メモ

オンライン賭博はギャンブラーの経済状況を悪化させる、特に低所得の若い男性で顕著


アメリカでは2018年以降、38以上の州でスポーツ賭博が合法化されました。その結果、アメリカではギャンブル依存症患者が増加しており、特に若い低所得の男性の間で、経済状況に悪影響を及ぼしていることが明らかになっています。

Online sports betting hurts consumers
https://www.slowboring.com/p/online-sports-betting-hurts-consumers


online gambling: US gambling crisis feared as online betting rises - The Economic Times
https://economictimes.indiatimes.com/tech/technology/us-gambling-crisis-feared-as-online-betting-rises/articleshow/112470749.cms

アメリカでスポーツ賭博が合法化されてから、その市場規模は年間1000億ドル(約14兆8000億円)にまで成長しています。しかし、スポーツ賭博を合法化した州ではギャンブル依存症ホットラインへの電話が急増しているそうです。また、スポーツ賭博以前から存在する合法賭博(宝くじなど)が貧困層の経済的幸福を不釣り合いに損なっていることから、スポーツ賭博による追加の税収がギャンブル依存症対策のコストに見合わない可能性が指摘されていました。しかし、これまでオンライン賭博に関するデータが不足していたため、オンライン賭博がギャンブラーにどのような悪影響を及ぼすのかについては明らかになっていませんでした。

しかし、2024年7月に発表された2つの論文により、オンライン賭博がギャンブラーの経済状況に悪影響を及ぼすことが示されています。個人の財務データの大規模なサンプルを用いて分析されたこれらの論文によると、オンライン賭博はギャンブラーの信用スコアを下げ、負債を増やし、前向きな投資活動に取って代わってしまうことが明らかになっています。これらの影響は、特に低所得の男性に多く見られるそうです。


合法化されたスポーツ賭博の経済的影響を調査した論文では、700万人の消費者信用データセットを分析し、オンライン賭博が消費者の経済面にどのような影響を与えるかを調査しています。論文の著者であるブレット・ホレンベック氏は、スポーツ賭博の合法化について「調査開始時よりもさらに懸念が高まりました」と語りました。

ホレンベック氏らの調査によると、あらゆる種類のギャンブルが合法化されている州では、平均信用スコアが4年で0.3%低下するそうです。特にオンライン賭博のみが合法化されている州の場合、平均信用スコアは4年で1%も低下していました。他にも、オンライン賭博が認められている州では、3~4年後に破産申請する可能性が25~30%増加することや、未払い債務の回収率が約8%増加することも明らかになっています。さらに、オンライン賭博が合法化されている州では特に低所得な若い男性が破産率が高く、無担保ローンの利用が多く、クレジットカードの滞納率も高く、経済的苦境に陥りやすいことも指摘されました。

以下のグラフは「Credit Score(信用スコア)」「Bankruptcy(破産率)」「Cons. Loan(短期ローン)」「Credit Card Delinquency(クレジットカード滞納率)」「Auto Loan Delinquency(自動車ローン滞納率)」「Sec./Unsec. Accounts Ratio(証券口座比率)」「Cumulative Credit Card Limit(クレジットカード累積限度額)」を、縦軸は「M」(男性)、「F」(女性)、「M>45」(45歳超の男性)、「M<45」(45歳未満の男性)、「LI M<45」(低所得の45歳未満の男性)、「HI M<45」(高所得の45歳未満の男性)を示しています。


さらに、スポーツ賭博が脆弱な世帯に与える影響について調査した論文では、23万世帯以上の消費者取引データを分析し、クレジットカード残高、クレジットカード負債、当座貸越などの金融安定性の尺度を比較しています。分析によると、スポーツ賭博の合法化によりギャンブルや消費の減少を犠牲にすることなく、スポーツ賭博を行う数が大幅に増加することが判明しました。つまり、ギャンブラーはそれまで行ってきたギャンブルの代わりにスポーツ賭博を行うわけではなく、従来のギャンブルを行いながらさらにスポーツ賭博にも手を出すようになるというわけです。株式投資の代わりにスポーツ賭博を行うことも明らかになっており、スポーツ賭博で1ドル(約150円)を賭けると株式投資が約2ドル(約300円)減少することが明らかになっています。

同論文の著者であるスコット ベイカー氏によると、特に低所得層のギャンブラーが不釣り合いな悪影響受けていると指摘しています。貯金残高が少ない世帯は高貯蓄世帯よりお収入に占めるギャンブルへの支出の割合が32%も高く、当座貸越経験のある世帯は経験のない世帯よりも収入に占めるギャンブルへの支出の割合が2倍も高いそうです。

スポーツ賭博の危険性を訴えるSlow Boringのベン・クラウス氏とミラン・シン氏は、常識的なガードレールを設置することでスポーツ賭博による悪影響を抑制する必要があると主張しており、スポーツ賭博を行うにはカジノやバーなどへ行く必要があるなどの制限を設けることで、影響を緩和できると提言しています。

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in メモ, Posted by logu_ii

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