ゲーム

「あなたの好きなゲームは労働者の悲鳴の上に成り立っている」という指摘

by 勇者で社畜の兼業ライフ

ゲーム業界は外部から見るとクリエイティブで楽しいビジネスであるようにも思えますが、実際にそこで働く人々にとっては精神的にも経済的にも耐えがたい場合があるという声を、憧れのゲーム会社に入社した人や業界アナリストが語っています。

Video Game Creators Are Burned Out and Desperate for Change | TIME
https://time.com/5603329/e3-video-game-creators-union/


ネイサン・アレン・オルテガ氏は2015年に、カリフォルニア州に拠点を置くビデオゲーム開発会社であるテルテールゲームズからオファーを受けてマネージャー職に就きました。テルテールゲームズはゲーム版の「ウォーキング・デッド」やマインクラフトをベースにしたストーリー形式のゲームである「Minecraft: Story Mode」をリリースしており、オルテガ氏はテルテールの大ファンであったことから、オファーには「夢の仕事を見つけた」と喜んだそうです。

しかし、実際に働き始めたオルテガ氏は仕事でストレスがたまり、胃潰瘍(いかいよう)も患って吐血するようにもなってしまいました。オルテガ氏によると、大きな問題のひとつとして、会社幹部による土壇場でのゲームの変更命令があるとのこと。開発者は大急ぎでゲームの調整や変更に取り組み、過剰労働になりながらも、土壇場での変更では品質の高い製品を生むことはできません。「私は毎月のように、自らを殺してゲームを世に送り出す人たちによって作られた、妥協に満ちた品質の低いゲームに携わっていました」とオルテガ氏は語っています。

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テルテール社の元ナラティブデザイナーであるエミリー・グレース・バック氏は、「ゲーム業界では、そこで働くことは特権であり、そこに留まるためには何でもする覚悟が必要だという信念があります。最も重要なことは、すべてのゲームスタジオがこのように機能しているわけではないが、これが大多数であり、この業界では普通のことだということです」と語っています。実際に、「Red Dead Redemption」のパブリッシャーであるロックスター・ゲームズのCEOはインタビューで「予定された発売日に間に合うために、従業員は週100時間働いています」と語っていたり、「ハースストーン」や「オーバーウォッチ」などで知られるアクティビジョン・ブリザードは800人近い大規模レイオフを実施したり重大なハラスメント問題が浮上したりと、さまざまな問題が確認されています。

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アメリカのニュース雑誌「TIME」は、ビデオゲーム業界の労働者10人に取材をしました。取材の結果、オルテガ氏が体験したような勤務時間と雇用の不安定さは、ゲーム業界では決して珍しいことではないことが判明しました。特に、ゲームやソフトウェア開発の業界は、発売直前の数週間を「追加給与無しで週100時間働く」といったことは常態化していたそうです。さらに、近年ではそのような状況がとある理由で悪化しています。

2000年前後にゲームを遊ぶ場合は、ゲーム会社がリリースしたパッケージをおもちゃ屋やゲームショップに行って購入し、遊び終わったらもう1度最初から楽しんだり他のゲームを買いに行ったりするのが普通でした。しかし現代では、「ビデオゲーム機の90%以上がインターネットに接続されています」とビデオゲーム業界アナリストのマット・ピスカテラ氏は指摘しています。ゲーム会社は、プレイヤーが購入できる新しい武器や新しく挑戦できるステージなど「ダウンロード・コンテンツ(DLC)」を通じて、既存のゲームを継続的にアップデートおよびリフレッシュすることが多くなりました。ゲーマーは気に入ったゲームをさらに楽しめるDLCを期待し、ゲーム会社はそこからさらなる利益を得ることができますが、DLCの存在によりゲームの発売日から数カ月、場合によっては数年経過しても従業員にプレッシャーがかかりつづけることになります。

また、ゲームスタジオが一般ユーザー向けに「ベータテスト」を開放する場合がしばしばあります。ベータテストは主に発売前に宣伝やプレビューのために行われますが、そこでバグやプレイヤーの不満に感じる点が発見された場合、土壇場での変更を要求されることになります。

by 勇者で社畜の兼業ライフ

このような変化はゲーム業界の労働者にとっては苦痛ですが、ゲーム会社にとっては利益を生むものとなります。ピスカテラ氏が所属する調査会社のNPDグループによると、2018年のアメリカビデオゲーム市場において、デジタル販売の収益は63%と増加傾向にあり、総売上は2年前から38%増加しています。その理由として、DLCなどでヒットした作品にプレイヤーが何度も帰ってくる仕組みが大きいと考えられます。

ビデオゲーム業界とハリウッドの両方で働いた経験を持つサウンドデザイナーのマイケル・カンパー氏は、経営者と労働者の両方の経験から、労働組合について語っています。カンパー氏によると、ハリウッドでは俳優や脚本家などそれぞれに労働組合があり、頻繁に起きるプロジェクトの頓挫やスタジオの閉鎖があっても、すぐに給料が0にはならず保健や年金を受け取ることができたそうです。一方で、カンパー氏はゲーム業界の3つのスタジオで働いてきましたが、そのすべては業績不振で閉鎖し、その瞬間に給料も保証もなくなりました。カンパー氏は「両方の業界を経験した私だからこそ、ゲーム業界にもとどまり、この業界をより良くすることにも貢献したいと考えています。現在の状況は、労働者にとってもスタジオにとっても健全ではありません」と語りました。

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in ゲーム, Posted by log1e_dh

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