メモ

横領する人には賢く優秀な人が多いという法律事務所の見解


1939年に設立されたカリフォルニア州の老舗法律事務所・スティンメル法律事務所が、これまでの経験を踏まえて、横領を行うような人に愚かな人はほとんどおらず、もし盗みを辞めて真面目に働いていたとしたらもっと稼いでいたとコラムで指摘しています。

Story #1 - Embezzlers are Nice People | Stimmel Law
https://www.stimmel-law.com/en/articles/story-1-embezzlers-are-nice-people


コラムの筆者は、横領する人の例として「仕事が丁寧な人」を挙げています。これは、普段の仕事が雑だと、上司や同僚によって仕事内容のダブルチェックが行われて、横領している事実が見つかってしまうためです。

また、病気やケガで休むと、誰かが業務を代替することでつじつまが合わなくなる可能性があるため、欠勤もしないことが必要となります。


そして職場で、目立たない存在か、その反対に誰にも疑われないぐらいに好かれているかである必要があります。横領する人の多くは、財務上の機密情報に接近できるように、好人物として立ち回ることを選ぶそうです。

すると浮き上がってくる人物像は「優秀で魅力的な従業員」であり、筆者は「なぜあんなにも優秀で魅力的な人たちが、わずかな利益のためにすべてを危険にさらしてしまうのか」がまったく理解できなかったとのこと。


「それでも、なぜ横領をするのか」という動機を探った筆者は、「彼らは横領したいから横領している」という結論にたどり着いたそうです。

筆者は、かつて担当した横領事件のときに執行猶予付きの判決で和解した横領当事者のエディ氏(仮名)と、食事をすることがあり、横領したお金を何に使ったか聞いたところ、エディ氏は「人生をすてきなものにするための『甘くて愚かなこと』」「長期的にはほとんど価値がないからこそ買う価値があるもの」にすべて費やしたと答えたそうです。

筆者が重ねて、本当に全額使い切ったのかと聞くと、エディ氏は「横領したお金は生活必需品ではなく、ぜいたくにこそ使うべき」と回答。その上で「建設的な話がしたい」として、筆者に対して香港の不動産を用いた事業の話をもちかけてきたとのこと。

和解について納得していなかった筆者が怒ると「いい取引であれば応じるべきです。知らない泥棒より、知っている泥棒の方がましでしょう」と、エディ氏はなおも事業の話を継続。筆者が「ビジネスをするなら信頼できる正直な人としたいものでは?」と問いかけると、エディ氏は「じゃああなたは、クライアントに従業員同士がお互いの仕事をチェックするような仕組みにするよう助言しないのですか?」「帳簿をごまかしたり、会社のお金を取ったりできないようなシステムを作るようには言わないのですか?」と畳みかけ、筆者が「クライアントにはそう言う」と認めると、「なら、信頼できない人がいても同じでしょう、システムが機能すれば問題はないはずです」と論破してきたそうです。


結局、筆者はエディ氏のビジネスを取り持つことはなく、それから3年ほどでエディ氏は亡くなったとのこと。

エディ氏の葬儀は、かつてエディ氏にお金を取られた人たちが出したとのことで、筆者はエディ氏がそれぐらい周囲に好かれる人物であったと表現。また、「好人物であることで生計を立てていた」と評しつつ、ビジネスについては「誰も信用せずに、できる限り捕まらず、とにかくお金を稼ぐものと捉えていた」と述べ、「エディ氏は、お金を稼ぐことだけを目的にビジネスをしている人ばかりではないことを理解しない人だった」とと振り返っています。

なお、1973年に発覚した滋賀銀行の9億円横領事件でも、横領を行っていた行員は模範的な従業員だったことが報じられています。横領が明らかになった理由も、当該行員が優秀であることから他支店に栄転の人事異動が行われた結果、前所属支店で他の行員によって不正が発見されたというもので、まさにスティンメル法律事務所が指摘する内容通りとなっています。

ドラマ化された「赤かぶ検事」シリーズで知られる作家の和久峻三は、この事件を題材に「裁かれた銀行 滋賀銀行九億円横領事件」というノンフィクションを執筆しています。

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in メモ, Posted by logc_nt

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