心臓発作を起こした後は非常に眠たくなることが判明、眠らないと心血管疾患の発症リスクが高まる
心臓発作を起こすと免疫細胞が脳に到達し、睡眠を促進する作用をもたらすことがわかりました。マウスを使った実験では、心臓発作を起こした後も眠りを妨げられたマウスが炎症になる可能性が高くなったことがわかっています。
Myocardial infarction augments sleep to limit cardiac inflammation and damage | Nature
https://www.nature.com/articles/s41586-024-08100-w
The brain summons deep sleep for healing from life-threatening injury
https://www.nature.com/articles/d41586-024-03491-2
睡眠が心臓の健康に及ぼす影響については古くから知られており、週末に長く寝ると心臓病のリスクが最大20%低下するとの研究結果や、就寝時刻によって心血管疾患の発症率に大きな差が生じるなどの研究結果がこれまでに公表されています。しかし、逆に心臓の健康が睡眠にどのような影響を及ぼすのかについてはこれまであまり研究されていませんでした。
そこで、アメリカのアイカーン医科大学の研究者らは、マウスに心臓発作を起こさせて脳波を測定し、心血管疾患が体にどのような影響をもたらすのかを調査しました。
実験の結果、心臓発作が引き起こされたマウスは、心臓発作を起こしていないマウスに比べ、体を治す力のある深い眠りの段階「徐波睡眠」に多くの時間を費やしていることが判明しました。
より詳しく調べたところ、心臓発作を起こしたマウスの体内では「単球」と呼ばれる免疫細胞が脳内にあふれ出ていることが確認されたとのこと。さらに、単球は腫瘍壊死因子(TNF)と呼ばれるタンパク質を大量に生産し、炎症を抑えようとしていたことがわかりました。このTNFには、睡眠を促進する作用があります。
単球が睡眠に関係しているかどうかを確認するため、研究者らがマウスの脳に単球が蓄積しないようにしたところ、こうしたマウスは心臓発作を起こしても徐波睡眠が増加しませんでした。このことから、研究者らは「TNFが睡眠を誘発するメッセンジャーとしての役割を果たす」と結論づけました。
さらに、研究者らが心臓発作を起こしたマウスの徐波睡眠を繰り返し妨害した結果、これらのマウスは脳と心臓の両方で炎症が起こり、心臓発作後に邪魔されずに眠れたマウスよりも予後がずっと悪いことがわかったとのことです。
マウスを使った実験の後、研究者らは急性冠症候群を経験した人を調査しました。すると、急性冠症候群を発症した数週間後に睡眠不足を訴えた人は、その後2年間に心臓発作やその他の重篤な心血管系疾患を発症するリスクが、睡眠が良好な人に比べて高かったといいます。
この結果から、研究者らは「心臓発作後に十分な睡眠と休息をとることは、長期的な心臓の治癒にとって重要です」と指摘。心臓発作を起こした患者を診た臨床医は、患者に対して質の良い睡眠がいかに重要かを伝える必要があると話しました。
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