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DeepSeek-R1の出現は「スプートニクショック」というよりも「Google登場に等しい」との評価


2025年1月20日、DeepSeekが推論モデルの「DeepSeek-R1-Zero」と「DeepSeek-R1」をMITライセンスの下でオープンソースとして公開しました。「R1」のトレーニングコストはOpenAIの推論モデル「o1」の約3%程度とも伝えられており、AI開発における業界の見方をDeepSeekは大きく変えています。そんなDeepSeekについて、Redditの元CEOで環境保全団体・Terraformationを運営するイーシャン・ウォン氏が解説しています。


中国のAI企業であるDeepSeekが開発した「DeepSeek-R1-Zero」と「DeepSeek-R1」は、アメリカの輸出規制により最先端のGPUにアクセスできずに性能が高くない中国向けチップであるNVIDIA H800を用いる中で、優れたシステム部門を抱えるDeepSeekがアルゴリズムの最適化を行った結果、OpenAI・Google・Anthropicなどの大手AI企業のわずか10分の1という少ないGPU枚数でOpenAIのo1に匹敵する性能を発揮しています。

DeepSeekはどのようにしてOpenAIの3%のコストでo1を超えたのか? - GIGAZINE


「DeepSeek-R1-Zero」と「DeepSeek-R1」リリースのインパクトは大きく、中国製AIの台頭を懸念する市場関係者により、2025年1月27日にはNVIDIAの株価は16.9%暴落。時価総額は5888億ドル(約91兆円)下落しました。

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今回の「DeepSeek-R1-Zero」と「DeepSeek-R1」のリリースは、アメリカの科学界に衝撃を与えたソ連の世界初の人工衛星になぞらえて「AI版スプートニクショック」と形容されています。しかし、ウォン氏は「DeepSeek-R1の登場はスプートニク登場の瞬間というよりもむしろGoogleが登場した瞬間に近い」と語っています。

ウォン氏によると、ソ連はスプートニクで当時のアメリカにはできない人工衛星の打ち上げが可能であることを示したものの、スプートニクの技術的な詳細や設計図を公開することはありませんでした。しかし、DeepSeek-R1はオープンソース化されており、カリフォルニア大学バークレー校の研究室がリリースからわずか1日でDeepSeek-R1の性能の再現性を確認しています。

同様にGoogleは2004年に、分散型アルゴリズムを使って一般的なコンピューター同士をネットワーク接続し、コストパフォーマンスに非常に優れたスーパーコンピュータークラスタを構築するという目論見書「S-1」を提出し上場。当時のハイテク企業は大型のメインフレームを購入し、スーパーコンピューターを構築するのが一般的で、Googleのコストパフォーマンスに優れた構築方法は革新的でした。


その後、Googleは大規模で費用対効果の高い強力なスーパーコンピューターを管理・制御するために使用しているアルゴリズムに関する論文「MapReduce」と「Bigtable」を公開しました。この論文を基に、現代では巨大なデータセットに対する分散型コンピューティングにMapReduceが用いられているほか、BigtableはデータストレージシステムとしてGoogleマップやGoogle Earth、YouTubeなど、さまざまなアプリケーションを支えています。

これを踏まえてウォン氏は、「DeepSeekはGoogle登場の瞬間によく似ています。Googleは本質的に、自分たちが何をしたかを説明し、他の人々にもどうすればそれができるかを教えました」と述べています。一方で「Googleの場合、自分たちがやっていることを世間に公表してから、その方法を示す論文を発表するまでにかなりの時間を要しました。対照的に、DeepSeekはモデル発表と同時に論文を発表しました」と語りました。

また、「今回のDeepSeekの発表でNVIDIAやOpenAI、Meta、Microsoft、Googleなどが死んだとは考えられません。たしかにDeepSeekは強力な新興企業ですが、AIの世界ではたびたび起こっていることです。数カ月後には誰もがDeepSeekの手法を模倣するだろうし、推論に必要なコストも安くなるでしょう」とウォン氏は予測しています。

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in ソフトウェア, Posted by log1r_ut

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