リチウムイオン電池の液漏れや発火を防いで寿命も延ばすゲル電解質が開発される
マルティン・ルター大学ハレ・ヴィッテンベルク(MLU)の研究チームが、高い導電性を持ちながら熱的に安定で堅牢(けんろう)な高分子ゲルを開発したと発表しました。このゲルを用いることで、リチウムイオン電池の安全性と性能が向上すると研究チームは主張しています。
Designing Conductive Pyrrolidinium‐Based Dual Network Gel Electrolytes: Tailoring Performance with Dynamic and Covalent Crosslinking - Katcharava - Advanced Functional Materials - Wiley Online Library
https://onlinelibrary.wiley.com/doi/10.1002/adfm.202403487
Chemists create gel to prevent leaks and boost lithium-ion battery life
https://phys.org/news/2024-09-chemists-gel-leaks-boost-lithium.html
ゲル電解質を用いた充電池自体はこれまでにも存在しましたが、リチウムイオン電池を組み合わせる研究はこれまでほとんどなかったと研究チームは述べています。
研究チームが開発した電解質は、従来の液体電解質と固体電解質の利点を組み合わせた新しいゲル電解質です。このゲルはピロリジニウム塩を用いた高分子がベースとなっており、共有結合による架橋構造と水素結合による動的な架橋構造を持っています。
また、電解質によって25℃下で2~7×10-4S/m以上という高い導電性を実現しており、200℃以上の温度に耐えられる熱耐性も持ちます。
電気化学的にも安定で、5V以上の電圧に耐えられるとのこと。さらに不燃性であることから、火にさらされても発火しません。これは、リチウムイオン電池の安全性向上に大きく寄与する特性だと研究チームは主張しています。
加えて、70℃で4時間加熱するだけで元の性能を回復できるため、電池のリサイクル性も大きく向上します。また、研究チームは、ゲルが正しく製造されて架橋構造が適切に保持されている場合、高い透明度を持つと推測しています。そのため、ゲルの透明性は、ゲルの均一性や成分の完全な組み込みを示す重要な指標として使用することができると考えられます。
研究チームの一員でMLUの化学者であるアーニャ・マリノウ氏は「従来のリチウムイオン電池では、初回充電時に液体電解質が電極上に安定化層を形成します。これは電池の性能と耐用年数にとって非常に重要です。しかし、ゲル電解質に関しては根本的に新しい設計が必要だったため、ポリマーの分子鎖にイオン性の骨格を組み込むという方法を採用しました」と述べています。
MLUの高分子化学研究グループの責任者であるウォルフガング・ビンダー教授は「リチウムイオン電池は従来の充電式電池よりも速く充電できるので、生活のほぼすべての場面で使用できます。しかし、電流を伝える電解質が可燃性であることが問題であり、バッテリーの損傷が発火や爆発を引き起こす可能性がありました。しかし、このゲル電解質はほどよい粘度を持ち、液体由来の高い伝導性とポリマーの熱安定性および堅牢性を兼ね備えています」と述べました。
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