退職時に「送別カードをもらえなかったのはセクハラ」と会社を訴えた女性、裁判で悲しい事実を知らされて敗訴
厳正な審理を行う裁判では、さまざまな証拠や背後関係が法廷で明かされますが、事件の真相の中には当人が知らない方がよかった事実も含まれているかもしれません。ある女性が、退職の際に送別カードをもらえなかったことに立腹して会社を訴えたところ、実は職場はカードを用意していたものの、同僚がほとんど誰も署名しなかったため渡さなかったことが判明。裁判所は、セクハラなど合計40件もの不平不満で会社を告発した女性の訴えをすべて却下しました。
Worker who did not get leaving card loses harassment case
https://www.thetimes.com/uk/law/article/worker-who-did-not-get-leaving-card-loses-harassment-case-2jwchbp3c
Woman who did not get leaving card loses UK employment claim | Employment tribunals | The Guardian
https://www.theguardian.com/uk-news/2024/oct/12/woman-leaving-card-employment-claim-tribunal
2019年にイギリスの大手航空会社・British Airwaysの親会社であるInternational Airlines Group(IAG)に入社したカレン・コナガン氏は、2021年に同社を退職しましたが、その際に送別カードをもらえませんでした。
元同僚たちからお別れの言葉が送られなかったコナガン氏は、「会社が自分を無視したのは、職場や公共サービスにおける性別などでの差別を禁じた『平等法』に違反する」として、IAGを訴えました。
しかし、法廷に呼び出されて証言台に立ったコナガン氏の元同僚は、裁判で「管理職は確かにカードを購入しましたが、署名数が少なかったのでコナガン氏には提示しませんでした」と証言しました。
コナガン氏の職場に何人の同僚がいたのかは不明ですが、IAGは2023年時点で合計7万1794人の従業員を擁する大企業です。しかし、職場を去るコナガン氏の送別カードにサインした同僚は3人しかいなかったとのこと。
また、裁判では同じくIAG傘下の別の航空会社に勤めていた男性2人がリストラで退職する際にも送別カードが渡されなかったことが判明し、差別を主張するコナガン氏は苦しい立場に置かれました。
裁判を担当したケビン・パーマー判事は、「カードを渡さないことよりも、渡したほうが侮辱的だったと裁判官は考えます」と述べました。
パーマー判事によると、コナガン氏の退職後に送別カードの署名が増えましたが、元同僚は「コナガン氏が自分たちに対して苦情を申し立てていたので、後日カードを送るのは不適切だと思いました」と述べたとのことです。
そのほか、裁判ではコナガン氏が「大変な仕事は私が全部やったので次はあなたたちがやる番」と言ったのに対し、同僚が「カレン、冗談を言っているんですか」と返したことなど、40件の苦情が申し立てられました。
しかし、これらの主張についてパーマー判事は「コナガン氏が陰謀論的な解釈をして、普通の職場でのやりとりを嫌がらせだと勘違いした」として、すべての訴えを却下しました。
また、裁判ではすべての従業員がロンドンのヒースロー空港のオフィスから1~2時間以内の場所に住むことが求められていたにもかかわらず、コナガン氏がノース・ヨークシャー州のリッチモンドに引っ越したことも明かされました。Googleマップで調べると、ノース・ヨークシャー州のリッチモンドからヒースロー空港までは自動車で4時間半かかるとされています。
法廷で、コナガン氏は上司がイギリス北部に引っ越すことに同意したと主張しましたが、コナガン氏の上司は「同意した事実はありません」と述べました。
こうした証言を総合した結果、判事はコナガン氏が申し立てている苦情の多くは実際には起きなかったか、起きたとしても通常の職場関係における無害なやりとりだったとの裁定を下すとともに、コナガン氏の主張の中に性別との関係を示唆する証拠はないと結論付けました。
この件では、カードが送られなかったことが問題となりましたが、カードが送られたことが問題となったケースもあります。
2024年6月、病休中の税務署員が「職場からの連絡は最低限にして、誕生日も祝わないでほしい」と告げていたにもかかわらず職場から誕生日カードを送られたとして税務署を訴えた訴訟で、裁判所は「本人が望んでいないにもかかわらず誕生日カードを送るのはハラスメントに該当する場合がある」との判決を下しました。
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