半導体と金属の間に電流を流して物体から熱を逃がす「熱電冷却」とは?
by Applied Thermoelectric Solutions LLC, “How Thermoelectric Cooling Works”
異なる半導体と金属の接合部に電流を流すと熱が片方へ移動するという現象を利用した、「熱電冷却」という技術がCPUの冷却や医療・軍用器具に用いられることがあります。この熱電冷却について、物理学者のアルフレッド・ピゴット氏が解説しました。
How Thermoelectric Cooling Works [2024] - Applied Thermoelectric Solutions LLC
https://thermoelectricsolutions.com/how-thermoelectric-cooling-works/
熱電冷却にはp型半導体とn型半導体と2つの金属を用います。pはポジティブ、nはネガティブを指していて、それぞれ正と負の電荷を持つことが名前の由来です。
両半導体(NとP)は2枚の金属(Ceramic Plate)に挟まれ、金属と半導体の接合部に電流が流されます。その結果電子の流れが生まれ、一方の金属では電子がエネルギーを奪うので冷却が起こり、もう一方では電子が放出するエネルギーにより加熱が起こります。熱電冷却モジュールの極性を反転させると、熱くなる側と冷たくなる側が入れ替わります。
by Applied Thermoelectric Solutions LLC, “How Thermoelectric Cooling Works”
また、熱が一方から他方へ移動する速度は、p型半導体およびn型半導体の数、供給される電流の流量に比例します。
熱電冷却は、ジャン=シャルル・ペルティエが発見したペルティエ効果がベースとなっています。ペルティエは半導体の代わりに金属を使いましたが、熱電冷却や熱電発電の効率を高めるため、現代では半導体が使われています。
その半導体の材料にはテルル化ビスマスが一般的に用いられ、n型とp型それぞれにセレンとアンチモンが添付されています。
熱電冷却は、摩耗する稼働部品がなく、あらゆる向きで取り付けられ、無重力および高加速下でも動作可能という利点があるため、航空宇宙産業や軍事産業で重宝されています。また、温室効果ガスを発生せず、1つの冷却と加熱の両方を行えること、コンパクトなサイズでほぼ完全な静音と無振動を実現すること、温度を正確に制御できることなども利点として挙げられます。
by Applied Thermoelectric Solutions LLC, “How Thermoelectric Cooling Works”
一方で欠点もあり、設計によっては効率が極端に落ちてしまうこと、場合によっては電力コストが高くなってしまうことなどが課題として残されています。
ピゴット氏によると、熱電冷却モジュールはすべてp型半導体で作ることも、反対にすべてn型半導体で作ることもできるそうです。しかし、そのような設計では一つのモジュールに多くの半導体と多量の電流が必要なため、あまり実用的なものにはならないとのことです。
熱電冷却が使われる製品には、医療用レーザーやポータブルインスリン冷蔵庫、自動車の冷却シートやバッテリー熱管理システム、軍用サーマルセンサーや赤外線検出器、一般消費者向けのポータブルクーラーなどがあります。
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