サイエンス

自然や生態などのジャンルで最前線を走る9人の科学者が話す「解明したい地球上の謎」とは?


豊富な知識とアイデアを持つ優れた科学者であっても、技術的な理由などで未発見や未解決の謎は多く残っています。イギリスの大手新聞社であるThe Guardianが、それぞれの分野で最前線を走るトップ科学者9人に「私たちの地球上の生命について残された最大の秘密は何ですか?」と質問を投げかけています。

Great unknowns: nine top scientists on the one mystery on Earth they’d like to solve | Global development | The Guardian
https://www.theguardian.com/environment/2023/dec/26/great-unknowns-nine-top-scientists-on-the-one-mystery-on-earth-theyd-like-to-solve


世界最大級のロンドン自然史博物館で研究者を務め、2019年には国連の「Global Assessment Report(防災に関する国際評価報告書)」の共著者も務めたアンディ・パーヴィス氏は、「地球上には何種類の種がいるのか」を最大の謎として挙げました。これまでの研究では、私たちは300万から1億の種と暮らしていると推定されていますが、現代でも正確な予測はできていません。


コーネル大学でアリを専門に研究する進化生物学者のコリー・モロー氏は、5億4000万年前に起きたとされる「生物学的ビッグバン」を見てみたいと話しています。カンブリア紀と区分されるその時代には、短期間でほとんどの動物グループが急速に台頭したと考えられています。なぜ多種多様な動物グループが生まれたのか、そして三葉虫のような生物はなぜ生き残れなかったのか、ということを知りたいとモロー氏は語りました。

イギリスのロンドン・スクール・オブ・エコノミクス(LSE)で気候変動・環境について研究する上級講師のボニー・ウェアリング氏は、最小の生命体である微生物がスケールの大きい気候問題に影響を与えるか知りたいとのこと。植物を良く育てる健やかな土壌には、細菌や微生物が重要な役割を担っています。しかし、これらの微生物のほとんどは実験室で培養できないため、生態についてはほとんどわかっていないそうです。その中でも、特定の微生物は樹木の成長を大きく助けることが判明しているため、ウェアリング氏は「これらの『善良な微生物』は、気候変動と闘い、食料安全保障を促進する上で、私たちの最良の味方となる可能性があるでしょうか?」と述べています。


イギリスの王立植物園であるキューガーデンの科学部長であるアレクサンドル・アントネッリ氏は、アマゾンやコンゴ盆地などに代表する熱帯雨林にはなぜ高度な生物多様性があるのかに注目しています。1万平方メートル程度のエリアに、どれほど多様な生物がいるのか、それらの生物はいつどこから来たのか、どのような関係や相互作用を持っているのかなどを知ることで、それらの価値を明確にし、保護して残していくことが重要だとより深く理解して伝えていくことができます。

オックスフォード大学の生態系科学教授であるヤドヴィンダー・マルヒ氏はThe Guardianの質問に対し、「受粉や種子の散布など、動物が生態系に携わっていることはよく知られていますが、それ以外にも栄養素の循環、植物の選択的摂取、捕食者と被食者の複雑なネットワークなど、小さいが驚くほど重要な相互作用が数多くあると思いますが、それらの研究はうまく進んでいません」と回答しました。マルヒ氏によると、「動物は地球という惑星の仕組みをどの程度形作っているのか?」というのは大きな謎であるそうです。

イギリスで最も著名な気候学者の一人であるロバート・ワトソン氏は、「現時点で知っておかなければならない不確実なことがあるとすれば、それは北大西洋の亜熱帯循環の西端に形成されるメキシコ湾流です。メキシコ湾流が突然停止し、ヨーロッパの気候を完全に変え、気温の急激な低下を引き起こし、壊滅的な影響を与える可能性があるかどうか。そして、もし停止するとしたらいつになるかということです」と語りました。


アルゼンチンのコルドバ国立大学で生態学教授を務めるサンドラ・マーナ・ディアス氏は、植物や動物の進化に普遍的な規則があるかどうかを重要な謎として挙げています。全く異なる祖先を持つ生物でも、ある程度の範囲で一般的なスタイルに従っています。そのスタイルを支配する最も一般的で単純なルールは何なのか、なぜそれが重要なルールになっているのかは、深く難しい問題です。

ウガンダ初の野生動物獣医師であり、自然保護の先駆者となったグラディス・カレマ・ジクソカ氏は「地球は何人の人間を養うことができるのか?」というトピックを挙げました。世界人口は増え続けており、2023年の10年後にはさらに10億人増加すると予測されています。増え続けた人口は食料を求めて自然や生態系を破壊したり、気候変動や感染症・パンデミックの発生などにつながったりと、地球環境を持続不可能にしています。そのためジクソカ氏は「私たちがバランスをとり、自然と調和して暮らすことができたとしたら、地球は何人まで人間を受け入れることができるのでしょうか?」と解明したい謎について話しています。

最後に、イギリス政府の元首席科学顧問で、自然史博物館の理事会の理事長を務めるパトリック・ヴァランス氏は、種の適応の限界に注目しています。気候が変化し、生物種がそれに適応する中で、変化に適応しきれず滅びてしまう種も現れます。どの種がどの時点で適応できなくなるのか、何が適応の限界を左右するのかという基本的な疑問には、解明されていない点も多くあります。ヴァランス氏は「この疑問への答えは、将来の自然界の姿を決定するだけではなく、生物学がどのように機能し、進化するかについての深い洞察も与えてくれます」と述べました。

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in メモ,   サイエンス, Posted by log1e_dh

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