取材

映画「ルックバック」京本役・吉田美月喜&押山清高監督登壇の舞台挨拶レポート、まだ見つかっていない仕掛けがいろいろあると監督談


全国の劇場にて大ヒット上映中の劇場アニメ「ルックバック」の舞台挨拶がTOHOシネマズ日比谷で開催され、京本を演じた吉田美月喜さんと監督の押山清高さんが登壇しました。本作は「チェンソーマン」「ファイアパンチ」で知られる藤本タツキさんの読み切り作品を原作とした話題作です。

劇場アニメ「ルックバック」
https://lookback-anime.com/

会場となったTOHOシネマズ日比谷。


京本役の吉田美月喜さんと、監督の押山清高さん。


以下、舞台挨拶の内容を簡潔にまとめました。

京本役・吉田美月喜さん(以下、吉田):
皆さん、今日は朝から見に来てくださってありがとうございます。京本役を演じました吉田美月喜です。本日はよろしくお願いいたします。

押山清高監督(以下、押山):
すごい暑い中、今日はご足労いただいてありがとうございます。短い間ですが、よろしくお願いします。

MC:
先日、「ルックバック」の動員数が80万人を突破しました。大きな反響を受けて、今のお気持ちを伺いたいと思います。

吉田:
実は2回、劇場にこっそりと見に行ったんですが、皆さんが劇場に来てくださっているのを体感して、すごくうれしかったですし、劇場の空気感というのもすごく感じました。改めて、こうしてたくさんの方に見ていただけることを、本当に幸せだなと思います。

MC:
一般の方に交じって、劇場で?

吉田:
家族と行きました。グッズも、ランダムのものを買ったりして。そうしたら、京本と藤野が1人ずつ出てきてくれて、よしっと。

MC:
どなたかに声をかけられたり、気付かれたりというのは?

吉田:
ぜんぜんないです。号泣しながら見ていたんですが、皆さん、泣いてくださっている方もいっぱいいて、その中に紛れながらずっと泣いていました。


MC:
監督はいかがでしょうか、80万人動員という数字ですが。

押山:
口コミきっかけで来てくださっている方もいて。もちろん、原作の力はすごく大きいと思いますし、今回、映画も一生懸命作ったんですけれど、見てくださっている方の「感想を書く率」がかなり高い作品になっているのではないかということで、こちらとしても、すごくうれしく感じています。吉田さんも映画を見に行ったということなのですが、昨日、たまたま藤本タツキ先生とお会いする機会があって、ちょっとした打ち上げ的なものをさせていただいたんですけれど、藤本さんも映画館に実際に見に行ったと仰っていました。藤本さんの場合、隣にいた女性が終わった後に泣き崩れて、立てなくなっていたとのことでしたが、まさか隣にいるのが藤本さんだと思って見ていないだろうなと思いながら、その話を聞いていました。

MC:
そうですよね、皆さん、劇場でご覧になりたくなりますよね。動員は80万人を突破して、まだまだ数字が伸びているということで、本当に押山監督のお話にもあったように、口コミの力がすごい作品でもあると思います。SNS上では絶賛のコメントがたくさん届いていますが、実際に、身近な方からの反応や印象的なコメントなどがあればぜひお伺いしたいと思います。吉田さんは「お父さんにいいところを見せられたかな」というコメントもありましたが。

吉田:
お父さんから「今日、あいてるか?今から行くぞ」って急に連絡が来て、ドキドキしながら一緒に見に来ました。最初はスクリーンから私の声が聞こえてくることに違和感があったみたいなのですが、最後の方はもうのめり込んでいたみたいです。

MC:
二人でのお出かけは、よくあるんですか?

吉田:
祖父母を交えてはあったんですが、二人きりは結構久しぶりだったかもしれないです。

MC:
久々のお出かけで、しかも感動していただけたのはよかったですね。監督はいかがですか?

