サイエンス

マリアナ海溝から聞こえる謎の音の正体が解明される


2014年に北西太平洋・マリアナ海溝で実施した音響調査で収集された謎の音は約10年にわたって科学者を悩ませていました。しかし、アメリカ海洋大気庁(NOAA)の研究者らがAIを用いた分析を行った結果、この音の正体を突き止めることに成功しました。

Frontiers | Bryde’s whales produce Biotwang calls, which occur seasonally in long-term acoustic recordings from the central and western North Pacific
https://www.frontiersin.org/journals/marine-science/articles/10.3389/fmars.2024.1394695/full

Creepy 'biotwang' noises coming from the Mariana Trench finally explained after 10 years | Live Science
https://www.livescience.com/animals/whales/mysterious-sound-coming-from-the-mariana-trench-has-finally-been-explained


マリアナ海溝は水深1万mを超える世界で最も深い海溝とされており、これまでに日本の無人潜水機「かいこう」による調査など、さまざまな調査が行われています。

2014年にはマリアナ海溝で音響調査を実施。その際「Biotwang(ビオトワング)」と呼ばれる謎の音が検出されました。以下は検出された実際のビオトワングの音声です。

Biotwang (Mariana trenches audio) - YouTube


科学者らは当初この音の正体が分からず困惑したとのこと。しかし、2016年にビオトワングはシロナガスクジラザトウクジラなどの大型のクジラの鳴き声である可能性が指摘されました。

一方で、検出された音声は既存のクジラの鳴き声とは一致せず、ビオトワングの正体の特定は難航したとのこと。


そこでNOAAの海洋学者であるアン・アレン氏らはビオトワングをスペクトログラムに変換し、20万時間以上の音声を基にトレーニングした機械学習アルゴリズムを用いて不要なノイズを除去。そしてマリアナ諸島とその周辺全体の監視ステーションで収集された音声データとビオトワングを比較して出どころの特定を実施しました。

分析の結果、ビオトワングはニタリクジラが発した音であることが明らかになりました。

by Jason Thompson

研究チームによると、マリアナ諸島付近を泳ぐニタリクジラ10頭を調査すると、そのうち9頭がビオトワングと一致する独特な音を立てていたとのこと。研究チームの調査では、ニタリクジラは水温20℃以上の世界中の海に分布しているものの、ビオトワングは北西太平洋でしか収集されず、マリアナ海溝付近に生息する特定のニタリクジラの集団がビオトワングを発していたことも特定されています。

また、2016年に発生したエルニーニョ現象によって海水温が上昇し、この地域を訪れるニタリクジラの数が増加した結果、ビオトワングの検出回数が急増したことも示されています。

しかし、これまでの研究ではニタリクジラがなぜビオトワングを発するのかについては明らかになっていません。研究チームは「ニタリクジラはビオトワングはお互いの位置を特定するために使用されている可能性がありますが、確実にそのことを説明するためにはさらなる調査が必要です」と語りました。

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in サイエンス,   生き物,   動画, Posted by log1r_ut

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