血液検査でアルツハイマー病を90%の確率で正確に診断できることが研究で判明
スウェーデンのルンド大学の研究チームが、血液検査によって約90%の精度でアルツハイマー病を正確に診断できるとする研究結果を発表しました。これは、認知機能検査やCTスキャンを用いる従来の方法よりも高い精度となります。
Blood Biomarkers to Detect Alzheimer Disease in Primary Care and Secondary Care | Neurology | JAMA | JAMA Network
https://jamanetwork.com/journals/jama/fullarticle/2821669
A Blood Test Accurately Diagnosed Alzheimer’s 90% of the Time, Study Finds - The New York Times
https://www.nytimes.com/2024/07/28/health/alzheimers-blood-test.html
研究チームは、記憶障害のある約1200人の患者を対象に調査を行いました。このうち500人はプライマリ・ケア医を、残りは専門医を受診しました。研究チームは血液検査の精度を評価するため、各グループの300人に血液検査を実施し、その検査を脳脊髄液検査やPET検査の結果と比較しました。
この血液検査は、アルツハイマー病患者の脳内で形成される「pTau217」と呼ばれるタウタンパク質を測定するもの。タウタンパク質は認知機能の低下と密接に関連しており、アルツハイマー病が進行すると形成されるようになるといわれています。
医師による診断結果をみると、プライマリ・ケア医のうち「アルツハイマー病である」と診断した場合の誤診率は36%、「アルツハイマー病でない」と診断した場合の誤診率は41%でした。また、専門医の誤診率はそれぞれ25%と29%でした。
一方で、血液検査での誤診率はわずか10%にとどまったとのこと。血液検査の精度は、認知障害の症状が進行している患者であれば高く、軽度認知障害の場合はやや低くなったとのこと。また、最も早期の段階である主観的認知障害を抱える患者に対しては精度が最も低くなったそうです。
専門家はこの研究結果は画期的なものだと評価していますが、研究を主導したルンド大学のオスカー・ハンセン教授やセバスチャン・パルムクビスト准教授は「血液検査は診断プロセスの一部に過ぎず、認知機能検査やCTスキャンなどの方法と組み合わせて使用すべきです」と述べています。
また、カルフォルニア大学サンフランシスコ校の神経学者であるアダム・ボクサー氏は「認知症のない人でアルツハイマー病の病理を検出した場合、現時点では治療法がないため、不安などの心理的反応のリスクがあります。また、倫理的な観点から、予防的治療法が開発されるまでは、症状のない人に対してこの検査を使用すべきではありません」と注意を促しています。
さらに、ボクサー氏は、血液検査を外部の研究所に頼るのではなく、病院の検査システムに統合するというハードルが残されていると指摘。それでも、「将来的にこのような血液検査をプライマリ・ケア医が利用できるようになれば、人種的・民族的なマイノリティや低所得者層、農村地域の人々が検査を受けやすくなることが期待されます」と語りました。
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