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Intelの7nmプロセス開発に1年ほどの遅延、CEOはチップ製造の外部委託を検討していると示唆

by Morton Lin

大手半導体メーカーのIntelが2020年第2四半期(4月~6月)の決算発表で、次世代の7nmプロセス開発に1年ほどの遅延が生じていることを認めました。これに伴って、Intelのボブ・スワンCEOが「チップ製造の外部委託を検討している」と述べたことから、Intelの株価は2020年7月24日(金)に16%もの下落を記録しています。

Intel Q2 20_EarningsRelease - Q2-2020_Earnings-Release.pdf
(PDFファイル)https://s21.q4cdn.com/600692695/files/doc_financials/2020/q2/Q2-2020_Earnings-Release.pdf

Intel’s next-gen 7nm chips are delayed until at least 2022 - The Verge
https://www.theverge.com/circuitbreaker/2020/7/23/21336356/intel-7nm-chips-next-gen-delay-q2-2020-earnings-amd-10nm-tiger-lake-desktop-laptop-cpu


Intelの2020年第2四半期決算は2020年第1四半期の決算に引き続き好調で、在宅勤務の増加によるノートPC需要の拡大やデータセンター部門の成長などにより、収益は前年比20%増の197億ドル(約2兆800億円)を記録しました。また、Intelは10nmプロセスの「Tiger Lake(タイガーレイク)」を2020年後半にリリースすることも発表しています。

その一方で、Intelは次世代チップである7nmプロセスの開発に遅延が出ていることも認めており、7nmプロセスチップを搭載したCPU製品のリリースは、以前の予想から6カ月遅れて2022年にズレ込むとのこと。実際のところ7nmプロセスの開発遅延は6カ月どころではなく、Intelの社内ロードマップと比較すると1年もの遅延があるそうですが、何かしらの理由で市場投入の遅延は6カ月程度に収まるとIntelは主張しています。

7nmプロセスの開発遅延に関連して、スワンCEOは「私たちはもはや自分たちで全てのチップを製造することはできないかもしれません」と述べ、チップ製造の外部委託を検討していることを認めました。スワンCEOの発言を受けてIntelの株価は7月24日(金)に16%も下落し、COVID-19のパンデミックに伴う2020年3月上旬以来の下げ幅となりました。


BloombergはスワンCEOの発言について、Intelとアメリカが半導体業界を支配する体制の終わりを告げるものだと指摘。この動きはシリコンバレーを超えて世界中に影響し、貿易や地政学に影響を与える可能性があると述べています。

Intel ‘Stunning Failure’ Heralds End of Era for U.S. Chip Sector - Bloomberg
https://www.bloomberg.com/news/articles/2020-07-25/intel-stunning-failure-heralds-end-of-era-for-u-s-chip-sector

Intelは最高のデザインと最先端の工場との組み合わせにより、過去30年間にわたって世界トップのチップメーカーであったとBloombergはコメント。他のチップメーカーがアメリカ国内の工場を閉鎖または売却する中、Intelは設計と自社生産を続けることで優れた半導体を製造できると主張してきましたが、7nmプロセス生産の遅延によりこの戦略がボロボロになっているとのこと。


スワン氏は「半導体をどこで製造するかは大きな問題ではない」と述べていますが、ロードマップの失敗を認めることは「Intelによるコンピューティングの支配の終わり」を示すことになると、投資銀行のレイモンド・ジェームズ・ファイナンシャルでアナリストを務めるChris Caso氏は指摘。また、一部のアメリカの政治家や国家安全保障の専門家は、チップ生産の技術を国外に持ち出すことは潜在的な危険があると考えています。

IntelのXeonチップは原子力発電所や宇宙船、ジェット機の設計を行うコンピューターやデータセンターに加え、さまざまな情報を取り扱う政府機関にも使用されています。記事作成時点では、これらのプロセッサーはオレゴン州やアリゾナ州、ニューメキシコ州で製造されていますが、Intelがチップの外部委託を行う際にはTSMCが有力候補となる可能性があります。TSMCの本拠は中国のすぐそばの台湾にあるため、TSMCへの製造委託は地政学的なリスクがあると懸念されているそうです。

Intelは長年にわたって数百億ドル(約数兆円)もの投資を行って工場の更新を行ってきましたが、スマートフォンやモバイルデバイスの台頭によって状況が変わったとのこと。Intelもスマートフォン向けのチップ製造に着手したものの、既存のPCおよびサーバーチップを優先したため、スマートフォン向けメーカーはQualcomm製のチップを搭載したり、Appleのように自社設計のチップを搭載したりしました。

TSMCは自社工場を持たない企業のスマートフォン向けチップの製造を引き受けたため、Intelとの間で経験の差が広がったとのこと。記事作成時点ではIntelが年間数億個のチップを製造する一方、TSMCは年間10億個を超えるチップを製造しているとのことで、TSMCは工場を改善するための経験やエンジニアの技術を豊富に蓄積してIntelを追い抜いたとBloombergは指摘しています。

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in ハードウェア, Posted by log1h_ik

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