MITのエンジニアが太陽光発電で1日最大5000リットルのきれいな水を生成する淡水化システムを開発
太陽光発電で得られた電気エネルギーを使い、電力インフラがない地域にも淡水化システムを供給する方法をマサチューセッツ工科大学(MIT)の研究者らが考案しました。電力効率が良くバッテリーを必要としないことが特徴で、海から遠く離れた内陸部への導入が見込まれています。
Direct-drive photovoltaic electrodialysis via flow-commanded current control | Nature Water
https://www.nature.com/articles/s44221-024-00314-6
Solar-powered desalination system requires no extra batteries | MIT News | Massachusetts Institute of Technology
https://news.mit.edu/2024/solar-powered-desalination-system-requires-no-extra-batteries-1008
MIT engineers create solar-powered desalination system producing 5,000 liters of water daily | TechSpot
https://www.techspot.com/news/105237-mit-engineers-create-desalination-system-produces-5000-liters.html
MITのエイモス・ウィンター教授率いるチームが開発した海水淡水化システムは、電界を利用して水から塩イオンを除去する方法である「電気透析」をベースにしています。このような脱塩システムは過去にいろいろな機材で採用されていますが、今回開発されたシステムの特徴は太陽光発電に特化していることにあります。
ウィンター教授のシステムには「フロー・コマンド・カレント・コントロール」と呼ばれる制御モデルが組み込まれていて、1秒間に何度も脱塩速度を調整することが可能です。これによりシステムは太陽の動きに合わせて作動することができ、電力の過剰を検出すると水を汲み上げる速度を上げ、逆に太陽光が遮られて電力が不足すると効率を下げることができます。
素早い応答性を実現したことで、ソーラーパネルから得られた電気エネルギーのうち平均94%以上を無駄なく使うことが可能になっています。さらに、バッテリーや太陽光発電以外の補助電源を必要とせずに作動することも特徴の1つで、この特徴だけで「蓄電に依存する従来の海水淡水化システムとは一線を画している」とのことです。
ウィンター教授は「従来の淡水化技術は安定した電力を必要とし、太陽光発電のような変動電力を補うためにバッテリーが必須でした。我々のシステムは、太陽に同期して消費電力を絶えず変化させることで、太陽光発電を直接かつ効率的に利用して水を作ることができます」と語りました。
また、このシステムは海水と淡水の中間の塩分を持つ「汽水」に特化しているのも特徴です。研究に携わったMITの学生であるジョナサン・ベセット氏いわく、地下水は気候変動によって以前より塩分濃度が高くなっているとのこと。電力へのアクセスが十分でなく、さらに地下水に依存している開発途上国において、再生可能エネルギーを使って水を淡水化するシステムは、地域にきれいな水をもたらすシンプルな戦略になり得ることが期待されています。
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