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ヨーロッパを一直線に結ぶ聖地群「聖ミカエルの剣」の謎を科学でぶった切るとこうなる


ヨーロッパに7つある、大天使ミカエルゆかりの聖地の位置を地図上で結んだ線は、「聖ミカエルの剣」あるいは「聖ミカエル線」と呼ばれています。「このレイラインは、ミカエルが悪魔を地獄にたたき落とした一撃を表している」との伝説まで語られているこの不思議な線を検証した結果を、地理情報に詳しいデータサイエンティストのセバスティアーノ・フェラーリス氏がまとめました。

A Geospatial Data Science Blog - Saint Michael Sword
https://sebastianof.github.io/GeoDsBlog/posts/gds-2024-04-20-cathedrals/


Saint Michael Sword: Are the cathedrals really on a straight line? | Hacker News
https://news.ycombinator.com/item?id=40595499

「聖ミカエルの剣」は、アイルランドからイスラエルにかけて並んだ7つの聖地を結んだ線のことを指します。なお、対象となっている場所は「修道院」や「礼拝の地」など種類がばらばらですが、ここでは「聖地」という表現でひとまとめにしています。

これらの聖地を実際に線で結んだのが以下。Wikipediaに掲載されているこの地図を見ると、確かに7つの聖地が直線上に並んでいるように見えます。


しかしフェラーリス氏は、「本当に直線上に並んでいるといえるのか」を自らの手で確認することにしました。

「聖ミカエルの剣」で示されている7つの聖地は以下の通り。

◆1:シュケリッグ・ヴィヒル(Sceilg Mhichíl)
アイルランド南西海上の島にある修道院で、世界遺産にも登録されています。映画「スター・ウォーズ/フォースの覚醒」および「スター・ウォーズ/最後のジェダイ」で、ルーク・スカイウォーカーが暮らしていたジェダイの遺跡はこの島で撮影されました。


◆2:セント・マイケルズ・マウント(St Michael's Mount)
イギリス・グレートブリテン島南西部・コーンウォールの沖合にある島で、干潮時にはグレートブリテン島から歩いて渡ることができます。見た目から「イギリス版モン・サン=ミシェル」と表現されることもあります。


◆3:モン・サン=ミシェル(Mont Saint-Michel)
フランス北西部・ノルマンディー地方のサン・マロ湾にある島と、島にある修道院。世界遺産としても知られます。

by Amaustan

◆4:サクラ・ディ・サン・ミケーレ(Sacra di San Michele)
イタリア北部・ピルキリアーノ山にある修道院。古くはローマとガリアを結ぶ街道沿いに軍事拠点が置かれ、西ローマ帝国滅亡後はフランク人侵攻に備えるランゴバルド(ロンゴバルド)人が要塞を築いたという要害の地で、修道院としては11世紀の記録が最古のものだとのこと。

by Elio Pallard

◆5:サントゥアリオ・ディ・サン・ミケーレ(Santuario di San Michele)
イタリア東部・アドリア海に面するプッリャ州にある巡礼の地。世界遺産「イタリアのロンゴバルド族:権勢の足跡(568-774年)」の構成要素の1つです。

by Bernard Gagnon

◆6:パノルミティスの聖ミカエル大天使修道院(Santo Monastero di Taxiarchi Michail)
エーゲ海南東部にあるドデカネス諸島シミ島にある修道院。島には13の教会と修道院がありますが、その中でも聖ミカエルに捧げられた最も重要な礼拝所の1つだとのこと。

by Karelj

◆7:カルメル山のステラ・マリス修道院(Monastero Stella Maris del Monte Carmelo)
イスラエル北部・ハイファ地区にある修道院。修道院のあるカルメル山は古くから崇拝の対象で、紀元前14世紀に古代エジプト王トトメス3世が征服した地の1つとして名が上がっています。修道院の創建の記録は東ローマ帝国(ビザンツ帝国)時代のものです。

by זאב שטיין

フェラーリス氏は7つの聖地の場所を取得して地図上に記したのち、最も遠いシュケリッグ・ヴィヒルとステラ・マリス修道院を結ぶ直線を引いて、残り5つの聖地の位置と直線との距離を目視確認することにしました。

フェラーリス氏が作成した、かなり細かく「聖地」の位置が描画された地図。


Wikipediaに掲載された地図でも示されているとおりなのですが、メルカトル図法の地図上で直線を引くと、確かに聖地はほぼ直線上に並んでいます。


しかし、地図上の2点間の最短距離である測地線は、地球のような球体では円弧を描くことになります。つまり、本当に地球上でシュケリッグ・ヴィヒルからステラ・マリス修道院を結ぶ直線を引くとすると以下のように、英仏海峡を渡ったのちフランスからスイス、イタリアを経て、アドリア海東岸からエーゲ海を抜けていくようなものになります。西から2カ所目のセント・マイケルズ・マウントの時点で測地線とはかなり離れており、イタリアの聖地2点は惜しくもなんともない距離です。


ソーシャルニュースサイト・Hacker Newsではいろいろな意見が出ています。araes氏は、測地線沿いにも多くの「ミカエル」の名を冠する修道院や聖地があることを指摘。empath75氏によれば、7つの聖地の中にはミカエルとは無関係なものもあるとのこと。miniwark氏は、「7つの聖地」を設定するならローマのサンタンジェロ城やフランスのサンミッシェル・ド・キュクサ修道院のようにもっと重要な地があるはずで、これらを入れると線は容易に壊れてしまうと言及。なお、Broken_Hippo氏によればイギリスだけでも聖ミカエルの名を冠する教会は816カ所あるとのこと。

まとめると、メルカトル図法に限れば7カ所の聖地が直線上にあるのは間違っていないのですが、「聖ミカエル」とは関係の薄い場所も含まれているため、この7カ所が聖ミカエルにとって重要な意味を持つわけではない、ということのようです。

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in メモ, Posted by logc_nt

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