アルツハイマー病による死亡率が最も低い「2つの意外な職業」とは?
アルツハイマー病は記憶力や認知機能が徐々に低下していく神経変性疾患であり、進行すると身体機能にも影響が及び、最終的に死に至ります。そんなアルツハイマー病の死亡率と職業の関連性を調べた研究では、「2つの意外な職業」に就いていた人々は、アルツハイマー病による死亡率が低いことが明らかになりました。
Alzheimer’s disease mortality among taxi and ambulance drivers: population based cross sectional study | The BMJ
https://www.bmj.com/content/387/bmj-2024-082194
Mass General Brigham Study Finds Lower Rates of Death from Alzheimer’s Disease Among Taxi and Ambulance Drivers | Mass General Brigham
https://www.massgeneralbrigham.org/en/about/newsroom/articles/lower-alzheimers-death-rates-among-taxi-and-ambulance-drivers
These 2 Jobs Have The Lowest Alzheimer's Death Rates. But What Does It Mean? : ScienceAlert
https://www.sciencealert.com/these-2-jobs-have-the-fewest-deaths-from-alzheimers-but-what-does-it-mean
ハーバード大学医学部などの研究チームによると、アルツハイマー病に起因する死亡者数は過去30年間で倍増しており、アルツハイマー病のリスクや治療法の研究がますます重要になっています。
過去の研究では、イギリスのロンドンで働くタクシー運転手の脳では、記憶や空間ナビゲーションをつかさどる海馬の体積が変化していることが示されています。海馬はアルツハイマー病の発症にも関与していることから、研究チームは「タクシーの運転などの頻繁な空間的処理を必要とする職業に就いていることが、アルツハイマー病による死亡率に関連しているのではないか」と仮説を立てました。
この仮説を検証するため、研究チームは2020年1月1日~2022年12月31日にアメリカで死亡した合計897万2221人のデータを収集し、これらの人々が就いていた職業や死因について分析しました。最終的なデータセットには443の職業グループが含まれており、その中には予測不可能かつリアルタイムの空間ナビゲーションを必要とする職業として、「タクシー運転手」と「救急車の運転手」が含まれていたとのこと。なお、データセットに含まれているアルツハイマー病による死者は3.88%にあたる34万8328人でした。
死亡時の年齢や性別、人種、学歴などを調整した結果、被験者全体に占めるアルツハイマー病による死亡率は1.69%でした。そして、443の職業グループのうち最もアルツハイマー病による死亡率が低かったのは「救急車の運転手」で、死亡率はなんと0.91%でした。次いでアルツハイマー病による死亡率が低かったのは「タクシー運転手」で、死亡率は1.03%となりました。
以下のグラフは調整済みのアルツハイマー病による死亡率を職業別に示したもので、「Ambulance drivers(救急車の運転手)」「Taxi drivers(タクシー運転手)」に加え、同じく乗り物を運転する職業である「Bus drivers(バス運転手)」「Ship captains(船長)」「Aircraft pilots(飛行機パイロット)」の死亡率が示されています。その他の乗り物の運転手と比較して、救急車とタクシーの運転手は突出してアルツハイマー病による死亡率が低いことがわかります。
その他の乗り物の運転手と比較すると、救急車やタクシーはあらかじめ決められたルートが存在しないため、リアルタイムの空間処理やナビゲーション能力が求められる職業です。この点が、救急車やタクシーの運転手のアルツハイマー病による死亡率が低い理由の可能性があるとのこと。
なお、今回の研究はあくまで観察に基づいたものであるため、「救急車やタクシーの運転手になるとアルツハイマー病による死亡リスクを下げられる」という因果関係ではなく、相関関係を導いたものにすぎない点に注意が必要です。研究チームは、もともとアルツハイマー病のリスクが高い人は、救急車やタクシーの運転手になったり、仕事を続けたりする可能性が低い可能性もあると指摘しています。また、これらの職業の被験者は死亡時の年齢も比較的若い傾向があったため、長生きした場合でもアルツハイマー病のリスクが低いままなのかどうかは不明です。
論文の共著者であるアヌパム・イェーナ氏は、「私たちは今回の研究結果を決定的なものとしてではなく、新たな仮説を生み出すものとして捉えています。しかし今回の研究は、職業がアルツハイマー病による死亡リスクにどのような影響を及ぼすのか、そして認知活動がアルツハイマー病を予防する可能性があるかどうかを検討する重要性を示唆するものです」と述べました。
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in 乗り物, サイエンス, Posted by log1h_ik
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