サイエンス

リチウムイオン電池よりも安全で高効率なリチウム金属電池の実現につながる可能性がある根本的な発見が明らかに


リチウムイオン電池は、PCやスマートフォンなどの電子機器に利用されていますが、多くの研究者がバッテリーの性能向上を図るために、「リチウム金属電池」の研究開発を進めています。カリフォルニア大学ロサンゼルス校の研究チームが、特定の条件下でリチウム原子が一定の形を示すことを明らかにしました。この発見は、リチウム金属電池の安全性を高めることができる可能性が期待されています。

Ultrafast deposition of faceted lithium polyhedra by outpacing SEI formation | Nature
https://doi.org/10.1038/s41586-023-06235-w


True shape of lithium revealed for the first time
https://phys.org/news/2023-08-true-lithium-revealed.html


Revolutionizing Battery Performance: UCLA Reveals True Shape of Lithium for the First Time
https://scitechdaily.com/revolutionizing-battery-performance-ucla-reveals-true-shape-of-lithium-for-the-first-time/

1980年代に発明された、金属リチウムと液体電解質を使用した「リチウム金属電池」は新しい技術として大きな期待を集め、NTTが発売した肩掛け携帯電話のバッテリーに採用されることで市場に登場しました。

正の電荷を帯びたリチウム原子を、電極を覆う炭素のカゴに貯蔵するリチウムイオン電池とは対称的に、リチウム金属電池は、電極を金属リチウムでコーティングします。そのため、リチウム金属電池はリチウムイオン電池に比べ、理論上約2倍のエネルギーを貯蔵することが可能とされています。


金属リチウムは化学物質と非常に反応しやすく、空気にさらされると腐食が発生し、デンドライトと呼ばれるリチウムの塊が析出します。伸びたデンドライトが絡み合うことで、リチウム金属電池がショートを起こし、最終的に発火や爆発につながる危険性が指摘され、次第にリチウム金属電池は使われなくなっていきました。

これまでの金属リチウムの構造に関する説明は、「塊状」や「円柱状」といった曖昧なものであり、この点がリチウム金属電池の機能や安全性を理解する上での課題となっていました。そこで、カリフォルニア大学ロサンゼルス校のユザン・リー氏らの研究チームは、リチウム原子をわざと腐食させ、その形状を観察するという研究を行いました。


実験では、研究チームは4種類の異なる電解液を用いて金属リチウムに腐食を発生させました。すると、金属リチウムは4つの異なる形状に変化することがわかったとのことです。

同時に、研究チームは極小の電極に電流を流し続けることで、金属リチウムが腐食するよりも早く電極にリチウムを堆積させる技術を開発。すると、腐食が発生していないリチウム原子はすべてひし形十二面体の形を示すことが判明しました。

by Tom Garnett

リチウム原子同士が絡み合うことなく整然と堆積されることは、リチウム金属電池の欠点だった発火や爆発のリスクを軽減できる可能性があることが期待されています。

以下の画像は研究チームが今回発見した、ひし形十二面体の形を示したリチウム原子(上段)と、腐食が生じるに伴って表れた金属リチウムの不規則な形(中央、下段)を示した図です。


リー氏は「今回の発見によって、腐食がない場合の本来のリチウムの形状が明らかになりました。今後はバッテリーの安全性と性能を高めつつ、リチウムの密度を高める研究が必要です」と述べています。また「リチウムを最適に堆積させるために、さらなる研究や開発が求められます」と報告しています。

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in サイエンス, Posted by log1r_ut

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