted by log1l_ks

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