IntelがASMLの元CEOとマイクロチップ・テクノロジーの暫定CEOを取締役会に追加、前CEOは一体何を間違えたのか?
2024年12月5日、IntelはASML社の元会長・元CEOであるエリック・モーリス氏と、マイクロチップ・テクノロジー社の会長兼暫定CEOであるスティーブ・サンギ氏を取締役に任命したと発表しました。
Intel Appoints Semiconductor Leaders Eric Meurice and Steve Sanghi to Board of Directors :: Intel Corporation (INTC)
https://www.intc.com/news-events/press-releases/detail/1721/intel-appoints-semiconductor-leaders-eric-meurice-and-steve
Intelでは前CEOのパット・ゲルシンガー氏が2024年12月2日に退任したばかり。現在はデビッド・ジンズナー最高財務責任者(CFO)とクライアント・コンピューティング事業部長のミシェル・ジョンストン・ホルトハウス氏が共同で暫定CEOを務めていますが、次期CEOの選定が進んでいます。
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エリック・モーリス氏は2004年から2013年までASMLのCEOを務め、同期間中にASMLの時価総額を5倍にしたとのこと。取締役への任命にあたり「他の取締役とともにインテルの市場競争力をさらに強化し、持続可能な財務実績を実現していきたい」とコメントしています。
スティーブ・サンギ氏は1991年から2021年までマイクロチップ・テクノロジー社のCEOであり、現在は会長兼暫定CEOを務めています。30年間の在任期間中に、同社の時価総額を約1000万ドル(約150億円)から約440億ドル(約6兆6000億円)にまで引き上げており、121四半期連続で黒字を達成したとのこと。
Intelは近年勢いが衰えており、2021年から2024年12月2日までIntelのCEOを務めていたゲルシンガー氏の在任期間中に時価総額は2510億ドル(約37兆7000億円)から1030億ドル(約15兆5000億円)まで60%以上下落しました。
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Intelは現代の電子機器に欠かせない半導体を設計・製造する企業です。かつては世界最高の性能を誇る半導体を製造できていたものの、時の流れとともにTSMCやサムスン電子に技術競争で敗北し、最先端の地位を譲り渡していました。ゲルシンガー氏はこうした半導体企業に「追いつく」という明確な使命を帯びて2021年、IntelのCEOに就任しました。
半導体業界ではNVIDIAのように設計を行う企業と、TSMCのように製造を行う企業のように、それぞれの企業が設計か製造に特化してきました。ゲルシンガー氏は半導体業界のトレンドに逆らい、「チップ製造部門がチップメーカーとしてのIntelの地位を回復させるための鍵」としてチップの製造工場の建設へ大規模な投資を行いました。
「2030年までにインテルをTSMCに次ぐ世界第2位の受託チップメーカーにする」という目標を設定し、自社製品の製造だけでなく、外部企業の半導体の製造を受注していましたが、品質の問題や、外部企業からの受注に慣れていないという社内文化の問題などがあり、2024年第3四半期には166億ドル(約2兆5000億円)の赤字を計上するなど苦しい状況が続いています。
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どんな考えを持った人物が後任のCEOに任命されるのかは不明ですが、「Intelを復活させるには製造部門であるファウンドリ事業を分割するしかない」というアナリストの意見もあり、設計と製造の一体化に注力していたゲルシンガー氏の退任によってIntelが分割される可能性が高まったと言えそうです。
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