押山:
僕は子どものころから絵を描く子どもで、ずっと絵を描き続けられたのは、ご近所のおばちゃんがすごくかわいがってくれたからなんです。その方はもう亡くなられているのですが、今回、ご家族の方が写真を持って映画を見てくださったということを聞いて、すごくうれしかったです。

MC:
監督の地元の福島の方ですね。

押山:
福島では1カ所ぐらいしかやっていないみたいなのですが、そこに見に来てくださったということで、すごく感慨深い気持ちになりました。僕が、本当にハイハイしているような時からかわいがってくれたお隣さんで、画用紙とかわら半紙とか、クレヨンとかの画材を好き放題使わせてくれて、何をやっても褒めてくれました。

MC:
監督の原点に欠かせない方だったんですね。そんなたくさんの方にご覧いただいている本作、吉田さんは本作で初めて自分の声が好きになれたと仰っていましたが、今までは、どちらかというと声にはあまり自信がなかったのでしょうか?

吉田:
そうですね、ちょっと甲高い声と言われることもありますし、自分の中ではあまりいい印象がなかったのですが、今回、こうやって京本役に選んでいただいて、自分の声にしっかりと向き合う時間ができました。

MC:
吉田さんの声はすごく魅力的だと思うのですが、監督の目線からは、どういったところが一番光るところだったと思いますか?

押山:
京本はそんなにしゃべっていないとはいえ、結構難しいシーンが多いんです。それに対して、かなりスムーズというか、何テイクも繰り返すことなくアフレコが進んだので、僕の中では、本当に上手な方だなという印象です。オーディションをした段階だと、声優さんではないから、もしかしたらディレクションの点で不自由さがあるかもしれず、ある意味では生っぽさを出していけるかもしれないという覚悟をしていたのですが、本当に、声優さんと変わらないぐらいに音響監督もやりやすかったのではないかと思います。大学の前の救急車で藤野と再会する場面は、僕としては藤野とは出会わずに来た世界線の京本を見せたいので、なまり具合とか、コミュ障な感じを強めに出してもらおうと思っていたのですが、そういう微妙なニュアンスも上手で、一発でこなしてくださったなと。


MC:
監督は、引きこもりの要素が吉田さんの声にはあるという風におっしゃっていましたね。

押山:
藤本さんと会ったときも、ちょうどそういう話をしていました。僕は福島出身で、藤本さんは秋田出身、haruka nakamuraさんは青森出身という感じにみんな東北で、示し合わせることなく、全体の作品のテイストみたいなところに共通解があったよね、という話だったんですが、吉田さんは東京出身なんですけど、本当は東北出身なんじゃないかと思うぐらいに雪国の気配を感じるというか。オーディションの時から、ずっとそういう感じで声を聞いています。

MC:
でも、実際の吉田さんはコミュ力が高くて、いつもにこやかというイメージです。ご自身で、京本と似ていると思う部分はありますか?

吉田:
緊張してしまうとちょっとアウアウとしてしまうところは似ているかなと思ったりします。作品の中で、藤野も京本もすごく絵がうまくて、2人とも才能があるんですが、京本は自分から口や態度に出すことはなくて、自信がないというか、自分の絵に満足しているわけではないのではないかと思っていて。そういうところは、ちょっと私に似ている部分なのかなと思います。もちろん、私が演技をするときは、そのときの一番、持てる力のすべてを出して全力でやってはいるんですけど、自分に自信があるわけではないので、ちょっと「大丈夫かな?」と不安になってしまう部分があるんです。自分の力に満足しない、できないというか。そういうところは、京本と似ているかなと思いますね。

MC:
最後に、京本が藤野に憧れたように、学生時代にお二人が憧れた方がいればぜひ教えていただきたいと思います。

押山:
僕は小学生のころ、本当にドラゴンボールを、目にタコができるぐらいに読んでいました。鳥山明先生にすごく憧れて、コミックスを買って、隅々から模写したい絵を探してはスケッチブックに模写するということをしていました。低学年から高学年ぐらいのころにやっていたと思います。

MC:
京本の部屋みたいに、スケッチブックいっぱいみたいな?

