テスラのフルセルフドライビングに関する調査をアメリカ運輸省道路交通安全局が開始、視界不良時の衝突報告4件のうち1件が死亡事故
イーロン・マスク氏の電気自動車メーカーであるテスラは、一部の車両向けにフルセルフドライビング(FSD)機能を提供しています。このFSDは安全上の問題が発覚しリコールの対象となったり、FSDに関するテスラの説明が証券詐欺・電信詐欺に当てはまる疑いがあるとして司法省が調査を開始したりと、話題に事欠きません。そんなテスラのFSDに関する新しい調査を、アメリカの自動車安全規制当局であるアメリカ運輸省道路交通安全局(NHTSA)が開始しました。
US probes Tesla's Full Self-Driving software in 2.4 mln cars after fatal crash | Reuters
https://www.reuters.com/business/autos-transportation/nhtsa-opens-probe-into-24-mln-tesla-vehicles-over-full-self-driving-collisions-2024-10-18/
Tesla's Full Self-Driving software under investigation by federal safety regulator | TechCrunch
https://techcrunch.com/2024/10/18/teslas-full-self-driving-software-under-investigation-by-federal-safety-regulator/
Feds open their 14th Tesla safety investigation, this time for FSD - Ars Technica
https://arstechnica.com/cars/2024/10/feds-open-their-14th-tesla-safety-investigation-this-time-for-fsd/
現地時間の2024年10月18日、NHTSAは2023年にテスラのFSDソフトウェア搭載車両が起こした4件の衝突事故に関する報告を受け、テスラのFSD対応車両240万台を対象とする調査を開始しました。NHTSAの予備評価は、同局が車両の安全に対して不当なリスクをもたらすと判断された場合、車両のリコールを求めるための第一歩となります。
NHTSAが受けた報告は、FSD使用中に起きた4件の衝突事故に関するもの。これらの事故には「太陽光や霧、空気中のちりやほこりなどにより道路の視界が悪化していた」という共通点があります。NHTSAによると、報告された4件の衝突事故のうちひとつは、2023年11月にアメリカのアリゾナ州リムロックで発生した「歩行者が2021年型のモデルYに衝突され死亡した事故」です。なお、報告された4件の衝突事故のうち死者が出たのはこの1件のみ。
NHTSAの調査では、FSDに対応する2016~2024年製のモデルSおよびモデルX、2017~2024年製のモデル3、2020~2024年製のモデルY、2023~2024年製のサイバートラックが対象となり、その総数は240万台にも上るとのことです。
NHTSAは今回の調査で、FSDの「道路の視界不良状況を検知し、適切に対応する能力」を審査します。また、NHTSAは道路の視界が悪い状況で、FSDが報告にない衝突事故を起こしていないかや、視界の悪い状況でもFSDが機能するようにテスラがソフトウェアアップデートを実施しているかどうかなども審査する予定です。NHTSAは「この調査では、こうしたアップデートのタイミング、目的、機能、テスラによる安全性への影響の評価を審査します」と述べました。
FSDに関する死亡事故はこれまで少なくとも2件発生しており、そのうちのひとつが今回の調査対象となっている衝突事故で、もうひとつが2024年4月にシアトルで発生した死亡事故です。
業界の専門家の中には、テスラのFSDが「カメラのみ」で周囲環境を監視している点について懸念の声が上がっています。テスラの車両にはカメラのバックアップになるようなセンサーが搭載されていないため、視界が悪い状況で問題を起こす可能性があるという意見もあります。市場調査企業・GlobalDataのジェフ・シュスター副社長は「気象条件はカメラの撮影能力に影響をおよぼす可能性があり、規制環境がこれに間違いなく影響するだろう」と語りました。
なお、テスラ車両にはカメラ以外のセンサーが搭載されていた過去があるのですが、マスク氏の鶴の一声によりカメラ以外のセンサーを排除する方針に転換しました。
テスラがイーロン・マスクのセンサー排除カメラ重視計画を加速、車両から段階的に超音波センサーを排除すると発表 - GIGAZINE
テスラは2024年10月にロボタクシーのCybercabを発表したばかりですが、このCybercabもカメラしか周囲環境を監視するためのセンサーを搭載していません。そのため、シュスター副社長は「この点がCybercabリリースへの大きな障害となる可能性がある」と指摘しています。
なお、NHTSAはテスラのオートパイロットとFSDに関する調査をこれまでにも実施しています。この調査によると、テスラの車両が起こした数百件の衝突事故と数十件の死亡事故が、オートパイロットとFSDに関連していることが明らかになっており、これに応じる形でテスラは2023年末に自主的にリコールを実施しました。
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