ネットサービス

WordPressによるWP Engineへのブロックを差し止める命令を裁判所が下す

by Saad Irfan

ウェブホスティングサービスのWP Engineに対してWordPressの開発元であるAutomatticWordPress.orgへのアクセスをブロックした問題について、カリフォルニア北部地区連邦地方裁判所が「WP Engineからのブロック差し止めの申し立てを認める判決」を2024年12月10日に下しました。裁判所は、WP Engineが本案について勝訴する見込みがあり、差し止めによる救済がない場合に回復不能な損害を被る可能性があると判断しています。

Order on Motion for Preliminary Injunction – #64 in WPEngine, Inc. v. Automattic Inc. (N.D. Cal., 3:24-cv-06917) – CourtListener.com
https://www.courtlistener.com/docket/69221176/64/wpengine-inc-v-automattic-inc/

WordPress must stop blocking WP Engine, judge rules - The Verge
https://www.theverge.com/2024/12/10/24318350/automattic-restore-wp-engine-access-wordpress

2024年9月、AutomatticのマレンウェッグCEOはWordPressの開発者イベントで、WP Engineが「WordPressの癌(がん)だ」と批判しました。AutomatticとマレンウェッグCEO側は、「WP EngineはWordPressを利用しておきながら、WordPress.orgへの貢献がまったくない」と主張しており、収益の8%をWordPress.orgに支払うか、開発の人的資源を提供するように要求していました。

WP EngineはマレンウェッグCEOの発言に対して訂正と謝罪を要求。しかし、AutomatticはWP Engineに対し、WordPressの開発プロジェクトであるWordPress.orgへのアクセスをブロックする措置を講じました。

WordPressがWP Engineからのアクセスをブロックすると発表、「サイトが壊れたユーザーはWP Engineに直してもらって」と述べる - GIGAZINE


さらに2024年10月には、マレンウェッグCEOはWP EngineのプラグインであるAdvanced Custom Fields(ACF)を勝手にフォークしています。



こうしたAutomattic側の措置に対し、WP EngineはWordPress.orgへのアクセス権回復を求め、ブロックの仮差止め命令を裁判所に申し立てました。

WP EngineがWordPress.orgへのアクセス権回復を求めて裁判所に申立書を提出 - GIGAZINE


カリフォルニア北部地区連邦地方裁判所のアラセリ・マルティネス=オルギン判事は、「AutomatticとマレンウェッグCEOが明確にWPEngineの顧客関係を妨害する意図を持って行動したことを示す証拠が認められる」と判断。また、「2024年9月26日から30日の間にWP Engineへの契約解除のリクエストが14%増加し、同年10月1日から14日の間にはさらに17%増加した」という点が、WP Engineにとって具体的な損害に当たると認めました。

マルティネス=オルギン判事は「WP Engineとその顧客が被る損害は、Automatticが被る可能性のある不利益を上回る」と判断し、具体的な命令として以下を発出しました。

1:WP EngineのWordPress.orgへのアクセス遮断の禁止
2:WP Engineのプラグインやエクステンションの管理への干渉禁止
3:WP Engineの顧客のWordPressインストレーションへの干渉禁止
4:72時間以内にWP Engineの顧客リストの削除とWordPress.orgへのアクセス回復
5:ACFプラグインの制御権の返還

by Luis Osorio

この仮差し止め命令は本訴訟の最終判決まで有効とされ、係争中は2024年9月20日以前の状態が維持されることとなります。マルティネス=オルギン判事は、WordPress.orgが長年無料で提供してきたサービスを突然制限することの不当性を指摘し、「公開されたリソースへのアクセスを競合他社に対して選択的に制限することは、不公正な競争になり得る」と述べました。

IT系ニュースサイトのThe VergeはAutomatticとWP Engineにコメントを求めましたが、返答はなかったとのことです。

この記事のタイトルとURLをコピーする

・関連記事
AutomatticのCEO兼WordPressの開発者のマット・マレンウェッグ氏がWP Engineを「WordPressの癌(がん)である」と痛烈に批判 - GIGAZINE

WordPress開発元のAutomatticがWordPress商標の使用停止命令書をWP Engineに送付 - GIGAZINE

WordPress.orgのログイン時・新規ユーザー登録時に「WP Engineといかなる関係もない」ことを確認するチェックボックスが登場 - GIGAZINE

WordPress商標問題渦中にあるAutomatticのマレンウェッグCEOが従業員に「給与9カ月分を受け取り退職する機会」を再提示 - GIGAZINE

「WordPress.orgは私個人が所有している」とAutomatticのマット・マレンウェッグCEO、非営利のオープンソースプロジェクトと営利サービスの境界線はどこにあるのか - GIGAZINE

WordPress開発に14年以上参加してきたエンジニアが離脱を表明、「Automatticの周囲にカルトが形成されている」 - GIGAZINE

in ソフトウェア,   ネットサービス, Posted by log1i_yk

You can read the machine translated English article here.