サイエンス

そわそわしがちなADHDの人は「探検家」のような遺伝的特性がある可能性


注意欠陥・多動性障害(ADHD)は、ひとところに落ち着くことが求められる現代社会では他者と関わる上での障害となってしまうことがあります。こうしたADHDの人の遺伝的特性を調べた研究により、ADHDの人には探検を好む遊牧民的な傾向があることが判明しました。

Attention deficits linked with proclivity to explore while foraging | Proceedings of the Royal Society B: Biological Sciences
https://royalsocietypublishing.org/doi/10.1098/rspb.2022.2584

ADHD linked to evolutionary success in ancient humans
https://newatlas.com/science/adhd-evolutionary-benefits-foraging-explore-exploit/

ADHDが診断名として定義されたのは1990年代と比較的新しいものですが、同様の症状は何世紀にもわたって認識されてきました。遺伝学に基づく研究では「ADHDは親から受け継がれる遺伝的要因が関連する可能性が高い」との研究結果も出ており、研究者の中にはヒトの進化におけるこの症状の利点が何なのかを探る人もいます。

2000年代初頭、研究者がケニア北部の遊牧民族「アリアール族」を調べたところ、多くのアリアール族がADHDの人によく見られる遺伝的変異「DRD4/7R」を持っていることが判明しました。この遺伝子を持っているからといって必ずしもADHDと判断されるわけではありませんが、DRD4/7Rは食物や薬物への渇望、新奇なものへの欲求、ADHDとの関連が指摘されています。このことから、遊牧生活を送っていたアリアール族が食料や水源を求めて探検を行う際に、DRD4/7Rが有利に働いていた可能性が指摘されています。


2024年に発表された新たな研究では、ADHDが探検家的な特性を持つ可能性があるという仮説を基にある実験を行ったことが報告されました。

ペンシルバニア大学のデビッド・バラック氏らは、被験者に「茂みをクリックして、8分間の中でできるだけ多くのベリーを集める」というゲームをプレイしてもらい、並行して全員にADHDの症状があるかを確認しました。このゲームにおいては、茂みにカーソルをしっかり合わせなければいけないという仕組みに加え、プレイヤーが同じ茂みで収集するたびにベリーの収穫量が減っていくという設定が施されていました。そのため被験者は少ない茂みで集中してベリーを収穫し続けるか、あるいは時間を消費するリスクを冒してたくさんの茂みから収穫するかの判断を求められました。


およそ450人がゲームをプレイした結果、ADHDのスコアが高い人たちは他の人たちよりも早く新しい茂みに移動する傾向にあることがわかり、さらにこうした人たちは全体的にベリーの収集量も多いことが判明したそうです。

こうした結果から、バラック氏らは「ADHDのような特性は、一カ所にとどまってたくさんの情報を集めるというタスクにおいては、早々に興味を失ってしまうためにうまくいかないかもしれません。一方で、新しい情報を誰よりも早く入手するという競争的なタスクにおいては優位に立てる可能性があります」と指摘し、ADHDの人はこうした特定のタスクに適している可能性があると考察しました。

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in サイエンス, Posted by log1p_kr

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