筋肉のためにジム通いを定期的に1週間ほど休む「ディロード」を設けるべき理由とは?
近年、健康に暮らすには筋力トレーニングが重要であることが広く知られるようになり、「健康のためにジムへ通い詰めている」という人もいるはず。ところが、多くのフィットネスインフルエンサーは常に高負荷のトレーニングを続けるのではなく、定期的にトレーニングの負荷を下げる「ディロード(ディロードワーク)」を取り入れることを推奨しています。ディロードにはどのような効果があるのか、どのように取り入れればいいのかといった疑問について、イギリスのウェストミンスター大学で生命科学の講師を務めるダニエル・ブレイソン博士が解説しました。
Why it’s important to take a week off from the gym every now and again – the science behind ‘deload weeks’
https://theconversation.com/why-its-important-to-take-a-week-off-from-the-gym-every-now-and-again-the-science-behind-deload-weeks-242259
多くのフィットネスインフルエンサーは、4週間~8週間ごとに1週間程度ジムでの運動やトレーニングから離れたり、運動の強度を大幅に下げたりする「ディロード」を推奨しています。一見すると、せっかく継続してきたジム通いを中断するのはもったいないように思われるかもしれません。
ブレイソン氏はディロードが必要な理由について、「ディロードの明確な目的は、激しいトレーニングによって引き起こされる可能性がある疲労や損傷から、体が回復する時間を与えることにあります」と述べています。
高強度のトレーニングや長期間にわたる運動は、筋肉組織に損傷を蓄積させます。この筋肉の損傷は肉体を強化する重要なプロセスの一部ですが、この効果が現れるのは肉体が十分に回復する時間を与えられた時に限ります。
運動や激しいトレーニングの後、筋肉を構成する繊維や結合組織に小さな裂け目ができ、炎症反応が起こります。この傷ついた筋繊維が修復される時に筋肉が強化されますが、筋繊維の修復には筋肉への負荷が小さい状態を設ける必要があります。
しかし、十分な休息を取らずにトレーニングを続けると筋肉の修復が追いつかず、損傷した状態が半永久的に継続してしまいます。すると、炎症反応がなかなか消えず、筋肉が酸素を効率的に使用できなくなったり、パフォーマンスが低下したりするとのこと。こうしたトレーニングのやり過ぎによる悪影響を防ぐのが、筋トレを休むディロードだというわけです。
ジム通いを熱心に続けている人ほど、「ジムを休むと筋肉が減ってしまい、これまでの努力が無駄になってしまうのではないか」と恐れるかもしれません。しかし、筋肉の遺伝子には「マッスルメモリー」というものが存在し、一度得た筋肉は休養して筋肉が減った後も素早く回復することがわかっています。2018年の研究では、最大7週間にわたり休養した場合でも、再びトレーニングをすれば素早く筋肉を取り戻せることが報告されました。
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スポーツやトレーニングによって生じた疲労が回復しないまま休息を取らないと、オーバートレーニング症候群に陥ってしまう危険性もあります。オーバートレーニング症候群は、競技の成績低下や疲労感の増加といった症状から始まり、徐々に全身の倦怠(けんたい)感や睡眠障害、食欲の低下、気分の落ち込みといった深刻な症状に進行します。
オーバートレーニング症候群から回復するには数週間から数カ月、時には数年かかることもあるそうで、何よりもオーバートレーニング症候群になるのを避けることが重要です。オーバートレーニング症候群を避けるには休息が大事であるため、ディロードは運動やスポーツのパフォーマンスを保つためにも重要だといえます。
ディロードを取り入れる際に気をつけるべきなのが、毎週の「休息日」とディロードはそれぞれ別に設けるという点です。つまり、休息日を週に1~2日設けている人であっても、定期的にディロードを取り入れた方がいいとのこと。
ブレイソン氏は、「どんなトレーニングプランであっても、必要な時に一歩下がることができないほど激しいものであってはなりません。ディロードはあなたのパフォーマンスだけでなく、健康にも役立つのです」と主張しました。
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