サイエンス

暗視能力付きメガネを実現する薄型暗視レンズが開発される


オーストラリア国立大学の研究者が、ラップフィルムよりも薄い赤外線フィルターを開発したと発表しました。このフィルターは赤外線を可視光に変換することができ、暗い場所でも周囲が見えるようになる効果が期待されています。

Enhanced Infrared Vision by Nonlinear Up‐Conversion in Nonlocal Metasurfaces - Valencia Molina - Advanced Materials - Wiley Online Library
https://onlinelibrary.wiley.com/doi/10.1002/adma.202402777

New all-optical approach to revolutionise night vision technology | ANU College of Science
https://science.anu.edu.au/news-events/news/new-all-optical-approach-revolutionise-night-vision-technology

New all-optical approach to revolutionise night vision technology | TMOS
https://www.tmos.org.au/research/new-all-optical-approach-to-revolutionise-night-vision-technology/

暗視装置は軍隊やハンター、写真家などに使用される装備で、微弱な可視光や赤外線を増幅して見えるようにする仕組みです。しかし、高品質な暗視装置は非常に高価な上に、基板が高温になるのを防ぐための冷却システムやバッテリーなどが重くてかさばるという問題があります。


今回、オーストラリア国立大学のTMOS(革新的なメタ光学システムのARC優良研究所)の研究者は、リチウムニオブ酸(LiNbO3)にシリカ(SiO2)の格子構造を重ねたメタサーフェスを開発したと報告しています。

このリチウムニオブ酸を使ったメタサーフェスは、和周波発生(SFG)という非線形光学過程によって、波長1550nmの赤外線を550nmの可視光に変換可能。


開発されたメタサーフェスはラップフィルムより薄く、可視光領域ではほぼ完全に透明。さらに光の入射角度によって情報損失が生まれる「非局所性」も克服しており、高解像度のイメージングが可能になっているとのこと。加えて、冷却装置も不要であることから、暗視装置を大幅に小型化かつ低コスト化できる可能性があります。


そして、従来の技術では赤外線の映像と可視光での映像を同時に表示することはできませんが、このメタサーフェスを使えば2つの映像を同時に表示できるので、従来の暗視装置よりも優れていると研究チームはアピールしました。また、暗視装置以外にも、夜間運転の安全性向上、夜間の歩行安全性向上、暗所での作業効率化など、日常生活での幅広い応用が期待されています。

主任研究員のドラゴミール・ネシェフ氏は「暗視技術はサイズ・重量・電力要件の削減を目指しており、今回TMOSが発表した内容は、将来の技術の極小化にとっていかに重要なものであるかを示す一例です」とコメントしました。

研究チームは今後、感知できる波長範囲の拡大や、エッジ検出などの画像処理機能の追加を目指しています。

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in サイエンス, Posted by log1i_yk

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