アマゾン復活プロジェクトで4年かけて再生した森林の悲しすぎる結末とは?
環境研究グループの「リオテラ」は、気候変動対策と持続可能な資源を提供する目的で、南米のホンジュラスにあるリオ・プレト・ジャクンダ州立自然保護区南西部でアマゾンの植林プロジェクトを2019年から実行しました。約100万ドル(約1億5000万円)の費用がかかり、100人以上が直接雇用されて36万本の樹木を植え直すことで森林の再生を試みましたが、悲しい結末を迎えていました。
Arson turns Amazon reforestation project to ashes
https://phys.org/news/2023-09-arson-amazon-reforestation-ashes.html
環境研究グループの「リオテラ」が2019年に開始した森林再生プロジェクトは、世界最大の熱帯雨林の一角を復活させることで、気候変動の対策を進めつつ、自然保護関連の雇用を創出する目的がありました。また、植える植物をアサイーヤシなどの輸出可能なものにすることで、地元住民に持続可能な収入源を提供することも目的としていました。リオテラのプロジェクトコーディネーター、アレクシス・バストス氏は、「このアイデアは野心的なものでした」と語っています。
リオテラのプロジェクトは9万5000ヘクタール(約950平方km)あるリオ・プレト・ジャクンダ州立自然保護区の南西側に位置しており、約270ヘクタール(約2.69平方km)を対象として森林の改修に取り組んでいました。
しかし、このプロジェクトは、一部の人々には受け入れられませんでした。というのも、プロジェクトを実施した地域では牧畜産業が盛んで、牧草地のために熱帯雨林が違法に破壊されることが頻繁に起きているためです。そのほか、遠隔地の自然保護区は警察の取り締まりが難しいことから、違法伐採や金の採掘など、組織犯罪がアマゾンでは起きやすくなっています。バストス氏によると、実際にリオテラのスタッフはプロジェクトをめぐって殺害予告を繰り返し受けていたとのこと。中には、銃を突きつけられて「これ以上この地域を回復しようとし続けるなら、次は単なるメッセージではなくなるだろう」と脅されたスタッフもいたそうです。
そして、茶色のあせた土地だったアマゾンに緑が戻りつつあった2023年9月3日に、若木がすべて火災によって燃えてしまいました。自然保護地域や国立公園を管理する機関であるICMBioの鑑識報告書では、衛星画像では火が風と逆方向に燃え移ったことが示されており、「この火災は、おそらくその地域の生態系回復の過程を妨害することを動機とした放火である」と結論付けられました。
以下は、科学系メディアのPhys.orgが示した事件後の植林エリアの様子。バストス氏は「あの森林を復元するのにどれだけの労力がかかったか、人々は知りません。本当に重要な、大規模なプロジェクトでした」と悔しさを語っています。
この事件の主任検察官であるパブロ・エルナンデス・ビスカルディ氏は、「この地域では、雇われガンマンやゲリラ戦術を使った土地強奪を専門とするマフィアによる環境犯罪が急増しています。手口から考えると、リオ・プレト・ジャクンダ保護区で起こっているのはおそらくこれだと思われます」と指摘しました。
バストス氏はプロジェクトの難しさに直面しつつも、「土地強奪者たちに、これが普通だと思い込ませてはならないし、自分たちの方が国家よりも力があるなどと考えさせてはなりません。我々は社会としてこれを止める必要があります」と今後もプロジェクトをやり直して成功を目指す意思を語りました。
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