サイエンス

EVやスマホのバッテリーに使われる「リチウム」がアメリカ・アーカンソー州に500万~1900万トンも埋蔵されている可能性


リチウムは電気自動車(EV)やスマートフォンに搭載されるリチウムイオンバッテリーなどに使われており、現代社会にとって欠かせない物質となっています。新たに、アメリカ地質調査所(USGS)が主導した研究により、アメリカのアーカンソー州に500万~1900万トンものリチウムが埋蔵されていると推定されました。

Evaluation of the lithium resource in the Smackover Formation brines of southern Arkansas using machine learning | Science Advances
https://www.science.org/doi/10.1126/sciadv.adp8149


Unlocking Arkansas' Hidden Treasure: USGS Uses Machine Learning to Show Large Lithium Potential in the Smackover Formation | U.S. Geological Survey
https://www.usgs.gov/news/national-news-release/unlocking-arkansas-hidden-treasure-usgs-uses-machine-learning-show-large

近年は、リチウムイオンバッテリーに必要不可欠なリチウムの需要が世界的に増加しています。今後も化石燃料から再生可能エネルギーへの移行が続くため、リチウム需要は増加の一途をたどると予測されています。


リチウムは地球全体に広く分布している物質ですが、記事作成時点の主要な産出国はオーストラリア・チリ・中国・アルゼンチン・ブラジルなどです。アメリカにもリチウム鉱床はありますが、記事作成時点ではアメリカが使用するリチウムの25%以上を輸入に依存しているとのこと。

新たに、USGSとアーカンソー州エネルギー環境省の地質学者らは共同で、アーカンソー州にあるスマックオーバー累層と呼ばれる地層に、どれほどのリチウムが存在するのかを推定する研究を行いました。

スマックオーバー累層はジュラ紀の海にさかのぼる石灰岩地層であり、石油や臭素が豊富に堆積していることで知られています。近年では、スマックオーバー累層から採取される塩水に高濃度のリチウムが含まれていることでも注目されていますが、これまでスマックオーバー累層に存在するリチウムの正確な量は推定されていませんでした。


研究チームは、スマックオーバー累層を含むアーカンソー州全域から塩水サンプルを採取してリチウム濃度を測定し、USGSが過去に収集したサンプルデータを比較しました。そして、これらのサンプルデータとさまざまな地質学的データを組み合わせて、サンプルが不足している地域全体のリチウム濃度を連続的に予測する機械学習モデルを開発しました。

予測モデルを使用してスマックオーバー累層のリチウム濃度マップを作成した結果、スマックオーバー累層の塩水に含まれるリチウムの量は500~1900万トンと推定されました。この量は、記事作成時点におけるアメリカのリチウム資源推定量の35~136%に相当しており、国際エネルギー機関(IEA)が予測する「2030年のEVのリチウム需要」の4倍以上だとのことです。

論文の筆頭著者である水文学者のキャサリン・クニエリム氏は、「アーカンソー州のスマックオーバー累層には、アメリカのリチウム輸入に取って代わるのに十分な溶解リチウムが存在すると推定しています」と述べつつも、これはあくまで埋蔵量を推定した研究であると指摘。実際に塩水からリチウムを抽出する方法に基づき、技術的に回収可能な量を推定したわけではない点に注意が必要だと説明しました。

USGS局長のデヴィッド・アップルゲート氏は、「リチウムはエネルギー転換にとって重要な鉱物であり、輸入に取って代わるアメリカの生産量増加の可能性は、雇用・製造・サプライチェーンの回復力に影響を及ぼします。この研究は、経済的に重要な問題に対処する上での科学の価値を示すものです」と述べました。

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in サイエンス, Posted by log1h_ik

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