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Intelは2005年に「わずか200億ドル」でNVIDIAを買収することを検討していた

by Thomas Hawk

NVIDIAは主にGPUに特化した大手半導体メーカーであり、AI市場の拡大に伴って急成長を遂げています。記事作成時点でNVIDIAの時価総額は3兆4400億ドル(約520兆円)となっていますが、Intelは2005年にNVIDIAをわずか200億ドル(当時のレートで約2兆2000億円)で買収することを検討していたと、日刊紙のニューヨーク・タイムズが報じました。

How Intel Got Left Behind in the A.I. Chip Boom - The New York Times
https://www.nytimes.com/2024/10/24/technology/intel-ai-chips-mistakes.html


Intel's former CEO reportedly wanted to buy Nvidia for $20 billion in 2005 — Nvidia is worth over $3 trillion today | Tom's Hardware
https://www.tomshardware.com/tech-industry/intels-former-ceo-reportedly-wanted-to-buy-nvidia-for-usd20-billion-in-2005-nvidia-is-worth-over-usd3-trillion-today

2005年の時点ではまだAIブームの兆しは見えておらず、NVIDIAはあくまでコンピューターグラフィックスに特化したGPUの製造メーカーとして知られていました。しかし、NVIDIA製GPUは主にゲーマー向けのマシンで使われていたものの、当時から石油やガスの発見といった高度な並列処理を必要とする一部の計算分野にGPUを適応する動きもみられていたとのこと。


そこで当時IntelのCEOを務めていたポール・オッテリーニ氏は、「NVIDIAを200億ドルで買収する」という提案を取締役会に提出しました。オッテリーニ氏を含む一部のIntel幹部は、GPUの基礎となる設計がデータセンターで重要な仕事を担い、最終的にAIシステムを支配するアプローチになると考えていたそうです。

しかし、取締役会の議論に精通している2人の人物によると、取締役会はこの買収計画に抵抗したとのこと。当時のIntelには企業の買収実績が乏しかったことに加え、200億ドルという金額はIntelにとって最も高額な買収になることも懸念点でした。結局、取締役会の抵抗にあったオッテリーニ氏は買収計画を引き下げましたが、会議に参加したある人物はニューヨーク・タイムズに対し、それが「運命の瞬間」だったと語っています。

結局、記事作成時点のNVIDIAはAI向け半導体の分野で圧倒的な王者として君臨しており、時価総額は3兆4000億ドルを超えています。一方、Intelの時価総額は1000億ドル(約15兆1900億円)を下回っており、一部のハイテク企業や投資家は「Intelが潜在的な買収対象になる可能性」すら考えているそうです。


ニューヨーク・タイムズは、「20人以上の元Intelのマネージャーや取締役、業界アナリストへのインタビューによると、Intelは機会を逃し、誤った決断を下し、実行力が不十分だったことが明らかになりました」と述べています。

IntelはAIチップのリーダーを目指すプロジェクトに何度も取り組んできましたが、リーダーシップが忍耐を失ったかテクノロジーが不足していたため、多くのプロジェクトは途中でストップしたとのこと。投資は収益の柱であるx86アーキテクチャのチップ製造が優先され、新しいチップへの投資は後回しにされてきました。Intelのリーダーたちも、x86チップに投資が集中して他の最先端技術への投資が後回しになる問題を認識していましたが、利益率の高さから方針転換はうまくいきませんでした。

NVIDIAの買収計画が頓挫した後、Intelはグラフィックスで競合他社に先んじるために、コードネーム「Larrabee」というプロジェクトを立ち上げました。LarrabeeはグラフィックスとIntelのPC向けチップを組み合わせたハイブリッド製品であり、プロジェクトは当時Intelの上級管理職で現CEOのパット・ゲルシンガー氏が主導していました。Larrabeeには約4年の歳月と数億ドル(数百億円)のコストが費やされましたが、計画よりも遅れた上にグラフィックスパフォーマンスも期待に届かず、ゲルシンガー氏が2009年に退社すると数カ月後にプロジェクトごとなくなりました。

後にCEOとしてIntelに復帰したゲルシンガー氏は、Intelを離れた後もLarrabeeの方向性が正しかったと考えていたとのこと。ニューヨーク・タイムズとのインタビューで、ゲルシンガー氏は「私はLarrabeeを信じていました。(Intelがプロジェクトを続けていれば)今の世界はまったく違ったものになっていたと思いますが、歴史を再現することはできません」と述べました。

また、Intelは2016年に新興のAI企業だったNervana Systemsを買収し、同社のCEOを務めていたナヴィーン・ラオ氏の下でAI製品の開発を進めました。ラオ氏の下で開発されたチップのうち1つはFacebookによって使用される段階までいきましたが、2019年にラオ氏の反対を押し切ってIntelがHabana Labsという別のAI企業を買収したことを受けてラオ氏はIntelを退社。ラオ氏はニューヨーク・タイムズに対し、「Intelはすぐに使える製品があったのにそれを台無しにして、Habana Labsを20億ドル(当時のレートで約2200億円)で買収して2年遅れたのです」と話しました。


ニューヨーク・タイムズは、近年のIntelはNPUを備えたノートPC向けプロセッサ「Core Ultra 200Vシリーズ」を発表するなど一定の成果を出していますが、それらの新しいチップはIntelの自社工場ではなくTSMCの工場で製造されていると指摘。これはIntelの製造技術が原因であり、製造を委託することでIntelの利益が減るだろうと述べています。

また、ゲルシンガー氏は2024年8月に開かれたドイツ銀行の会議で、「AI分野の競争では、NVIDIAはずっと先を行っています。Intelが抱えている他の課題を考えれば、すぐに競争に勝てるということはないでしょう」という見通しを示したとのことです。

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in メモ, Posted by log1h_ik

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