サイエンス

去年の歌じゃモテないのか、クジラの歌にも流行があることが判明


ザトウクジラのオスは繁殖期になると求愛のために歌を歌うことで知られていますが、その歌には人間の流行曲と同じように「今年のヒットソング」や「流行遅れの曲」があるそうです。

ある時点では同じ集団のオスはみな同じ曲を歌っているものの、その曲は年月とともに変わっていき、繁殖期のはじめのころには去年と同じ曲を歌っていたクジラたちも、新しい「流行歌」が登場するとすぐにその曲を覚え、繁殖期の終わりごろには完全に「去年の曲」は「今年の曲」に取って代わられることが、オーストラリアの生物学者たちの研究により明らかになりました。また、その流行は西から東へと伝わっていくことも判明しています。


詳細は以下から。Humpback whale songs spread eastward like the latest pop tune

クイーンズランド大学South Pacific Whale Research Consortium(南太平洋クジラ研究協会)の生物学者たちは、隣接して生息する太平洋のザトウクジラ6集団の歌を10年以上にわたり観測した記録から、クジラの歌には流行があり、その流行は南太平洋ではほとんど例外なく西から東へと伝わっていくことを明らかにしました。論文はCurrent Biology誌に掲載されています。

ほかのクジラも求愛の際に声を出して「鳴く」ことはありますが、ザトウクジラの「歌」はそれとは次元が違う複雑な構造を持ったユニークなもので、いくつかの「旋律」の組合せによる1曲数分~30分ほどのいくつかの「曲」を何度も繰り返し歌い、時には20時間以上も歌い続けることで知られています。


ザトウクジラの歌の構造などについての研究はかなり進んでいるのですが、そもそもなぜ歌うのかという理由については、まだ完全には解明されていないそうです。求愛にかかわる行動であることは間違いないと見られているのですが、主にメスをひきつける目的で歌っているのか、ライバルのオスを遠ざけるためのものなのかはわかっていません。しかし、今回の研究を行った生物学者たちは、どちらかというと「メスをひきつけるためのもの」としてとらえているとのこと。

「目新しい歌を求めるオスたちの探求は、みんなとちょっと違う個性を持つことによりメスにとって魅力的になれるのでは、と期待してのことだと思われます。しかし、みんなと同じ曲を歌いたい、同調したいという欲求も働くことにより、新しい曲はすぐにまねされ、『ちょっと違う』曲をはじめに歌ったオスもすぐにまた集団にのみ込まれてしまうのでしょう」とクイーンズランド大学の大学院生Ellen Garlandさんは語っています。

新しい曲が登場するとその集団のオスたちに瞬く間に覚えられ、概して繁殖期のはじめに登場した新曲は、その繁殖期の終わりごろまでにはクジラの「ヒットチャート」のトップの座にまで駆け上り、そのころには去年の流行曲は完全に駆逐されてしまうそうです。

新しい流行が生まれるとき、多くの場合は「去年の曲」「現在流行している曲」の要素に何か新しい要素を付け加えてアレンジしたような曲として登場するのですが、時として去年の曲とはまったく似ていない、いわば「誰も聞いたことがないような新しい曲」が生まれることもあるとのこと。その点も人間界の音楽の流行に似ているかもしれません。

今回の研究では隣接して生息する6つの集団のうち、オーストラリア東岸の集団で生まれた「流行曲」が約2年後にフランス領ポリネシアの集団で流行するという、西から東へと流行が伝わっていくパターンが確認されました。逆に東から西へと伝わった曲は10年間の観測期間で1曲のみだったとのこと。

流行が西から東へ伝わるパターンは、観測対象となったザトウクジラの集団の中で西端のオーストラリアの集団が突出して大きい(個体数が多い)ことで説明できるのではないかと研究者たちは考えているそうです。また、集団の境界を超えて流行歌が伝わった手段としては、数頭のオスが元の集団からほかの集団へ「移籍」するとともに曲を「持ち込む」ということや、回遊時に近くを泳ぐ集団のオスが新しい曲を聞いて覚えるということが考えられるとのこと。

南太平洋のザトウクジラの歌のサンプル2タイプを以下のリンクから聞くことができます。

Garland2.mp3 (audio/mpeg オブジェクト)

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in サイエンス,   生き物, Posted by darkhorse_log

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