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Xのサービス停止命令を出したブラジル最高裁のモラエス判事とは何者なのか?


ブラジル最高裁判所が、国内でのXのサービス停止命令を出し、ISPにXへのアクセスをブロックするよう命じました。もしユーザーがVPN経由でXにアクセスした場合、1日ごとに罰金が科されます。この状況に至った要因として、ブラジル最高裁判所でネットの誤情報との戦いを担当し、強い権力を持つアレクサンドル・デ・モラエス判事の存在が挙げられます。

Who Is Alexandre de Moraes, The Judge Who Blocked Elon Musk's X In Brazil
https://www.ndtv.com/world-news/who-is-alexandre-de-moraes-the-judge-who-blocked-elon-musks-x-in-brazil-6458807


Alexandre de Moraes - Wikipedia
https://en.wikipedia.org/wiki/Alexandre_de_Moraes

Brazil’s Most Powerful Judge Is in the Spotlight—Again
https://americasquarterly.org/article/brazils-most-powerful-judge-is-in-the-spotlight-again/

モラエス氏はサンパウロ大学法学部出身で、憲法管轄権に関する論文で法学博士号を取得しています。サンパウロ州の検察庁を経て、2002年から公安長官を担当。サンパウロ州では殺人事件の4件に1件が警察によるものという荒れた状態にありましたが、モラエス氏は警察の暴走を隠蔽して非難を受けました。また、デモの鎮圧に装甲車を派遣した件について、左翼運動家から批判されたこともあります。


ミシェル・テメル政権下では法務大臣に就任。大統領の妻が携帯電話をハッキングされて、情報や写真と引き換えに30万レアル(約780万円)を要求された事件では、捜査チームを動員してただちに脅迫犯を逮捕。2017年3月にブラジル最高裁判所判事となりました。

憲法専門家のアントニオ・カルロス・デ・フレイタス氏はモラエス氏の経歴を踏まえ、「法的な専門知識がモラエス氏の出世に一役買ったことは事実ですが、彼を最高裁の判事にまでのぼりつめさせたのは、99%が政治的なものです。モラエス氏は政治的動物です」と評しました。一方で、最高裁関係者はモラエス氏を「軍部を含むさまざまな関係者と対話する才能を持つ現実主義者」と評したとのこと。

テメル氏の後任で「トロピカル(熱帯の)トランプ」とも称されたジャイル・ボルソナーロ大統領は、モラエス氏が盟友数人に対する捜査を行ったことでモラエス氏を「クズ」呼ばわりし、「お前の判決には従わない」などと公言していましたが、2022年の大統領選挙で敗北。その後、クーデターを企図していたことがわかり、捜査が進められています。ボルソナーロ氏が企んでいたクーデターには、モラエス氏を逮捕することも含まれていました。

2022年の大統領選挙でボルソナーロ氏を破ったのは、2003年から2010年まで大統領を務めたルイス・イナシオ・ルーラ・ダ・シルバ氏でした。モラエス氏は2019年からダ・シルバ氏の法定代理人を務めた経験のあるディアス・トフォリ最高裁長官のもと、裁判所関係者に対する攻撃の対応を務めました。この仕事の中で、「Odebrecht事件」と呼ばれる大型汚職事件にトフォリ氏が関与していたという調査報道サイト・Crusoéの記事を取り下げるよう圧力をかけ、他のメディアから批判されています。

Publicamos a reportagem da Crusoé que o STF censurou
https://www.intercept.com.br/2019/04/15/toffoli-crusoe-reportagem-stf-censura/


2022年にはメッセージングアプリのTelegramが偽の情報を拡散するアカウントをブロックせず、裁判所の判決を無視したとして使用停止措置を命じました。当時大統領だったボルソナーロ氏は「この判決は容認できない」と反論しています。

Telegramに対する使用停止措置をモラエス氏が出したのは、モラエス氏がブラジル最高裁で「ネットでの誤情報拡散」への対応を担当しているためです。モラエス氏はサンパウロ州公安長官時代から続く強硬姿勢で事態に取り組み、やがて、2022年の大統領選挙での誤情報拡散に右翼のアカウントが用いられていたことから、著名な右翼活動家のアカウントのブロック措置を開始。そして「プラットフォームを右翼が陰謀論を拡散するメガホンに変えた」としてXを非難し、イーロン・マスク氏と対立していくことになります。

なお、南北アメリカ情勢を伝えるAmericas Quarterlyはモラエス氏を「ブラジルで2番目に力がある人物かもしれない」と表現。「ブラジル最後の独裁政権」だったボルソナーロ大統領時代は、数少ないボルソナーロ氏に対抗できる力だったものの、ブラジルの裁判所はアメリカなどに比べて広範な力を持つため、結果的に「力を持ちすぎた」という見方を示しています。

今回、サービス停止命令と、VPN経由でXを利用すると罰金という措置により、ブラジルでは代替SNSとしてBlueskyの人気が高まっており、3日間でユーザー数が100万人増加したとのことです。

wow... welcome to the ONE MILLION new users in the last three days!!! 🎉

uau... bem-vindos ao UM MILHÃO de novos usuários nos últimos três dias!!! 🎉

— Bluesky (@bsky.app) Sep 1, 2024 at 6:21

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in メモ, Posted by logc_nt

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