サイエンス

ストーンヘンジの中央にある「祭壇石」は750km離れたスコットランドから海路で運ばれてきた可能性


イングランド南部にあるストーンヘンジは約5000年前に建設が始まったとされる遺跡であり、円陣状に巨大な石が直立する光景が印象的です。新たな研究により、そんなストーンヘンジの中央に横たわっている祭壇石(Altar Stone)という巨石が、約750km離れたスコットランドから運ばれてきたものであることが示されました。

A Scottish provenance for the Altar Stone of Stonehenge | Nature
https://www.nature.com/articles/s41586-024-07652-1


Great Scott! Stonehenge’s Altar Stone origins | EurekAlert!
https://www.eurekalert.org/news-releases/1053983

Stonehenge's Altar Stone May Have Journeyed Nearly 500 Miles : ScienceAlert
https://www.sciencealert.com/stonehenges-altar-stone-may-have-journeyed-nearly-500-miles

ストーンヘンジの建設は約5000年前に始まり、その後も2000年間にわたって手が加えられてきたと考えられています。ストーンヘンジの中央付近に横たわっている紫がかった緑色の砂岩は祭壇石と呼ばれ、縦4.9m・横1m・厚さ0.5mのサイズで、重さは6トンに達します。


祭壇石は地面に埋め込まれたように横たわっており、夏至の日に太陽が昇る方向に合致していることから、ストーンヘンジの中でも重要な石だったことがうかがえます。オーストラリアのカーティン大学地球惑星科学部の博士課程に在籍するアンソニー・クラーク氏らの研究チームは、祭壇石に含まれる鉱物の年代測定や化学組成を分析し、どこから石が運ばれてきたのかを調べる研究を行いました。

以下の写真で、2つの巨石に敷かれるように埋まっているのが祭壇石です。

by Nick Pearce/Aberystwyth University

長らく、祭壇石はウェールズから運ばれてきたと考えられていましたが、2023年の研究では異常なほど多量のバリウムを含む祭壇石の化学組成と一致する場所が見つからず、ウェールズ由来という説が否定されました。

そこで研究チームは、祭壇石から採取された2つのサンプルに含まれる鉱物「ジルコン」「アパタイト」「ルチル」に焦点を当てて同位体年代測定を実施。その結果、ジルコンの一部は40億年~25億年前に、残りは16億年~10億年前に形成されたことや、アパタイトとルチルは4億7000万~4億5800万年前に形成されていたことがわかりました。


さらに研究チームは、イングランドやウェールズだけでなく、イギリス全体やアイルランドまで範囲を広げて、さまざまな土地の砂岩堆積物の化学組成を祭壇石と照らし合わせました。その結果、祭壇石の化学組成が、ストーンヘンジから少なくとも750km離れたスコットランド北東部のOrcadian Basin(オルカディアン盆地)の岩石と一致することが判明しました。研究チームは、祭壇石がこのオルカディアン盆地から750kmの距離を超え、イングランドまで運ばれてきたと主張しています。

クラーク氏は、「祭壇石がスコットランド起源であるという今回の発見は、新石器時代の技術的制約を考慮すると、『紀元前2600年頃にこれほど大きな石がどうやって長距離輸送されたのか?』という興味深い疑問を提起するものです」とコメントしました。


スコットランドのオルカディアン盆地から、約750km離れたイングランドのストーンヘンジまで、祭壇石がどのようにして運ばれたのかは不明です。しかし、これほど大きな石を陸路で運ぶのはかなり困難であることから、グレートブリテン島の沿岸に沿った海上輸送ルートをたどった可能性が高いとみられています。

論文の共著者であるカーティン大学のクリス・カークランド教授は、「今回の研究結果は、新石器時代のイギリスに存在したと広く考えられているよりも長距離の交易ネットワークと、高レベルの社会組織の存在を示唆しています」「祭壇石の起源を発見したことで、新石器時代における重要な社会的協調のレベルが明らかになり、先史時代のイギリスの魅力的な姿を思い描く一助となりました」と述べました。

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in サイエンス, Posted by log1h_ik

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