押山:
僕は一発入魂みたいな感じで、キャラクターが全身で見切れてるとダメなんです。全身が入っている絵を探して、その中で描きたい絵を探して模写していたので、スケッチブック1冊にも満たなかったです。向き合っている時間はすごくがんばって、自分の中では「描いたなぁ」という感じではあるんですけど。でもこだわりで、全身、どこかが切れてはいけなくて。そうすると、「このフリーザは全身入っているから描きたい」と思ったのに、本来、フリーザの指は3本なんですけど、その絵では4本になっていて「あっ、これはダメだ。鳥山先生が作画ミスしている。指が3本じゃないから描けない」って(笑)

MC:
そうか、そうやって読んでいるとミスも見つけてしまいますよね。

押山:
ベタの塗り忘れとか、そういった指の本数間違いとかは、山ほど発見しました。「ルックバック」でも、これは作画ミスなのかどうなんだろうというところがあったので、最初にお会いしたタイミングで確認させていただきました。

MC:
それはどうだったんですか?

押山:
作画ミスでした(笑)

MC:
小さいころから見つける目が養われていますもんね(笑) 吉田さんはいかがでしょうか。

吉田:
今も仲がいいんですけれど、小中高と一緒で、太陽みたいな性格なので「太陽ちゃん」と呼んでいる子がいるんです。中学校のころ、クラスは違ったんですがお昼休みにたまたまその子のクラスに行ったときに声をかけてくれてから仲良くなって、自分の教室にいるよりその子と一緒にいた方が楽しくて、よく一緒にお昼ごはんを食べ、部活も違うけれど一緒に登下校をしていました。太陽ちゃんは、明るい子にもちょっと静かな子にも分け隔てなく普通に接するというか、明るくしているのが普通だったので、私はすごく憧れていました。ただ、私にとって親友は太陽ちゃんぐらいしかいないのに、太陽ちゃんには友達がいっぱいいるので「私は星の数ほどいる友達の1人なんじゃないか」と不安になったこともありますけど、今でもすごく仲良くしてくれています。「ルックバック」も初日に見に来てくれて、次の日の舞台挨拶も劇場に来てくれました。

MC:
それは、太陽ちゃんにとっても吉田さんは親友だと、私が胸を張って言いたいと思います。

吉田:
安心しました。ありがとうございます。

MC:
お別れの時間となりましたので、残念ではありますが、最後にお一言ずつ頂戴できればと思います。

吉田:
本日は本当に見に来てくださってありがとうございます。今日皆さんがこうやって見に来てくださって、もしかしたら何回目かの方もいらっしゃるかもしれないですけど、どう感じていただけたか、また感想で見るのがすごい楽しみに思っています。皆さんのコメントを見ていると、自分で見ていても気づけていないような細かい部分や、漫画とはちょっと違う部分というのがあって、そういうのを見れば見るほどに見つけられる作品でもあると思いますので、何回でも楽しんでいただけたらうれしいです。今日は本当にありがとうございました。

押山:
吉田さんが言うように、本当に6回とか8回とか見ていただいていて、そんなに見ないとわからないような映像にしてしまったのではないかと、すごく申し訳ない気持ちになります。僕が調べた感想の範囲だと、まだまだ発見されていないことがいろいろあるのではないかという感じで、もっとわかりやすくすればよかったと後悔している部分もあります。「これじゃわかりやすすぎるから、もっと隠そう」ということで控えめにして、僕としては10人いたら多分2人ぐらいは一発で見つけてしまうと読んでいたんですが、実際には1000人が見ても気付かないということになっていて、ちょっとやりすぎてしまったかもしれません。僕の読みの甘さがちょっと出てしまっているところがあります。今日はありがとうございました。

MC:
まだまだ、世にあまり知られていないトリックが本作には隠されているということですね。

押山:
多分、いっぱいあると思います。見つけたという感想を僕が発見できていないだけかもしれないです。

MC:
もしそういった発見がありましたら、ぜひSNSなどにポストしていただきたいと思います。本日は本当に貴重なお話をどうもありがとうございました。


劇場アニメ「ルックバック」は全国の劇場で好評上映中。上映劇場が増えているので、以下のリンク先で最新情報を確認してください。

劇場アニメ『ルックバック』 劇場情報
https://eigakan.org/theaterpage/schedule.php?t=lookbackanime

海外展開も行われていて、2024年7月31日からはインドネシアで、8月1日からは台湾で、それぞれ上映がスタートしています。

「ルックバック」公開記念新PV - YouTube

© 藤本タツキ/集英社 © 2024「ルックバック」製作委員会

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in 取材,   映画,   アニメ, Posted by logc_nt

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