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中国のAI「DeepSeek」ショックでハイテク株がパニック売りに、NVIDIAの時価総額が91兆円消し飛んで暴落記録を2倍以上更新


中国のAI企業・DeepSeekが2025年1月にリリースした、OpenAI o1相当のオープンソースモデル「DeepSeek-R1」により中国製AIの台頭が懸念され、NVIDIAの株価が一時約17%暴落して同社の時価総額が5888億ドル(約91兆円)下落しました。これは、1日の間に失われた時価総額としては過去最大であると報じられています。

DeepSeek panic triggers tech stock sell-off as Chinese AI tops App Store - Ars Technica
https://arstechnica.com/ai/2025/01/deepseek-spooks-american-tech-industry-as-it-tops-the-apple-app-store/

Nvidia drops nearly 17% as China's cheaper AI model DeepSeek sparks global tech sell-off
https://www.cnbc.com/2025/01/27/nvidia-falls-10percent-in-premarket-trading-as-chinas-deepseek-triggers-global-tech-sell-off.html

A shocking Chinese AI advancement called DeepSeek is sending US stocks plunging | CNN Business
https://edition.cnn.com/2025/01/27/tech/deepseek-stocks-ai-china/index.html

DeepSeekは2025年1月20日に、誰でも無料でダウンロード可能なオープンソースモデルでありながら、月額20ドル(約3000円)を払わないとアクセスできないOpenAIのo1に匹敵する「DeepSeek R1」をリリースしました。

OpenAI o1相当の推論モデル「DeepSeek R1」を中国AI企業が商用利用や改変が可能なMITライセンスでリリース - GIGAZINE


IT系ニュースサイトのArs Technicaによると、「R1」が推論ベンチマークでo1に肉薄したこと自体はそれほど驚くべきことではないとのこと。なぜなら、Googleの「Gemini 2.0 Flash Thinking」などo1に比肩するモデルは既に存在しており、OpenAI自身もo1を上回るパフォーマンスの「o3」を近日中にリリースする予定だからです。

AIの専門家らがR1に驚いた理由は3つあります。1つ目は、アメリカの輸出規制により最先端のGPUにアクセスできないDeepSeekが、性能が高くない中国向けチップであるNVIDIA H800を使い、わずか約600万ドル(約9億3000万円)でR1をトレーニングしたことです。この費用は、一部報道により明かされているo1のトレーニングコストの約3%しかありません。


2つ目は、OpenAIが2024年9月にo1を発表してからわずか4カ月後にR1が登場したことです。そして最も重要だとされている3つ目は、DeepSeekがR1モデルの重みをオープンなMITライセンスで無料リリースしたことです。これは、ChatGPTのようなクローズドモデルとは異なり、誰でもダウンロードして実行したり、調整したりできることを意味しています。

こうした点により、R1はAIコミュニティの間でにわかに話題となり、iPhoneのApp Storeの無料アプリカテゴリでChatGPTを追い抜いて首位に躍り出ました。

App Storeのランキング(iPhone)- Apple(JP)
https://apps.apple.com/jp/charts/iphone


アメリカの科学界に衝撃を与えたソ連の世界初の人工衛星になぞらえて「AI版スプートニクショック」とも形容されているR1登場のインパクトにより、アメリカの株式市場はパニックに陥り、R1がNVIDIAのGPUで作られたにもかかわらずNVIDIAの株価は2025年1月27日に16.9%下落し、時価総額で世界1位の企業だったNVIDIAはわずか1日で3位に転落しました。

この株価の下落によりNVIDIAの時価総額5888億ドルが失われ、Metaが2022年に記録した2400億ドル(約37兆2700億円)の金額に2倍以上の差を付けて史上最悪の損失となりました。

AIアクセラレータ市場でほぼ1人勝ちのチップメーカーとして君臨していたNVIDIAの失墜により幅広い銘柄が売られ、ハイテク株を中心としたNasdaqは3.1%下落、S&P500指数も1.5%下落しました。連れ安となった主なハイテク株には、株価が11%下落したMicron、10%下落したArm、17%下落したBroadcom、6%下落したAMDなどがあります。

衝撃は非テクノロジー企業にも波及し、AIデータセンターへの電力供給により株価が高騰していたエネルギー関連株も軒並み下落しました。例えば、AI向けの電力供給のためにスリーマイル島原子力発電所の再稼働を目指しているConstellation Energyの株価が1月27日に21%下落したほか、競合会社であるVistraやGE Vernovaもそれぞれ28%と21%の下落を記録しています。また、発電機の動力源である天然ガスの先物価格は5.9%下落、石油も2%超下落しました。

株式市場の動揺について、投資会社・Third Seven Capitalの市場ストラテジストであるマイケル・ブロック氏は「DeepSeekの脅威が本物かどうかは時間がたてばわかるでしょう。どの技術が機能するか、そして欧米の大手企業がどのように対応し進化するかをめぐる競争が始まっています」と指摘した上で、「市場はトランプ政権2.0の始まりに油断し過ぎていて、下落する口実を探していたのかもしれません。そんな時に、絶好の口実が見つかりました」と分析しました。


一方、DeepSeekが本当にAI分野における欧米の優位を揺るがすものなのかについては冷静な声もあり、投資会社・AllianceBernsteinのアナリストはCNBCに対し、「DeepSeekのモデルは素晴らしいですが、奇跡と言うほどではありません。『私たちが知るAIインフラ複合体の終末を告げる鐘』に対するパニックは誇張されています」とコメントしました。

また、Ars Technicaは「アメリカ最高の商用モデルに匹敵する安価なオープンウェイトのAIモデルの登場は、クローズドソースのAI企業にとっての純粋な脅威ではありますが、AIの急速な進歩を見てきた人たちにとっては驚くほどのものではありません。コンピューティングの歴史には、情報技術がより安くコンパクトになり、コモディティ化してから、より大きな製品の一部として吸収されてきた例が山ほどあります」と述べました。

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in ソフトウェア, Posted by log1l_ks

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