Appleが「スポーツ賭博」に手を染めようとしているとの指摘
Appleは2024年2月21日に、スポーツ情報アプリ「Apple Sports」を北米とイギリスのiPhoneユーザー向けにリリースしました。しかし、このアプリは肝心のスポーツ観戦に関するデータが乏しい一方で、賭け金のオッズ情報が充実していることから、アメリカの月刊誌・The Atlanticが「Appleがギャンブルに傾倒しつつあるのではないか」と指摘しました。
Did Apple Just Make a Gambling App? - The Atlantic
https://www.nytimes.com/2024/02/28/technology/openai-copyright-suit-media.html
The Atlanticのライターであるジェイコブ・スターン氏がApple Sportsをダウンロードしたきっかけは、バスケットボールの試合を放送するテレビ中継より、Apple Sportsの方が情報が早いからでした。
実際にApple Sportsを使用したスターン氏によると、Apple Sportsは他の一般的なスポーツ情報アプリとは異なり、試合のハイライト情報やスポーツ関連のニュースはなく、1つ前の試合以前のスケジュールや1日以上前の試合結果、どんな試合がどのテレビチャンネルやストリーミングサービスで観戦できるのかなどの情報も掲載されていないとのこと。
そんなApple Sportsのシンプルで洗練された画面の一番目立つ場所に表示されているのが、賭けのオッズ情報です。
一応、iPhoneの設定で賭け金に関する情報を非表示にすることが可能で、スポーツ賭博サービスへのリンクもありませんが、試合観戦に関するデータや機能が乏しく、Apple TV+で配信する試合の案内すらないことから、スターン氏は「Apple SportsというよりApple Scoresという名前の方が適切でしょう」と評しています。
スポーツ観戦情報が少ない割にベッティング関連の機能は充実しており、特に読み込み速度が桁違いだという点も、スポーツ賭博を念頭に置いたアプリだというスターン氏の主張を裏付けています。
もし、Apple Sportsが想定しているユーザーがただのスポーツファンであれば、試合の情報の更新頻度が2秒だろうが2分だろうがあまり問題になりません。リアルタイムで試合を楽しみたいのであれば、テレビ観戦をするか、スマートフォンで試合のストリーミング配信を見れば十分です。
しかし、Apple Sportsがギャンブルアプリなら、2秒と2分の差がすべてを左右します。なぜなら、2分後れで情報を仕入れている間に、賭けているチームのスター選手が相手チームからボールを奪取していることもあれば、脳しんとうで戦列を離れている可能性もあるからです。
他ならぬApple自身が、Apple SportsからDraftKingsのようなスポーツ賭博サービスにアクセスできるようにする可能性を否定していません。Appleのサービス担当シニアバイスプレジデントであるエディ・キュー氏はインタビューで、「アプリからDraftKingsに行けるようにするかどうかは、後で決めます。今のところは、オッズを表示して様子を見たいだけです」と話しました。
Appleは伝統的に、悪徳とみなされるものに対して極端に厳しいため、賭博サービスに手を出そうとしているのは意外だと、The Atlanticは指摘します。例えば、Appleは規則で「タバコや電子タバコ、ドラッグ、アルコール乱用を推奨するアプリ」を禁止したり、「武器や危険物の使用や購入、あからさまに性的またはわいせつなコンテンツ」を不適切なコンテンツに指定したりしています。また、ギャンブルアプリについても、「違法なギャンブルツールは、App Storeで許可されません」と記載しています。
Appleがスポーツ賭博を悪徳とみなさなくなったのは、アメリカ社会がスポーツ賭博に寛容になったからかもしれません。アメリカの最高裁判所は2018年に、各州がオンラインスポーツ賭博を解禁することを認める判断を下しました。それ以来、試合のコメンテーターがオッズに言及したり、「パーレイ」や「プロップベット」といったギャンブル用語を使ったりすることが常態化しました。
その一方で、ギャンブル依存症の専門家であるイーストテネシー州立大学のメレディス・ギンリー氏がニュースサイトに寄稿した記事で「スポーツ賭博アプリの通知は危険な行動を促します」と警鐘を鳴らしたり、「スポーツ賭博はゲートウェイドラッグ」だとする記事がソーシャルニュースサイト・Hacker Newsで話題になっていたりと、一部の人々は依然としてギャンブルに強い抵抗感を示しています。
The Atlanticは、「もし本当にApple Sportsが新進気鋭のスポーツ賭博アプリだとしたら、それはギャンブルがアメリカの主流文化に受け入れられるための第一関門を突破したことになり、ギャンブルをさらに主流なものとする動きにつながるでしょう。Apple Sportsは機能が限られているにもかかわらず、すでにApp Storeのランキング上位につけています。ひょっとすると、世界の15億人のiPhoneユーザーがタップひとつで試合の結果に賭けられるようになる可能性もあるかもしれません」と述べました。
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