「アナーキストとは何者なのか」を人類学者デヴィッド・グレーバーはどう表現したか
「アナーキズム」は日本語で「無政府主義」と訳されますが、政府を排したカオスを呼び寄せる狂信者との誤解を避けるべく、本来の言葉の意味に近い「無支配主義」と訳すべきとの意見もあります。アナーキストに関する情報を集積している「The Anarchist Library」で、人類学者でアナーキストだったデヴィッド・グレーバー氏が2000年に発表した、アナーキズムとアナーキストという存在について語る「Are You An Anarchist? The Answer May Surprise You!」というコラムが公開されています。
Are You An Anarchist? The Answer May Surprise You! | The Anarchist Library
https://theanarchistlibrary.org/library/david-graeber-are-you-an-anarchist-the-answer-may-surprise-you
グレーバー氏は、「アナーキストとは、暴力、カオス、破壊の支持者であり、あらゆる形の秩序や組織に反対している、あるいはただすべてを吹き飛ばしたい頭のおかしな虚無主義者だと思われているようですが、現実はまったく違います。アナーキストとは、人間は強制されなくても合理的な行動をとることができると信じている人たちのことです。実にシンプルな考え方ですね」と指摘。単純な考え方であるが故に、次に掲げる質問に「イエス」と答えた人はもうアナーキストに当たると言えると説明しています。
・あなたは、混雑したバスに乗るために列ができている場合、きちんと自分の順番を待ち、たとえ警官が見ていなくても割り込んだりしないか?
・あなたは、クラブやスポーツチームなど、一人のリーダーによって押し付けられるのではなく、多数の同意に基づいて意思が決定される団体のメンバーか?
・私たちは愚かで不公平な経済システムの中に生きていると思うか?
・子どもたちに言っていること(あるいは親に言われたこと)を本当に信じているか?
例えば最初の質問にイエスと答えた場合、アナーキストが言う「人間は、普通の状況下では理性的でまともな存在であり、そのあり方を教えられるまでもなく、自分自身や自分たちの共同体をまとめることができるものだ」という信念に合致しているとグレーバー氏は指摘します。
グレーバー氏いわく、アナーキストの最も基本的な原則は、「自己組織化」であり、人間は自然と互いに合理的な理解に至ったり、尊厳と敬意をもって接したりするだろうという前提があるとのこと。
アナーキズムのもうひとつの基本原則は自主的な結社であり、これは、民主主義の原則を普通の生活に適用しただけのことを言うそうです。唯一の違いは、アナーキストはあらゆるものがこの原則に沿って組織化され、すべての集団がメンバーの自由な同意に基づくような社会が可能であるべきだと信じていること。指揮命令系統に基づく軍隊や官僚組織、大企業のようなトップダウンの軍事的なスタイルの組織はもはや必要ないと考えるのが、アナーキストだといいます。
グレーバー氏は「脅しではなく意見の一致によって合意に達するたび、他人と自発的に取り決めをするたび、相手の特定の状況やニーズを十分に考慮することによって理解に達するたび、妥協に達するたび、あなたはアナーキストであると言えます」とまとめました。
政治に対するアナーキストの見方には、「権力は腐敗するものであり、権力を求めて一生を費やす者を最後に、権力を持つ人間は生まれるべきではない」というものがあります。グレーバー氏いわく、アナーキストは「現在の経済システムは、まともで思いやりのある人間よりも、利己的な人々が報われる可能性が高い」と信じているそうです。グレーバー氏は「アナーキストでないほとんどの人も同じことを思うでしょうが、ほとんどの人は何もできないと考えています。アナーキストは違います」と述べました。
グレーバー氏は「何千年もの間、人々は政府なしで暮らしてきました。今日、世界の多くの地域で、人々は政府の管理外で暮らしています。彼らは皆、殺し合ったりはしません。もちろん、複雑で、都会的で、科学技術の発達した社会では、このような問題はもっと複雑になるでしょう。弁護士、刑務官、金融アナリストなどの無駄な職業や破壊的な職業をすべて排除し、最高の科学的頭脳を、宇宙兵器や株式市場システムの研究から石炭採掘やトイレ掃除のような危険な仕事や迷惑な仕事を機械化することに振り向け、残った仕事を皆に平等に分配したら、機能的な社会を維持するために、私たちは果たして何時間働く必要があるのでしょうか?1日5時間?4時間?誰もこのような質問をしないので、誰にもわかりませんが、アナーキストは、このような質問こそ私たちが問うべきものだと考えているのです」と主張しています。
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in Posted by log1p_kr
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